あと5歳で違法行為に…結婚詐欺と疑われながらも20歳のネパール人女性と5000キロの遠距離恋愛を3年間続けた男性(35)の話 から続く

 ネパール出身のさーちゃんさんと結婚したけんいちろうさん。お2人が結婚するまでにはいくつもの障壁があった。通算3年にも及ぶ遠距離恋愛の末、結婚し、現在は日本で暮らしている。

 そんなお2人にこれまでの話を詳しく聞いた。(全2回の2回目/前編を読む)

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「結婚はまだできない。家族が心配だから」

――お2人が次に会うのはいつになるのでしょうか?

けんいちろう 帰国した翌年の冬です。ちょうどさーちゃんと僕の誕生日が2日違いだったので、それに合わせてネパールに行きました。

さーちゃん びっくりしました。本気なんだと。まさか日本からわざわざ会いに来てくれるなんて。でもその時はただ誕生日を祝うだけで、結婚に関しての話はほとんどしなかったです。

けんいちろう それから次に会ったのが2年半後です(笑)。2年半の間、諦めず連絡を取り合って、僕も日本で結婚の準備をして、3年ぶりにネパールに向かいました。

――そこでようやく結婚の話が…?

けんいちろう いや、それが全然話せず…。もし結婚の話をして断られたらこの2年半はなんだったんだと思ってしまうので、怖くて言い出せなかったです。でも結婚するために来たのだからと、最終日にその話をしたんです。

さーちゃん プロポーズをされました。でも私は「結婚はまだできない。家族が心配だから」と断ったんです。

けんいちろう ショックでしたね。3年間さーちゃんと結婚するために動いてきて、ようやくプロポーズしたら、まだ結婚できないと…。

 大学生のさーちゃんが茶屋を1人で切り盛りして、自分の時間もあまりない、そんな状況はあまりにもさーちゃん1人に背負わせすぎだと思って、さーちゃんの家族に話すことにしたんです。「僕はさーちゃんと結婚がしたいんだ」と。家族のみんなは驚いていました(笑)。友達程度に思っていたようで、結婚の話まで進んでいるとは…と。

秘密裏に行われた家族会議は「賛成」と「反対」で真っ二つ

 翌日家族会議が行われました。主なメンバーは、祖母、母親、長女、次女、弟(長男)、妹(4女)、叔父の7人で、僕とさーちゃんのいない場所で秘密裏に行われ、意見は賛成と反対で真っ二つに割れたそうです。

〇賛成派

母親・・・「娘が選んだのだから好きにしてよい。ただし、一緒に暮らすこと」

次女・・・「日本人と結婚というのはビックリしたけど、いいと思う。私も日本へ行ってみたいな」

4女・・・「ケン(僕)とお姉さんが結婚!? いいんじゃない?」

叔父・・・「結婚するなら早いほうがいい、さっさと結婚しろ」

●反対派

祖母・・・「さーちゃんが遠い国へ行くなんて耐えられない。行かないでおくれ」

長女・・・「さーちゃんがいなくなったら、レストランはどうなるの? 絶対反対!!」

長男・・・「姉貴はだまされている! 日本で酷い目に遭うに決まってる。俺の生活はめちゃくちゃだ!」

 賛成派も反対派も出来れば同じカーストのネパール人と結婚したほうが良いのではないかと思っていたみたいです。その中で比較的海外経験があり、柔軟な考えの持ち主であるさーちゃんの叔父がみんなを説得してくれて。「田舎の茶屋にさーちゃんを縛り付けるのは可哀そうだ、もし茶屋の担い手が見つからないのなら俺が探してきてやる」と。最終的には反対派も条件付きで結婚に賛成してくれました。

――条件とは…?

けんいちろう 現時点で、さーちゃんがいなくなるのは、一家が生活するうえでも厳しいので、結婚後2年間はさーちゃんだけサランコットに留まること。2年後さーちゃんが日本で暮らすようになったら残った家族でレストランの経営は何とかする。それまで僕は日本で待つこと。たださーちゃんが日本へ一度も行かないのは不安があるので一度日本へ連れていくこと。そして日本の家族へ挨拶に行くことが条件でした。これでようやく結婚へ進み始めました。

――さーちゃんさんはどうでしたか?

さーちゃん 不安はありました。ネパールは家族の絆が強いので、将来日本で暮らすのは寂しいなと思っていたし。そもそも村からほとんど出たことないのに日本に住むって大丈夫なのかなって。

初めて日本に来て「私ここで暮らすの絶対無理」と思った

――そして結婚することになったんですね。

けんいちろう ネパールでの手続きが大変でした。役所の人は仕事が遅いし、書類のミスはあるしで、かなり時間がかかりました。でも彼らはカースト上位の人なので、文句言ったり、早くしてなんて絶対言えないんです。婚約届だってほいって投げられたり、冷たくあしらわれたり、いびられてましたね(笑)

 そのあと地元警察による身辺調査があるんですけど、日本人と結婚するということで村中大騒ぎでした。村の老人から「警察に渡すお金用意した?」と言われて、「え、お金が必要なんですか?」と聞くと、「慣例でお金が必要なんだよ。渡しておくから4000ルピー出して」と。すっかり信頼して、4000ルピー渡しました。

さーちゃん 詐欺ですよ(笑)。後からけんいちろうに聞いて、そんなのに騙されたの? って驚きました。外国人と結婚するとこういうことが起きるんです。まあ良い勉強になったと思っていますが。

――そして無事結婚してお2人で一度日本に行くんですよね。

さーちゃん そうです。飛行機も初めてだし、水道が蛇口から出るのも新鮮だし。日本についてからも電車や高層ビルを見て、ここは本当に現実? と思いました。全てが違ったので。その時に「私ここで暮らすの絶対無理」と思いましたね(笑)。その後、私だけネパールに帰国して2年間ネパールで生活して、2018年にようやく日本で一緒に暮らし始めるんです。

――出会いから5年、ようやく一緒の生活が始まるんですね。

けんいちろう そうですね。愛知県の田舎で、2人暮らしが始まりましたが、さーちゃんにとってはかなり大変な生活だったと思います。

さーちゃん 外に1人で出るのは不安だし、日本語はわからないし。最初はどこに行くにもけんいちろうと行動していました。初めてウォシュレットを見たときはボタンが多すぎて、何がなんだかわからなかったし、自動販売機ボタンを押すといきなり飲み物が出てきたり(笑)

 牛肉は食べれないのにいたるところに売っているし。カレーは全然味が違うし(笑)。驚きの連発でした。でも日本語学校に通い始めて少しずつ言葉もわかるようになって、今では1人で大体のことはできるようになりましたね。ジャワカレーの辛口がすごく美味しいので、よく使っています(笑)

けんいちろう 今はさーちゃんも働いているんです。本当だったら年に1回か2回はネパールに帰りたいんですけど、コロナ禍で2年も帰れていないです。

さーちゃん テレビ電話で近況報告はしているんですけど、すごくさみしいです。おばあちゃんはあまり体調が良くないので、心配だし。早く状況が良くなって帰れるといいなと思っています。

――早くネパールに行けることを祈っています。ありがとうございました

(「文春オンライン」編集部)

けんいちろうさんとさーちゃんさん