物価の上昇が続く韓国で、塩の価格高騰が庶民の悩みの種になっている。その理由として、韓国でまことしやかに囁かれているのが、福島第一原発の処理水による海洋汚染だ。処理水の海洋放出によって、韓国沿岸で塩が作れなくなったという。果たして、塩の価格上昇の真相は──。

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(立花 志音:在韓ライター

 卵から不動産まで韓国の物価上昇が止まらない。昔からこの国の物価上昇率は日本と比べてもとても高く、韓国人の間でも「目を閉じて開けただけで物価が上がる」と冗談で言われているほどだ。

 農作物の価格も普段から不安定で、韓国の2大名節である旧正月や旧暦の中秋の前には、野菜や果物、そして卵の値段が天気に関係なく毎年跳ね上がる。

 それでも、今年の2.2%という物価上昇率は一般庶民の生活には厳しい。そして、住宅価格の上昇は文在寅政権の一番大きな課題の一つであり、国民の大きな関心ごとである。

 2019年11月文在寅大統領は「我が政府は不動産問題を解決する自信がある」と大風呂敷を広げ、強力な不動産規制政策をかけたが、失敗に終わった。

 2年後の今年9月26日青瓦台ポークスマン、終盤に差し掛かった文在寅政権のこれまでの政策の中で、一番残念なことは不動産問題だったとして、申し開きのしようもないと謝罪した。

 初めは住宅価格の上昇に沸いていた人たちも、資産が増えることよりも課税負担の方が大きくなり、住宅所有者の85%が価格上昇を「いやだ」と思っている。

 今では20代の68%が「住宅価格はさらに上昇する」と考えている。もう現政権に対し、不動産問題の解決を期待している人は誰もいないようだ。

塩の価格高騰は福島原発の処理水せい?

 先のスポークスマンは不動産政策の失敗を陳謝したことに続けて、最近の文大統領の関心ごとは卵の価格だと述べた。市民の生活に直結している物価の心配をしているという意味である。

 今年はずっと卵の値段が高かった。2020年末から今年の初めにかけて鳥インフルエンザが大流行して、産卵鶏の23%が殺処分された。その影響もあり、2020年の平均は30個で5000ウォンだったのが、最近では1万ウォンを超えることもある。

 政府は春過ぎには価格を安定させるとして、2021年1月から9月までに1500億ウォンを投入して3億8538万個の卵を輸入した。それを475億ウォンで販売したので政府は1023億ウォンの損失を抱えた。

 鳥インフルエンザ対策も思うように進んでおらず、卵の価格安定はまだ難しいようだ。

 そして今、塩の価格が昨年比で5倍まで跳ね上がっている。しかも、その理由がまた日本のせいになっている。韓国の塩の価格暴騰は、福島第一原発の汚染水を日本政府が海に放流したせいで、塩が作れなくなったからだというのだ。おかげで、今年はキムチ漬けもできないと親戚が嘆いているのを息子と一緒に聞いた。

 以前も似たような話があった。2015年にツナ缶の値段が一斉に上がったことがある。理由は太平洋クロマグロの資源量を回復させるために、国際機関の中西部太平洋マグロ類委員会(WCPFC)が30キロ未満の小型魚の漁獲量を制限したためだった。

 その時も、日本がマグロを取りすぎるせいで韓国のツナ缶が値上がりするのだと、散々報道していた。しかも、その規制が報道された途端に価格が上がった。規制による影響が原価に上乗せされる前から小売り価格が上がったことは、当時の筆者の疑問であり、主婦としての不満だった。

 塩の価格暴騰の話を聞いた日、帰宅途中に息子がボソッと聞いてきた。

「ねぇ、さっきの話だけどさ、福島ってあっち側(太平洋側)だよね。福島から出た水がそんなに早く南海(東シナ海)に回ってくるのかな。その前に韓国人、福島がどこにあるのか知ってるのかな?」

 よくぞ言った、我が息子! ケネディを知らなくても、そこに疑問を感じた君の視点に乾杯である。

地理を知らなすぎる韓国人

 5年ほど前、銀行のカウンターに行った時のことである。筆者が日本人であることを知った女性の行員が、「今度の長期休暇に沖縄に行きたいと思っているのだけれど、どんな場所なのか」と話しかけてきた。沖縄―ソウル間に格安航空会社LCC)の運行が始まった頃のことである。

 沖縄旅行にぜひ行ってみるといいと筆者が勧めると、女性の行員はこう言った。

「でも、放射能とか怖くないですか? 大丈夫でしょうか?」

 筆者は一瞬言葉を失った。そして様々な突っ込みが頭の中をめぐり、言葉として発しそうになったが一旦すべて飲み込んだ。福島と沖縄間の距離は、福島とここ韓国の間の距離の2倍くらいあると思いますよ。とだけ話して銀行を後にした。

 普段から異常なほどに日本に関心を持っているのに、日本の地理には関心はないらしい。外国の都市名を知らないことに目くじらを立てるつもりはないが、北海道全土が札幌という地名だと言い張っていた韓国人たちの会話を実際に外で耳にしたこともある。

 100歩譲って福島がどこにあるか認識しているとして、日本の東岸で千島海流と日本海流が合流して東へ向かうなどということは、日本人には常識でも、韓国人には関係のない話だろう。

 ところが、皮肉なことに、2年前に在韓日本大使館が発表したところによると、東京やいわき市よりもソウル市の放射線量の方が高かった。これは河野外務大臣の時代から、「韓国において日本の放射線量についての関心が高まっていることを受けての対応」として計測しているものだ。

 自国の放射線量の高さを棚に上げて、日本に対しては福島第一原発事故による放射線問題を持ち出しては様々な言いがかりをつけてくる韓国は、相変わらず韓国である。

韓国で塩の値段が上がった本当の理由

 塩の価格暴騰の理由は果たして何なのか。筆者が調べてみたところ、意外な答えが見つかった。

 韓国内で最大規模の塩田がある全羅南道の新安郡では働き手不足と収益性の低下によって、塩田だった場所に次々と太陽光発電システムが設置されているという。

 2016年に全国3800ヘクタールあった塩田の面積は、5年の間に3050ヘクタールまで減少していた。塩の生産量は2年で半分近くまで落ち込んでいるという。なんということだ、濡れ衣を着せられた側からしたら、笑うしかない

 ちなみに、韓国が福島原発事故によって水産物の輸入停止措置の対象とした地域は、2017年時点で青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉である。ただ、この地名を見ると海と関係のないところも少なくない。当然、日本の読者は栃木、群馬に海はないことはご存知のはずだ。韓国政府も、地理に弱いということだろうか。

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