『炭水化物が人類を滅ぼす~糖質制限からみた生命の科学~』(夏井睦/光文社)
ダ・ヴィンチニュース

 皆さん年末年始はいかがお過ごしですか?

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 大晦日には紅白歌合戦を見ながら年越しそばをすすり、おとそとおせち料理で新年を祝い、こたつに入ってぜんざいとミカンを頬張りながら箱根駅伝を見る――これらは日本で見られる一般的な正月の過ごしかたと思われます。でも、こんな糖質たっぷりの生活を数日送ると気になるのは正月太り。休み明けに、どうやって体重を落とそうか悩む人も多いのではないでしょうか?

 そんなあなたにおすすめしたいのが『炭水化物が人類を滅ぼす~糖質制限からみた生命の科学~』(夏井睦/光文社)。著者は日本ではじめて「外傷の湿潤療法」を提唱するなど、常識と考えられていることを科学の目で見つめ直すことに定評のある、一風変わったお医者さん。彼が次に目をつけたのが「炭水化物(糖質)」なのです。きっかけは、何の気なしにはじめた糖質制限ダイエットで、なんと、半年で11キロの減量に成功し、高血圧や高脂血症、睡眠時無呼吸症候群が自然と治ったこと。その間、していたことと言えば、日本酒とご飯を抜いたことくらいで、唐揚げや天ぷらなど高脂肪・高カロリーのものは以前よりたくさん食べていた――この「医学の常識」をくつがえすような事象が彼の科学的探究心に火をつけたようです。

 この著者がすごいのは、「糖質制限」という食事法を足がかりに、

「ホモ・サピエンスの本来の食べ物は何だったのか?」
「人間はなぜ穀物を栽培するようになったのか?」
「農耕はどのようにして始まったのか?」

 といったことにまで、風呂敷を広げること。

 綿密にデータやエビデンスを集めて思考実験をすることで、人類文明発祥の秘密や、哺乳類誕生の秘密まで考察を深めています。読後には、現在、たんぱく質、脂肪とともに三大栄養素として祀り上げられている“炭水化物”が、単に「美味だが摂取しなくていい食材の一つ」と思えてきてしまうから不思議。糖質制限ダイエットを始める前の準備として非常に有用なのです。

 詳しくは本書を読んでいただくとして、ここでは私たちが主食(米、パン、うどんなど)と呼んでいるものがどれだけの糖分を含んでいるか、角砂糖(1個4グラム)を使いちょっとだけ紹介しましょう。

6枚切りの食パン1枚=角砂糖 約8個
白米飯1膳・素うどん1玉=角砂糖 約14個

 いかがですか? いかにこれらが糖分を含んでいるか、そしてこんなに糖分を含んでいながら、胸焼けさせることもなく食べさせてしまうデンプンの怖さ、穀物の怖さを感じられると思います。ちなみに厚労省と農水省が推奨する「食事バランスガイド」には、「1日にご飯なら中盛4杯、食パンなら6枚、うどんやそばなどの麺類なら3杯食べるのがバランスのとれた食事」とされていて、これらの主食に含まれる炭水化物(=糖質)を砂糖に換算すると、「1食あたり角砂糖 約28~38個」になります。ちょっと異常に感じられますよね。

 初期人類が登場したのが500万年前、現在の私たちの直接の祖先と考えられるホモ•サピエンスは25万年ほど前と言われていますが、穀物を摂取するようになったのは、たったの1万2千年前からなのだそうです。なので、もともと人体の構造は肉食動物に近く、そもそも穀物を大量に摂取するようにできていない――にもかかわらず、ここまで現代人が重宝するのは、その“甘さ”の虜になっているからだと著者は指摘、そしてその糖質中毒こそが、やがて人類を滅ぼすだろうと警鐘を鳴らします。要は、地下水の枯渇や塩害などの影響により、現時点でほとんど限界に来ている穀物生産が、激増する世界の人口(2050年に96億人に)を支えきれなくなるということ。なので、穀物なし、糖質なしという、人類本来の食生活を取り戻そうと本書は結んでいます。

 痩せたり、健康になるだけでなく、人類の危機を救うことになるかもしれない「糖質制限」。なんだかこう聞くとはじめたくなりませんか? さあ今晩からさっそくご飯を抜いてみましょう!

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