2021年10月14日の衆議院解散からわずか5日後の10月19日、第49回衆議院議員選挙が公示された。投開票は10月31日となる。

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 東京大学中退の経歴で、明晰な頭脳を生かしマルチに活躍するラッパー・ダースレイダー(44歳・@DARTHREIDER)の連載「時事問題に吠える!」では現代に起きている政治や社会の問題に斬り込む。

 今回は、日本の選挙制度の問題点や、高市早苗氏の10月10日のNHK『日曜討論』での発言から今回の選挙の争点について解説する(以下、ダースレイダー氏の寄稿)。

選挙制度だけ二大政党制に基づいた「いびつな状況」

 衆議院での与党は、総理大臣を選ぶ首班指名をすることができます。結果次第では与党が変わり、日本の総理大臣が変わるという政権選択の選挙です。1990年代、日本は選挙制度改革で二大政党制を目指し、小選挙区制と比例代表制が並立する選挙制度を作りました。この小選挙区制度は、二大政党制であるということを前提に考えられて採択されたものです。

 二大政党のどちらかを選ぶために、小選挙区ごとに1人しか当選しないという仕組み。つまり2人のうちどっちか1人を選ぶ、という制度設計です

 ただし日本では二大政党制度は実現できておらず、多党制のまま二大政党制を前提にした選挙制度を取り入れたので、比例代表という多党制をベースにした制度も並立して残っているという非常に中途半端な状況が長年続いています。

選挙制度が変わらない理由

投票
※イメージです
 2009年8月から3年間だけ民主党政権が誕生しましたが、基本的には自由民主党を中心とした1党1強時代が続いています。そのなかで、選挙制度のみが二大政党制に基づいたものになっている“いびつな状況”になっています

 そもそも二大政党制がいいのかどうかという議論が十分にされているとも思えません。選挙制度自体の問題もありますが、この選挙制度で選ばれた議員が、自分が選ばれた制度を変更することの難しさが常に指摘されています

選ばれた議員が選挙制度を変える難しさ

 自分が勝った選挙制度を変えることは、倫理観や将来の日本の社会構造を考えることが前提となるので、そういった政治家・国会議員の数が増えないことには、なかなか制度は変わらないと言われています。

 もし二大政党制になった場合、公明党、立憲民主党、国民民主党、共産党、れいわ新選組など、いま存在する多くの政党がどこかに吸収されざるを得ない状況になります。こういったことが二大政党制に移行することへの難しさになっていますし、比例代表制度がなくならない理由でもあります

 そんな選挙制度を軸にしているので、とにかく難しい状況です。現在は二大政党制ではなく、もともと違う政党で、考え方も違う自民党と公明党が政権与党として二党で連立をしています。

政策を共有して政権の姿を明らかに

自民党
©yu_photo
 そこに対して、今の政権与党ではない野党は、どれだけ二大政党のうちの片方を担うことができるのでしょうか。現状の制度ではそうせざるを得ません。

 野党の4党(日本維新の会、NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で<NHK党>は共闘に参加しないのでここでは省きます。維新は自民党の一部とは親和性は高いと思いますが、現状の選挙制度に馴染まない考えの受け皿にもなり得ます)は、基本理念や政策を共有して、政権の姿を明らかにする必要があります

 これが野党共闘と言われているところですが、当然この共闘することの難しさが毎回問題になっている。そして「共闘すらできないのに、二大政党制という選挙制度は何か?」という話にまた戻ってきてしまいます。

選択肢が2つあるときのポイント

 少なくとも、今の政権与党と対抗するためには、4党の一本化が必ず必要になります。全国の野党候補者がどれだけ一本化されるかということが、今回の選挙でもとても大事です。

 では、私たちの選択肢が与党と野党、2つありますと言ったときに、どう選べばいいのでしょうか。この選挙に関しては、その答えは非常に簡単だと思っています。

 今、日本でコロナの感染状況は落ち着いていますが、国際的に見れば、いまだパンデミックのさなかです。そして治療薬もまだできておらず、未解明なことも多くあります。その中での選挙である、ということも前提として考えなければいけません。

 選択肢が2つあると考えたときに、国会を開くか、開かないか、という考え方がポイントになってきます。現在の政権与党は国会を開かない“反国会派”です。6月16日に平常通り通常国会が終わりました。パンデミック後のさなかにもかかわらず、閉会して以降、一度も国会を開きませんでした。これは、安倍政権、菅政権どちらもです。

