ファミコン全盛期に社会現象を巻き起こした高橋名人にインタビュー クランクイン!
クランクイン!

 2013年はファミコンが誕生して30年というメモリアルイヤーであったが、その創成期にあたかもアイドルやスポーツ選手のように子どもたちを魅了し、羨望を集めたのが高橋名人だ。「16連射」を代名詞に85年から「名人」として活動を始め、間もなく30年。現在はMAGES.に所属する名人が、ブームの渦中にいた当時を振り返り、今を語る。

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 まさに「一世を風靡した」という表現がピッタリくるすごい人気だった。ファミコン発で初の著名人と言ってよい名人は、ファミコン人気の高まりを受け、自身の人気も沸騰。レコード・漫画・ゲーム・映画と、あらゆるメディアに進出を果たし、はては逮捕や死亡説といった都市伝説までも飛び出した。名人が当時を述懐する。

 「いろんなことをやりました。でも全てが楽しかったです。全部が全部当たるはずもなく外れるものも多かったですけど、失敗しても許されるというか“外れたら外れたでしょうがない”みたいなところがありましたし。いろいろやった中でも歌は中高でフォークソングクラブをやっていたので、“レコードを出してみたい”なんてのがあるじゃないですか。だからそれが実現するとやっぱり嬉しいものです。俳優はもともと上がり症で“俺には演技なんて無理だ”と思っていたからなかったし、映画はプラスアルファですね」。

 都市伝説が出たことからも顕著なように、名人には様々な逸話や現実離れしたエピソードが付いて回った。ファミコン名人もう一方の雄である毛利名人との対決を描いた映画(『GAME KING 高橋名人VS毛利名人 激突!大決戦』)では連射でスイカを割ったり人差し指でバイクを止めるといった荒技が描かれ、さらに自身が登場するマンガ(『ファミコンランナー高橋名人物語』)では、なんとウンチをセミに投げて捕獲したという少年時代が描かれている。

 「あのマンガは本当のことが1%で、99%、いや97%ぐらいがフィクションです(笑)」というが、同じくマンガの中では少年時代に実家の灯油運びを手伝ったことが握力を強くし、それが後の16連射に繋がったとする印象的なエピソードがある。これを真に受け、握力強化に走ったファミっ子(死語)も少なくなかったはずだ(※筆者含む)。

 「実際親父の灯油運びを手伝っていて、18kg弱のものを運ぶからそれを持ち続けるために力がないといけない。それで親父が鍛えろといって50kgのハンドグリップを4年生の時買ってきたんです。6年生の時にようやく握力が45kgになったんですけど、その時でも全部握り込むのは無理でした。小学生に50kgは無理ですよね」と語り、「本当の意味でいえば握力と連射の速さは繋がらないかもしれないけど、子どもが鍛えるっていうのはいいことじゃないですか。だから“鍛えた方がいいよ”っていうことを言わせてもらえればと。セミをウンチで取る話も、やっぱり小学生の読者にはウンチとおしっこネタが必要なので、そこを“えー”っていう訳にはいかないですよね」と当時を振り返る。

 このように全く事実と異なるエピソードであっても、大きな理解・視点に立って容認。有名な「ゲームは1日1時間」という言葉も、「1時間だけゲームをやって、あとは外へ遊びに行けっていうことなんです。遊びの中の1つとしてゲームがあるのであって、ゲームが遊びの全てになっちゃいけないっていうことです」といい、活動の中にも子どもたちへのメッセージを込めた。そうした姿勢があればこそ、一過性のゲーム名人として忘れ去られるのではなく、大人になったかつての子どもたちから再び支持を受ける現在に繋がっているのだろう。

 「最近の活動のメインは、ニコニコ生放送の中で番組をやることです。あとはイベントだったりでゲームの紹介をやることだったり。本来はうちの会社(5pb. GAMES)が出してるゲームの宣伝をするのがメインなんですけど、社長が一社だけじゃなくゲーム業界全体を盛り上げる活動をしてほしいと。そういったことなので、面白いと思ったゲームをいろんなところで宣伝する方向で動いています。やっぱり一社だけが盛り上がっても、ゲーム業界全体が盛り上がってくれないとしょうがないですから」。

 そんな名人に最近面白かったゲームを聞くと、「ケツイ ~絆地獄たち~ EXTRA」と「ロックスミス2014」という2本の名前が返ってきた。

 「『ケツイ』はうちから久々に出たシューティングゲームで、弾幕系なので難しいかもしれないですけど、面白いことにちょっとやるだけで慣れて、すーっと先へ行かれるようになるんです。敵をよけて弾を撃ってやっつける、シューティングって単純に遊べていいなって思いました」。

 『ロックスミス』は実際のエレキギターとエレキベースを使ったゲームで、ゲームをやるとロックのコード進行を覚えられるんです。私も高校の頃ベースを弾いたりしたのを思い出して、ちょっともう1回やってみようかなっていう気になりました。昔は教則本を買ってそれを見ながら、自分の好きな人のレコードを聴いてコピーしていったのを、それをこのゲームは全部やってくれるので、教則本がいらないんです。教則本にゲームの部分を取り入れているのはすごくいいと思います」。

 たしかに、思い返せばかつてのファミっ子たちは「桃太郎電鉄」を通じて日本の地理に詳しくなったものだった。『ロックスミス』の例もあるように、現在ゲームは純粋な遊びから知識や技術を身につけるための手段となり、コミュニケーションツールにもなるなど、その役割を広げている。

 「ゲームはこの30年で“遊び”っていうコンテンツの中に確実に入ったと思います。昔住んでたマンションの男の子にベイブレードってベーゴマをあげたらすごく熱中して、これで孫と遊べるってお爺ちゃんも喜んでくれたんです。おもちゃってそういうものであってほしいし、ゲームは年齢の差をなくしてくれるものだと思います。ゲームは私にとって30年間お世話になった業界でもありますので、これからもずっと盛り上げるための応援、バックアップをしていきたいです」。

 16連射は衰えてしまったと苦笑いする名人だが、ゲームに対する思いは今も全くあの頃と変わっていない。(取材・写真:しべ超二)

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