(ファンドビルダー:韓国コラムニスト)

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 韓国は、10月初頭になると、意気消沈状態となる。なぜならこの時期に、ノーベル賞受賞者の発表があるからだ。

 ノーベル賞では、生理学・医学、物理学、化学、文学、経済学、平和、6分野での受賞者が選出される。白眉はやはり自然科学における賞だ。自己顕示欲の強い韓国人は、悲願とも言える自然科学系のノーベル賞を受賞して、韓国人の優秀性を世界中に知らしめたいのだ。

 だが、2021年もまた例年と同じように韓国人受賞者はなく、それに伴う韓国人の失望感は大きかった。

 一方、日本は自然科学分野のノーベル賞受賞者を25人輩出している(米国に帰化した南部陽一郎氏と眞鍋淑郎氏を含む)。特に2000年以後のノーベル賞受賞者(自然科学)は20人を数える。ほとんど毎年1人の割合で受賞している計算だ。ゆえに、普段は「日本に追いついた」と錯覚している韓国人の多くが、10月初頭だけは現実を自覚し、日本に対する劣等感に陥るのだ。

 GDP(国内総生産)基準による世界10大国家は、米国、中国、日本、ドイツ、英国、インドフランスイタリアカナダ、そして韓国だ。この中で、ノーベル賞自然科学)を受賞していない国は、韓国だけだ。

 1999年に国際通貨基金(IMF)は、G7(先進7カ国)と韓国などの新興国で構成された国際機構としてG20を旗揚げした。この中で、ノーベル賞自然科学)を受賞していない国は4カ国だが、そこにも韓国が含まれている。

 OECD(経済協力開発機構)は世界主要37カ国が会員だ。この中で、ノーベル賞自然科学)を受賞していない国は10カ国程度しかないのに、やはり韓国が含まれる。

 もちろん、ノーベル賞自然科学)の受賞は難しい。だが、歴代の統計を調べると、世界主要国の場合は受賞していないことがかえって異常なことのように映る。極東アジアという同一の環境条件にある日本、中国、台湾と韓国の4カ国を比較すれば、韓国の異常性はより一層際立つ。

下層民だった朝鮮人陶工を優遇した日本

 日本のノーベル賞自然科学)の初受賞は、1949年物理学賞だった。ノーベル賞制度が始まったのが1901年なので、日本は48年後に初受賞したことになる。そして今まで25名の日本人(日系人1人を含む)がノーベル賞自然科学)を受賞している。

 中国の場合、初受賞は1957年物理学賞だった。中国系米国人2人が、共同受賞した。そして、今までに8人の中国人(中国系7人を含む)がノーベル賞自然科学)を受賞している。

 台湾の場合は、初受賞は1986年の化学賞だった。台湾系米国人が受賞したが、受賞者はその後、台湾国籍を正式に取得した。現在、台湾唯一のノーベル賞自然科学)である。

 日本、中国、台湾が、それぞれ、72年前、64年前、35年前からノーベル賞自然科学)を受賞しているが、韓国は相変らず沈黙を守っている。仮定だが、もしも韓国が2022年にノーベル賞自然科学)を受賞したら、ノーベル賞制度が始まってから121年後の初受賞ということになる。日本より73年も遅れ、中国より65年、台湾より36年遅れたことになる。

 それでは、韓国が2022年にノーベル賞自然科学)を受けられるだろうか。可能性が全くないわけではない。だが、受賞できない確率が高いという点だけは明らかだ。なぜなら、韓国は過去において技術者を軽視する文化が非常に強かった上に、その痕跡が現在でも残っているからだ。

 技術者を軽視する歴史を持っている国家と自然科学分野のノーベル賞は、互いに相容れないだろう。500年の歴史を持つ朝鮮は、儒学の一つである性理学と朱子学を崇拝した。その一環で、士農工商という徹底した身分制度が継続され、技術者はことごとく蔑視されていた。

 1592年から1598年までの間に、朝鮮半島で起きた壬辰倭乱(文禄慶長の役)と丁酉再乱(慶長の役)の余波により、多くの朝鮮人陶工が日本に連れられて行った。

 もっとも、朝鮮では下層民として貧しく過ごしていた陶工だが、日本では朝鮮人陶工は技術者として正当な待遇を受けた。技量が優れていれば、多くの富を獲得し、名誉まで得ることができた。朝鮮人陶工は、努力すればそれだけ待遇が良くなる日本で、初めてその才能を発揮できることになったのである。

 おかげで、1600年代中盤以降、日本製の陶磁器の品質と芸術性は、朝鮮と中国の陶磁器を圧倒した。日本の陶磁器は欧州などへ輸出され、世界から讃辞を受けることになり、日本の富国強兵に役立った。代表的な朝鮮人陶工には、李参平、沈寿官、百婆仙などがいて、日本陶磁器産業の発展に大きく寄与した。

 朝鮮人陶工は、その後、朝鮮に戻る機会がいくらでもあった。だが、朝鮮に戻った比率は10%にしか過ぎない。残りの90%は朝鮮への帰国を拒否し、技術者を優待する日本社会に定着した。

