enpaku(エンパク)の通称で親しまれている早稲田大学演劇博物館が、特別展「家族の肖像――石井ふく子のホームドラマ」を、2021年10月11日から開催している(~2022年1月23日まで)。

この特別展では、テレビ草創期 から日本のホームドラマの歴史を創ってきたテレビプロデューサー・石井ふく子の仕事に焦点を当て、氏が手がけてきたホームドラマの歴史を、台本や映像などの諸資料を通じて振り返るとともに、それぞれの時代に描かれてきた日本の家族のあり方を考えていく。

石井は『カミさんと私』、『女と味噌汁』、『肝っ玉かあさん』、『ありがとう』、『おんなの家』といった大ヒットドラマをプロデュースし、日本の家族イメージの形成に多大な影響を与えてきた。その手腕は95歳の現在も衰えることなく、『渡る世間は鬼ばかり』はシリーズ終了後も、たびたびスペシャル版が放送されている。

『ありがとう』

『ありがとう』

本展の中心となるのは、石井が脚本家・橋田壽賀子氏と作り上げたシリーズ『渡る世間は鬼ばかり』の関連資料。会場では、懐かしいドラマ映像や石井氏のインタビュー動画(早稲田大学国際情報通信研究センター制作)に加え、『渡る世間は鬼ばかり』でナレーションを務めた石坂浩二と、同作品に子役時代から出演し続けたえなりかずきのインタビュー動画も上映。

現在もプロデューサーとして活動を続けている石井は、長年にわたりテレビのなかで「家族の肖像」を描いてきた。石井ドラマファンが必見なのは当然として、家族のかたちが多様化している今、家族とは何かを改めて問い直すきっかけとして、この特別展を鑑賞するのもまた意義深いのではないだろうか。

左:『ありがとう』台本(1972年)

左:『ありがとう』台本(1972年