踏切の警報音は「カンカン」――。多くの人がそう思っているでしょう。しかし仕様書などで公的に定められているわけではなく、擬音に過ぎません。中には「チンチン」という人も。そして「ジャンジャン」という表現を見かける地域もあります。

音量も音色も異なる踏切警報音

踏切は主に踏切警標・警報機・遮断機の3つで構成されています。細かい部分で差異はありますが、カラーリングは黒・黄色が一般的で、そのほか外観的なバリエーションは多くありません。しかし警報機、特にそれが発する警報音に耳を傾けると、様々な音があることに気づくでしょう。

そもそも騒音は、環境基本法が定める環境基準に適合するように決められています。上限は用途地域によって変わりますが、住居エリアは午前6時から22時までは最大でも55デシベル以下に、22時から午前6時までは45デシベル以下に抑えなければなりません。一方の工場エリアでは、6時から22時までが60デシベル以下に、22時から6時までが50デシベル以下に規制されています。

とりわけ住宅街は騒音に対する規制が強いのですが、鉄道騒音に関しては新幹線を除き、規制が適用されません。とはいえ、できるだけ騒音を出さないように鉄道事業者は努めています。しかし、踏切周辺は視認性の確保などの理由から防音壁を設置できません。警報音も騒音のひとつ。その対策として、遮断機が完全に閉まると音量が下がるような踏切の導入が進んでいます。

音量のほか、音色による違いも。踏切の警報音は大別して、電子音式・電鐘式・電鈴式があります。正確な規則性はないようですが、京都などの昔ながらの街並みが残るエリアでは、あまり機械的な音が好まれていないようです。そのため、昔ながらの音色を響かせている踏切が多い印象を受けます。

さて、ここまで「踏切警報音」と表現してきました。その音は文字化すると「カンカン」といった具合に擬音で表現されることが多くあります。それは擬音表現の方が、読んでいる人たちにも伝わりやすいからです。

「ジャンジャン」鳴る踏切がある?

しかし、擬音表現は聞いている人が自身の主観と感性に基づいて文字へと変換しているに過ぎません。例えば、犬の鳴き声は日本なら「ワンワン」が一般的ですが、英語圏だと「バウバウ」が一般的。同様に、踏切の警報音も「カンカン」が一般的ですが、「チンチン」と表現する人もいます。

踏切警報音の擬音表現に正解はなく、国土交通省をはじめ地方自治体の公文書、鉄道事業者が出す文書などにも擬音表現は見当たりません。そうなると「踏切警報音は本当に『カンカン』が正しいのか」という疑問がわきます。

筆者(小川裕夫:フリーランスライターカメラマン)は全国の踏切を訪ね歩くうちに、「ジャンジャン」という擬音表現を見つけました。これは新聞社や雑誌社が用いている表現ではなく、福井鉄道が踏切に設置している看板に書かれていたものでした。踏切警報音を「ジャンジャン」と表現する人はあまり多くないと思いますが、それでも全国津々浦々の踏切を探訪していて見かけた唯一の例でした。

この踏切だけが特殊な音色なのかと思い何度も警報音を聞きましたが、ほかの踏切の音と特に違いは感じられませんでした。つまり、一般的な「カンカン」と同じ音だったわけです。福井鉄道にも話を伺いましたが、「ジャンジャン」となった理由は不明とのことでした。

また、普段からこの看板を見ているであろう数人の福井県民に話を聞いてみると、日常的に踏切警報音を「ジャンジャン」と表現することはないと話しました。ただ、表記を見慣れていることもあり、「ジャンジャン」という表現に違和感はないようでした。

踏切警報機のイメージ(画像:写真AC)。