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厳しいノルマに、絶対服従の上下関係――。過酷なことで知られる証券会社の世界を描いたマンガが注目を集めている。タイトルは「雨宮鬱子の証券会社で働いたらひどい目にあった」(宙出版)。新卒で証券会社に入った著者が、激務によって2年目でうつ病になってしまうまでを描いた作品だ。

冒頭から出社途中に気持ち悪くなり、駅のトイレで嘔吐。翌日には家を出ようと思ってもドアノブを握る手が震えてしまう。だが、休むと何を言われるかわからない。「非常識!」「これだからゆとり世代は…」といった言葉が頭に浮かぶ。

女性課長のパワハラと、厳しいノルマに追われ

鬱子が苦しんでいるのが、職場のパワハラだ。43歳独身の女性課長「豚腹独身(ぶたばら・ひとみ)」との関係がうまくいっておらず、ことあるごとに怒られる。少しでもビクついた様子を見せると、さらに激高した課長に「なんであんたにそんな顔されなきゃいけないのよ!」と怒鳴られてしまう。

辛いのは、業務時間だけではない。仕事終わりの飲み会でも、新人なのに注文をとらなかったと叱られる。夫の年収までネタにされ、「甲斐性なしじゃない?」と馬鹿にされるという、パワハラエピソードのオンパレードだ。

職場を殺伐とした空気にしているのが、証券会社特有の「数字至上主義」だ。常に他者と数字を比較され、競争し続けなければいけない。人事部も産業医も就職斡旋会社も、自分の味方にはなってくれない。ストレスで顔面麻痺になっても出社する同僚もいた。

証券会社の仕事内容も、鬱子を悩ませる。若い人はネットを使うため、証券会社の主要顧客は必然的に高齢者になる。情報に疎い高齢者を言いくるめて無理やり資金を引き出すような仕事もあり、「通常業務が法令違反ギリギリ」「倫理観を捨て法の目をかいくぐらないと私達はやっていけないんだ」と語る。

やがて鬱子は、出社することができなくなり休職。病院で「うつ病」と診断される。休職中は外出することも難しく、たまたま職場の近くを通っただけで動悸と吐き気が出る、という描写が生々しい。

最終的に鬱子は、そのまま退社。そして、自身の体験を元にしたマンガをブログに掲載する。それを書籍にまとめたのが本書だ。

共感とともに意外な「反感」のレビューも

証券会社の社内の空気と、そこで働いて病んでいく人を描いた珍しいマンガだ。職場の人間関係がうまくいかなくなると、人生が地獄のようになる様子がよく分かる。昨年秋の発売以来、ネットでも続々とレビューが寄せられており、共感する声も多い。

「面白い。パワハラは大なり小なり似たようなことはあるけれど、証券会社特有?の体育会系の仕組み(休みが取れない、仕事の延長に飲み会がある、貶して育てる)といったことに適応できる人間のほうが少ないでしょう」

一方で、意外なことに著者に批判的な声もある。作品の最後で著者は、現在はマンガを書きながら二児の母親をしていることを明かしていたが、こうした点について「かなり興ざめした」というのだ。

「健気で可愛い自分が、意地悪な会社の人たちにいじめられた、『悲劇のヒロイン』として読者に見せたかったのでしょうか?」
「嫌なことから逃げて専業主婦になれてよかったね。旦那が稼いでくれるから自分はお金にならないマンガを仕事にできて、いいご身分だね。と思ってしまいました」

不幸な環境を脱出して幸せになった人を祝福してもよさそうなものだが、そういう気持ちになれない人も少なからずいるようだ。

マンガの中では、43歳独身の女性課長が「仕事だけのこんな人生…、みじめだわッ!」と嘆きながらビールを飲み干す場面がある。この課長のように、日々強い不満を抱えながらも、仕事に生きざるをえない人が多いということなのだろうか。

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