「両班」が陶工を叩くのと変わらない今の韓国

 その後も、韓国における士農工商的な思考は継続された。司法試験に合格し、判事、検事、弁護士となり出世することを最高の成功とみなす風土が、韓国では近年まで半世紀以上続いた。

 今日、韓国の優秀な学生は、医科大学入学を目標にして猛烈に競争する。だが、韓国における医師というものは、安定的専門職としての人気が高いだけであり、純粋科学を研究するというところからは少し距離が離れている。

 2017年11月2日文在寅政権になって初めて開かれた経済関係長官会議に、若干遅刻した企画財政部長官(金東兗氏)は、さらに遅く到着した公正去来委員長(金尚祚氏)に向かって、「私よりさらに遅れましたね」と声をかけた。すると公正去来委員長はこのように応えた。

「財閥をこらしめていまして」

 金尚祚・公正去来委員長は、大学教授出身の官僚だ。財閥とは大企業を意味する。言い換えれば、学者出身の官僚が、ビジネス活動で金を儲ける大企業をこらしめたという話になる。朝鮮時代の両班などの支配階層が、陶工などの技術者に向かって大声を上げるのと、根本的に変わらない姿であった。

 韓国がノーベル賞自然科学)を受ける確率が低いということを後押しする根拠として、迷信や怪談などを信奉する韓国人の非科学的態度も省くことはできない。

 英国出身の女流旅行家、イザベラ・バード(1831~1904)は、19世紀末に朝鮮を訪問した。彼女の朝鮮紀行にはこのような記述が出てくる。

「朝鮮は迷信崇拝のために毎年250万ドルを浪費する」

 当時の朝鮮全体の貿易額(1127万ドル=輸出473万ドル+輸入654万ドル、1896年の例)の20%以上を迷信崇拝に注いだ計算だ。巫女や占い師などに吉凶の占いを頼むなど、その時期の朝鮮は国家リーダーから農民までみな迷信崇拝に陥っていた。今日の韓国人もまた根本的に違わない。

 日本統治時代に建設された主要建物を指して、「日帝が朝鮮の民族精気を断ち切るために建設した」と話す場合が少なくない。山で古くなった鉄杭が発見された場合、「日帝が民族精気を絶つために打ち込んだ」と断定する場合も多い。実体が全くない非科学的な「民族精気」というものを、今日も多くの韓国人は信奉する。

 迷信は、現在の韓国では姿を変えて生命力を持続している。

「原発処理水は無害」という報告書をまとめた研究者は懲戒に

 2017年6月19日文在寅大統領は、「古里1号原発永久停止宣布式」行事でこのように話した。

福島原発事故により、昨年3月基準で、合計1368人の日本人が死亡した」

 1368人という数値には、客観的根拠が全くなかった。日本政府は同年6月22日、韓国政府に対して「正しい理解に基づいておらず、非常に遺憾」と抗議し、6月28日、韓国政府は「錯誤があった」と釈明した。一国の大統領演説文に、市中に飛び交う根拠のない数値や怪談水準の話が入れられるという事実は、非常に驚くべきことだ。

 福島原発事故と関連して、多くの韓国人は極度の非科学的態度を見せる。これによって、「日本は放射能汚染のかたまり」「日本は死の土地」「放射能だらけの日本農水産物」などの偽情報が韓国では量産されている。

 福島原発の希釈処理水放流方針に対しても、韓国人は徹底して非科学的態度を固持する。無条件に「福島放流によって太平洋が放射能で汚染される」というわけだ。

 これに対して、科学的分析を通じて、福島放流が韓国に及ぼす影響はほとんどないという結論を示した報告書が、2020年8月に公開された。ところが、報告書を作成した韓国原子力研究院所属の研究員は懲戒処分にされた。科学よりも偽情報を信じたいという、韓国政府と韓国人の気持ちを踏みにじったことがその理由なのだろうか。

 韓国社会がこういった迷信に囚われているためなのか、オリンピック開催を進める日本をターゲットに、「日本=放射能汚染国家」というメッセージを国際社会に拡散するということまでした。

 今日の韓国人の非科学的態度と迷信崇拝性向の代表的な例は、2008年4月から3カ月間にわたり韓国で繰り広げられた「狂牛病騒動事件」だ。

韓国人がノーベル賞(自然科学)を取れない理由

 米国産牛肉を食べると狂牛病にかかって脳に穴があくという偽情報が韓国全土を支配し、興奮した韓国人は米国産牛肉輸入反対を叫んで、会社員、学生、主婦、子供など老若男女区分なしに、3カ月間にわたって、ほとんど動乱に近いデモを展開した。

 米国産牛肉が狂牛病を起こすという偽情報が生まれて、これによって国民的騒動にまで発展した国家は、21世紀の地球上で韓国が唯一である。ちなみに韓国で、現在まで米国産牛肉を食べて狂牛病にかかったという人間は1人もない。

 結論的にいうならば、技術者蔑視の歴史の余波と非科学的な迷信崇拝が、韓国人ノーベル賞自然科学)を遠ざけている大きな理由なのだ。

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2021年のノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎氏(写真:ロイター/アフロ)