『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、新政権でも政治倫理の腐敗は継続すると考えられることから野党に望むこと。

(この記事は、10月11日発売の『週刊プレイボーイ43号』に掲載されたものです)

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ここ数年、目を覆うばかりの政治倫理の腐敗を私たちは目にしてきた。

つい最近も不適切な接待を受けたとしてデジタル庁幹部が処分される一方で、同席した平井卓也デジタル担当相は処分なしで給与1ヵ月分の自主返納のみという信じられないシーンを目撃したばかりだ。

不処分の理由が振るっている。接待に同席したことで行政がゆがめられた証拠はない。そのため、大臣規範にも触れるわけでもなく、ましてや検察に起訴されたわけでもない。だから、処分の対象にならないという。

第2次安倍政権で発覚した安倍晋三元首相の「森友・加計・桜」疑惑、甘利明氏のUR口利き疑惑、小渕優子氏の「観劇会」不正支出疑惑なども、部下だけが処分されたり、刑事訴追される一方で、前述のような理屈で本人は事件化を免れてきた。そこに共通するのは法律に触れるという明らかな証拠がなく、検察や警察に捕まらなければ問題なしとする政治倫理の腐敗だ。

近年は、それがさらに深まったような印象さえある。「安倍官邸の門番」と呼ばれた黒川弘務元東京高検検事長の定年延長の騒動や、安倍元首相の友人であるジャーナリストの準強姦罪疑惑で、彼への逮捕状執行を止めた中村 格氏を警察庁長官に昇進させるなど、政治家やそのお友達を立件しない検察官、逮捕しない警察官が政権内で重用されてきた。政界の倫理が「捕まらなければよい」から「捕まえさせなければよい」へと、さらに劣化したわけだ。まさに「地に堕ちた政治倫理」である。

本来なら、政治家には「李下(りか)に冠を正さず」という高い倫理性が求められる。人の道に反する行為をしているのではないかと有権者に疑われるだけで責任を問われる立場にあるのだ。

しかし、今の日本の政治は明らかにその倫理が劣化し、さらなる堕落が進む状況にある。

看過できないのは岸田文雄首相が率いる新政権でもその流れが続きそうなことである。その象徴が甘利氏の党幹事長起用だ。経済再生相当時、大臣室などで口利きの見返りとして計100万円を直接受け取ったという証言が報じられたにもかかわらず、甘利氏はなんの説明もしていない。本来なら、議員辞職モノだ。

その甘利氏を岸田首相は自民ナンバー2の幹事長に起用した。甘利氏の登用には安倍、麻生両元首相の意向があったとされる。ふたりのキングメーカーへの忖度(そんたく)は明らかだろう。事実、森友問題の再調査はしないと、岸田首相は明言している。新政権でも政治倫理の腐敗は継続すると考えるべきだろう。

だからこそ、野党に望みたいことがある。秋の臨時国会で国政調査権に基づく強力な権限を持つ森友問題調査委員会の創設を岸田政権に提案してほしい。また、岸田首相は自らの「聞く力」をアピールしている。ならば、首相に公文書改竄(かいざん)を苦に自殺した赤城俊夫さんのご遺族・雅子さんと面会し、その話をじっくり聞くべきという要求もしてほしい。

その声に岸田政権がわずかでも応じる気配を見せれば、これ以上の政治倫理の腐敗に歯止めがかかる希望が生まれる。応じなければ、野党は岸田首相の政治倫理の劣化を指摘し、国会論戦で攻勢に出ればよい。

民主主義を守るために、政治倫理を正すことが喫緊の課題だ。

古賀茂明(こが・しげあき) 
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中。最新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)が発売中

「民主主義を守るために、政治倫理を正すことが喫緊の課題だ」と語る古賀茂明氏