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 童貞が許されるのはいつまでか。そもそも、童貞ではいけないのか――。身近な事例から社会について考える、ニコ生社会学ゼミナール。2011年7月17日の放送では「性」をテーマに、「こんな童貞に誰がした~現代の格差と性~」と題して、社会学的観点から日本の性を討論した。話題の中心になったのは、NPO団体・ホワイトハンズの企画「成人合宿」だった。

 ホワイトハンズは生育環境や病気、コミュニケーションスキルや容姿などの条件に関係なく、すべての人に最低限度の性の健康と権利が保障されている「ベーシック・セックス社会」の実現を目指している。もともと障害者・要介護者の射精介助などの活動で注目を集めていたが、ことし5月に性体験のない男女を対象として、交際とセックス実習ありの「成人合宿」を行うと発表したことで、ネット上で議論を巻き起こした。多くの批判が寄せられたため、現在では実施を無期限延期にしているという。

 代表理事の坂爪真吾氏は、合宿の企画理由を「第三の道をつくるため」と説明する。従来、異性との性的経験を積むための方法は、容姿やモテる努力などが反映される自己責任型の自由恋愛か、お金を媒介とする売買春しかなかった。ここに一定のカリキュラムをこなせば、誰でも安全に異性との交際や性体験のスキルを磨ける「教習所」のようなものを新たに設けようというのだ。

 こうした背景には、08年の秋葉原無差別殺傷事件に象徴されるような(※犯人がインターネット上の掲示板に自らが童貞であると何度も書き込み、コンプレックスを抱えていたとされる)、童貞であることを「負い目」と見なす社会の存在がある。社会学者の貴戸理恵氏はこの理由を、

「男性というのは男性仲間に認められることで、性的存在として一人前になって行くというところが強くありますから、童貞であるということは男性仲間の侮蔑の対象になる」

と分析。また、フリーライターの赤木智弘氏は、

「本人は負い目に思っていなくても、周りが『それは負い目である』、『童貞であることはおかしい』ということを言っていれば、いずれそうした考え方を内面化して行ってしまう」

と、こうした思想や童貞に対する偏見が、メディアを通じて強化されていくと述べた。

■成人合宿でセックスすればリア充になるのか?

 では、成人合宿によって、この負い目を克服し、自信を持てるようになるのだろうか。赤木氏は、「セックス体験を一度したからといって、コミュニケーションが活発になるか。非コミュがリア充になるのか?」と疑問を呈する。

 フリーライターで自らも童貞の有村悠氏も同意して、「そこでやって一回きりで、その後どうにもならないというのなら、かえって重荷になりかねないんじゃないかという気がしなくもない」と、童貞を卒業したから万事解決とはならないとする。

 「性に何を見出すかだと思います」と言うのは貴戸氏。氏は性の「イキたい」「ヤリたい」という身体性の側面と、「つながりたい」という関係性の側面とを取り上げ、成人合宿では後者が満たされていない気がすると言う。また、男女の性に対する価値観が異なることにも触れ、本来は両性を対象にしている成人合宿が「すべての人」と言いながらも、男性の方ばかりを向いているのではないかと指摘した。

 こうした意見を受けて、坂爪氏は、

「成人合宿は社会学っぽいことを言うと、マックス・ウェーバーの言うところの理念型。つまり、ラディカルな枠組みではあるんですが、いろいろな人が議論のきっかけにできる材料です。ホワイトハンズの活動を通して、いろんなことを考えて、悩んで、議論していただければと思います」

と、同団体の活動目標の1つである「セックス・リテラシー」の向上に絡めて、話をまとめあげた。

(野吟りん)

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]ホワイトハンズの活動説明から視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv56222888?po=news&ref=news#09:00
・[ニコニコ生放送]「セックス体験を一度したからといって、コミュニケーションが活発になるか?」から視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv56222888?po=news&ref=news#24:05

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