代替テキスト
お盆の東京駅の様子。年末にはよりいっそうの人出が予想される(写真:共同通信

緊急事態宣言が明けた今、実家への帰省や孫訪問を再開する人が増えている。だが、「そのことが新たなトラブルやあつれきを生んでいる」と言うのは、夫婦問題や家族問題についてのコンサルタントをしている寺門美和子さんだ。

ワクチン一つとっても、夫妻で考え方が違い、家庭内分断が起きているほど。そこに新たな家族が加われば、いっそう複雑化します。ひさびさの一家だんらん。安心して、楽しく過ごすためにも、互いに配慮が必要なのです」

そこで、コロナ時代の帰省・孫訪問トラブルを防ぐ“新マナー”を専門家が提案。

【移動前にPCR検査を受ける】

PCR検査は、症状がなければ全額自費のため2万〜3万円かかる。だが、ナビタスクリニックの医師・山本佳奈さんはこう語る。

「高額ではありますが、安心して家族と過ごすためです。一方、抗体検査は安価ですが、感染していても一定程度のウイルス量が増えていなければ反応しないため、精度が高いとはいえません。検査の結果、陽性であれば、迷わず移動は控えましょう」

また、感染者が少なくなったとはいえ、いつ、どこで感染するかわからない状況は続いている。

「帰省先などでも医療機関を利用できるよう、保険証は持って行きましょう。滞在中に風邪などの症状が出たときは、家庭内隔離をして、家族との距離もしっかりととるように」(山本さん)

【近くのホテルに泊まることを検討する】

“孫に会いたい”というのは、多くの人に共通する思いだが、「それでも今は来ないでほしい」と複雑な心境にある人もいる。

感染者が少ない地域の場合、感染者が多い首都圏などから家族が来ると、近所から嫌がられることもあるそうです。実家などに集まらず、近くのホテルを利用することを検討してもいいかもしれません」(寺門さん)

コロナ禍で家族と過ごすためには、仕方ないことかも。

「広めの部屋をとったり、手料理の代わりに少し高級なレストランに行ったり、いつもとは違った過ごし方をするのもいいかもしれません」(寺門さん)

インフルエンザワクチン接種を検討する】

高齢者がインフルエンザに感染すると、重症化して命に関わることもある。

「コロナと同じように対策が必要です。昨年、流行しなかったため油断している人は多いですが、接種しておいたほうが無難でしょう。新型コロナワクチンの接種開始前に米国のコーネル大学の医師が、イタリアの高齢者を対象にした調査では、インフルエンザワクチンの接種率が40%の地域ではコロナウイルスでの死亡率が約15%だった一方、接種率70%の地域では死亡率が約6%と低かったそうです。免疫力を強化し、コロナの感染を防ぐ可能性もあるため、インフルエンザワクチンの接種もおすすめします」(山本さん)

もはや、ワクチン接種は帰省の前提条件。重症化を防ぐ効果に加え、ブレイクスルー感染のリスクも大きく軽減できる。

また、感染対策のルールを訪問先とすり合わせるのも忘れずに。マスク、手指消毒、食事のマナーなど、どこまで対策を徹底しているのかを事前に実家や子ども家族にチェックしよう。

そして、ローカルルールも事前にチェック。エレベーターの乗り方、レジの待ち方など、地域やマンションごとに決められているルールがある場合は事前に知っておこう

「たとえば、エレベーターに乗る前に、設置してあるアルコール消毒をして、階数のボタンは直接指で押さず、鍵などを使って押すことをルールとしているマンションもあります。こうしたローカルルールは住人しか知らないので、事前に聞いておきましょう」(寺門さん)

年末が近づくにつれて、帰省などをする人は増えていくが、11月後半には第6波がくる危険性も指摘されている。コロナ禍の新マナーを身につけて、大事な家族と楽しい時間を過ごそう。