日本初演の舞台『Home, I’m Darling~愛しのマイホーム~』が、2021年10月20日(水)にシアタークリエで初日を迎えた。白井晃の演出と鈴木京香ら魅力的なキャストで贈る、ロンドン発の新作ストレートプレイ。舞台英国の劇作家ローラ・ウェイドが書いたオリジナル戯曲で、2019年度のローレンスオリヴィエ賞に5部門でノミネートされ、ベスト・ニュー・コメディ賞を受賞した作品だ。

物語の舞台は現代のロンドン近郊にある一軒家なのだが、舞台美術は見事に1950年代調。キッチンでまめまめしく朝食の支度をする主人公ジュディ(鈴木京香)と、その夫ジョニー高橋克実)のファッションも、完全に1950年スタイルだ。というのも、この家に住む夫婦は1950年代のライフスタイルをこよなく愛しており、3年前にジュディがリストラされて専業主婦になったのを機に、インテリアやファッションをすべて1950年代スタイルに揃えて生活しているのだ。しかし、その生活を維持するには出費がかさみ、実は家計は大ピンチ。ジュディはジョニーに昇進してもらうことで、なんとか切り抜けようとするが……という物語。

自ら専業主婦になることを選び、1950年代のライフスタイルと“いい奥さん”を追求する鈴木のジュディが、とてもチャーミング。場面ごとに替わる衣裳とダンスシーンが、インテリアと相まって目に楽しい。高橋は実直で人が好い愛妻家を、柔軟な演技で魅せて笑いを誘う。やっぱり舞台巧者だなあと改めて実感する。

そこに、同じく50年代フリークの友人夫婦であるフラン(青木さやか)とマーカス(袴田吉彦)、仕事に就かない娘のことが理解できないジュディの母シルヴィア(銀粉蝶)、新しく着任したジョニーより年下の上司アレックス(江口のりこ)が加わり、さまざまな視点から、仕事や家事、男と女、人生とお金について語られていく。1950年代のライフスタイルを切り口に、昨今話題のジェンダーや、よりよい夫婦のあり方について考えさせられるところがポイントだ。もうちょっと尖った脚本を想像していたが、思いのほかウェルメイド。1950年代の音楽とインテリア&ファッションが醸し出す、レトロポップな雰囲気には合っているかもしれない。

銀粉蝶はさすがの存在感。説得力あるセリフに、思わず引き込まれた。江口のクールで仕事ができる上司も、ジュディといかにも好対照なキャラクターになっている。青木のフランは押しの強い感じが面白い。袴田のちょっとチャラいマーカスもハマっていた。初日のせいか全体的に芝居が硬かったが、こなれてくれば会話のテンポも上がってコメディ感が増していくように思う。

本公演は、11月7日(日)までシアタークリエで上演の後、全国ツアーあり。

取材・文=岡﨑 香
 

初日の意気込みコメント

江口のりこ: 面白くするぞぉ! と思っています。

高橋克実: 楽しくするぞぉ! と思っています(笑)。

鈴木京香: 「楽しかったね」と帰っていっていただける舞台になるように……がんばるぞぉ!

『Home, I’m Darling~愛しのマイホーム~』舞台写真