「45歳定年制」が話題になっているが、社員に早期退職を促す制度の導入に大企業の2割が積極的――。

東京商工リサーチが2021年10月20日に発表した「早期退職やセカンドキャリアに関するアンケート調査」でわかった。

ごく少数だが、「45歳」で退職を促すところはもちろんのこと、なんと「29歳」という企業もあった。「45歳定年制」を先取りする動きは、今後加速するのだろうか?

大企業の2割が「早期退職」導入だが、大半は55歳以上

今年9月、サントリーホールディングスの新浪剛史社長が経済同友会のセミナーで提言した、企業の定年を45歳にする「45歳定年制」が大きな話題になった。人材の流動化やリカレント教育(学び直し教育)など、社会人の新しいスキル獲得の機会促進が期待されるという賛同の声が上がる一方、定年を理由にした「人材の使い捨てだ」という批判も浴びた。

政府が、生涯雇用を求めて企業に「70歳までの雇用」の努力義務を法律で定めるなか、定年引き下げと終身雇用廃止などを訴える真っ向勝負の提言となったが、いったい、この提言を企業側はどう受け止めたのだろうか。

東京商工リサーチが毎年集計している「上場企業の早期・希望退職募集」では2019年以降、3年連続で1万人を超えた。深刻な業績悪化の企業だけでなく、堅調な企業もリストラに取り組む状況が浮かび上がっている。そこで今回は、「45歳定年」の提言を受けて、上場企業に限らず中小企業も含めた9039社を対象に上場企業を中心に進む「早期退職」と「セカンドキャリア」制度の導入について聞いた。

全体の10.4%の940社が「すでに導入している」(3.8%)、「導入を検討している」(6.5%)と回答した。一方、約9割(89.6%)の8099社が「導入しておらず、今後も検討予定はない」と回答した。導入に積極的な企業が約1割いるわけだ=下グラフ参照

これを規模別にみると、大企業では「コロナ以前からすでに導入している」「コロナの最中に導入した」「今後導入を検討している」を合わせると、約2割(19.3%)が導入に積極的だった。一方、中小企業では「すでに導入している」「今後導入を検討している」などを合わせると、1割以下(8.3%)にとどまる。中小企業に比べ、大規模で人員にも余裕のある大企業との力の差が出た形だ。

ところで、実際に導入している企業は何歳からを対象にしているのだろうか。そして「45歳定年」を実施している企業はあるのだろうか。実施企業に早期退職・セカンドキャリア制度の対象年齢を聞くと、最も多かったのは「55歳以上」で127社(43.3%)。次いで「50歳以上」(68社、23.2%)、「45歳以上」(36社、12.2%)の順。

外資系や製薬、小売りに「29歳以下」も

実施企業でも50歳以上が7割弱(66.5%)を占める結果となった。ところで、「45歳以上」が36社(実施企業の12.2%)あったが、これは全体に占める割合は0.4%にあたる。この数字を非常に小さいとみるか、意外にあるものだなとみるか。

東京商工リサーチでは、

大企業を中心に、早期退職・セカンドキャリア関連制度の導入が進んでいる。導入する企業では、現在は55歳以上の適用が大半で、今夏沸きあがった『45歳定年制導入』は、まだ皆無に等しい」

と分析している。

ところで、「45歳」どころか「全年齢対象を含む29歳以下」という企業が25社(実施企業の8.5%、全体の0.3%)あったことは注目される。海外本社サイドの人事施策の影響力が強い外資系企業や、製薬を中心にしたメーカー、一部小売などの大企業で、「29歳以下」も対象にした早期退職・セカンドキャリアの導入が散見された。

東京商工リサーチでは調査結果について、こうコメントしている。

コロナ禍での有効求人倍率は、2021年8月1.14倍とコロナ前(1.63倍、2019年3月)にほど遠く、雇用情勢は不透明感が漂う。こうした状況下で早期退職制度の導入は、従業員・企業双方に思いもよらぬ離職や労働環境の悪化も招きかねない。リカレント教育を推奨する声が一部にあるが、一般の会社員を対象とした(公的な)主要支援策は『教育訓練給付制度』などで、(受講費用の支援の)支給額は最大で半額程度と限定されている。
フルタイムで働く会社員にリカレント教育を広げるには乗り越えるべき課題は多い。早期退職・セカンドキャリア制度の導入は、企業側が拙速に進めるのではなく、働く人の将来設計にも寄り添いながら慎重な検討が求められる」

なお、調査は2021年10月1日~11日に実施。9039社から回答を得て分析した。資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業とした。

(福田和郎)

「45歳定年」を打ち出したサントリーHDの新浪剛史社長(公式サイトより)