日本でもっとも長く「ファーストクラス」を運用するJAL。羽田に保存されている「DC-8」初号機には、60年前のファーストクラス席が設置されています。半個室、フルフラット席が当たり前になった現在と比べると、その進化の過程が見えました。

現行はモニター&収納&木目調…では昔は?

旅客機で最上級の座席区分「ファーストクラス」は、年を追うごとに進化しています。海外の航空会社のなかには、シャワールームを搭載したり、ベッドを設置したりといったところもあるほど。そうしたなか、日本で最も長い歴史を持つJAL日本航空)のファーストクラスも進化しています。

JALの現行の国際線ファーストクラスは「JAL SUITE」の愛称をもち、仕切り付きの半個室のレイアウト。木目調を中心としたインテリアデザインで、大型の個人モニターや、多彩な収納スペースをウリにしています。シートカラーも木目にあわせブラウンとなっており、睡眠時には、フルフラットにすることができます。

では、60年前、ジェット機としては初のJALファーストクラスは、どのようなものだったのでしょうか。

羽田空港JAL格納庫の片隅には、JAL初のジェット旅客機であるダグラスDC-8「FUJI号」の実機の機首部分が保存されており、この室内に当時のファーストクラスの座席が設置されています。同機はおよそ60年前、1960(昭和35)年に就航しました。

このDC-8も、現在のJAL機と同じように「前方ファースト、後方エコノミー」のレイアウトをとっています。機体最前方には、DC-8の客室における最大の特徴「機内ラウンジ」があり、その後ろにファーストクラス、さらに後ろがツーリストクラス(現在のエコノミークラス)といった配置です。ファーストクラスの座席は横2-2列、ツーリストクラス(現在のエコノミークラス)は横3-3列の配置でした。

日本らし~いド派手な内装

客室上部を見ると、まず手荷物棚がとても小さいことに気づきます。イメージとしては、高速バスの棚と同じ程度。先述の収納力をうたう「JAL SUITE」もそうですが、現代のJALの最新鋭機、エアバスA350-900は国内線仕様ながら大型のスーツケースも入る収納棚があるので、この面でも、60年で大きな進化を遂げたことが分かります

何より特徴的なのは、壁に飾られた扇に象徴される「和テイスト全開」な内装でしょう。座席は伝統的な老松紋があしらわれた西陣織のシートカバーで覆われ、光の当たり方次第では、かなり”ギラギラ”した席に見えることもあります。

まだ座席の形も丸みを帯びたものではなく、どちらかといえばソファーのようにどっしりと角ばったもので、その幅は現代の一般的なエコノミークラス席よりは広そうです。ちなみに、JAL現行の国際線エコノミークラス「スカイワイダー」は座席の横配置を一列減らし、横幅を広げています。

もちろんこの頃の席はファーストクラスといえどもフルフラットにはできませんし、モニターもありませんが、現代と同じように読書灯が備わっています。おそらく機内では読書して時間を過ごす人が今より遥かに多かったと考えられるので、実際の当時のフライトでは、現在よりもっと多くの席で明かりが灯っていたのかもしれません。

サービスまでド派手!?

60年前のファーストクラス、座席そのものは時代を感じさせますが、そのサービスは、現代からするとびっくりするようなものがあったそうです。

当時の資料によると、食事は非常に豪華で、ロブスターのような巨大エビのメニューなども振る舞われたそうです。インパクトの面では、現代のファーストクラスの食事を上回るかもしれません。そして時代を象徴するのが、なんといっても1席にひとつ備わる「灰皿」。当時飛行機は「たばこが吸える乗りもの」だったことがわかります。

この後JALは、日本国内において革新的なファーストクラス席を次々に世に打ち出していくことになります。その原点は、もしかすると、この極端に「和のテイスト」で統一されたダグラスDC-8にあるのかもしれません。

上がJALのボーイング777-300ER。下がDC-8-32「FUJI号」(乗りものニュース編集部撮影/JAL)。