パンデミックなのに国会を開かないのが、現在の与党

岸田文雄総理大臣
岸田文雄総理大臣 ※首相官邸HPより
 今は岸田政権になりましたが、当時国会を開かなかったときの国会議員である岸田文雄さんが総理になったにすぎないので、基本的に与党としては国会を開かないという選択になりました。国会を開かなかったことに対して自民党の森山裕国会対策委員長はパンデミックのさなかにもかかわらず、2021年10月、記者団に対して「審議すべき予算案がなく(話すことがないから)、開催の必要がない」と述べました。

 さらには、憲法53条で定められている「一定数の国会議員(どちらかの議院の総議員の4分の1以上)の要請があったら内閣は臨時国会を開かなければいけない」という規定を無視して、開かなかったわけです。

 実は、昨年(2020年)も今年も野党は国会開催を要求しています。国会閉会中に行う「閉会中審査」というものがありますが、これには担当大臣だけが出席し、総理大臣は出席しません。もちろん国会自体のセレモニー化や国会自体のあり方という問題はありますが、少なくともパンデミックで国会で議論をしないという態度をとっているのが、現在の政権与党です

高市早苗「国会でずーっと議論してても…」

高市早苗
「自民党政権公約」発表時、高市早苗氏(※高市早苗公式HPより)
 さらに先日の総裁選に出馬していた高市早苗さんは10月10日のNHK『日曜討論』で、共産党の田村智子さんから「国会の中で議論してから選挙を迎えるべき」意見された際、「国会でずーっと議論してても、みんなが見ているわけではない」「早く選挙をすることが大事」という話をしていました。これはまさに“反国会派”の看板を背負うにふさわしい発言だと思います。

 選挙とは何かというと、国民が国会議員を選ぶものです。国会に出席する人を選ぶのが選挙なので、国会より大事だというロジックは、大学での授業よりも大学入試のほうが大事だと言っているのと同じです。目的と手段が逆転しています。

「本当に国会はすべての人が見ていないと言えるのか?」という前提から考えると、国会議員は僕たち国民の代わりに議論する代議士です。なぜ代議士が必要かというと、国民は自分たちで政治課題、社会課題、法案審議、予算審議をする時間を取ると、日常生活が送れないからです。だから僕らの代わりにそういった話し合いをしてくれる代議士を選ぶ必要があるのです。

国会は僕らが議論している場のはず

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「民」が「主」である民主主義というのは、「僕らが決める」という意味を持っています。「僕らが決めるが、それぞれの生活があるので、代わりに議論をしてくれる人を選びましょう」、これが代議士と呼ばれる議員の役割です。

 ただし、あくまでも代理人なので、代理人が勝手なことをしている、隠し事をしている、ということが判明したら、彼らは不適任になるのです。ですから、彼らには任期が決められていて、代理人は真っ当に代わりを務めてくれているのかを僕らがチェックできる。なので「国会をすべての人が見ているわけではない」という高市議員の発言はとてもおかしい話です。

 国会には僕らの代理人が全員揃っているはずですから。国会で話すことは、国民全体に話していることと同じです。国会で決めることは、国民全体に関わることです。国会で法案を決めるということは、国民全体に関わる法律を決めている。国会で決める予算は、国民にかかわる予算を決めているわけです。

 議員内閣制ですから、内閣総理大臣は僕らが選んだ国会議員の中で首班指名が行われ、決められています。総理大臣も僕らの代わりに、国政を担うという仕事をしてくれています。なので「民」が「主」である以上、国会は僕らが議論している場です

選挙のキモは、“反国会派” vs “国会派”

国会議事堂

 パンデミック禍のドイツでは、コロナ対策に関する法案はすべて議会で話し合われ、議会で可決しています。勝手に決めて可決しているのではなく、国民の代表が集まる場である国会で「こういったものが必要だ」と発議し、審議し、決定していく。国民が見ている場でコロナ対策を決めています。これが国会の役割です。

 国会が何かを決めるというのは、国民に情報を共有して決めていくということです。これは民主主義国家の基本中の基本です。しかしながら、政権与党は野党の要請があるにもかかわらず、国会を開かない“反国会派”の姿勢を見せました。

 対して野党は、“国会を開こう派”です。国会を開いて、国民の選んだ代議士が議論する場で物事を決めていこうというスタンスが野党です。“反国会派” vs “国会”という非常に簡単な選択肢です。

 内閣は国会議員から選ばれている議院内閣制で、事実上自民党の総裁が内閣総理大臣をやっています。菅さん、安倍さん、今の岸田さんもそうです。つまり、総理大臣であると同時に自民党の総裁でもあるわけです。

「野党だったらうまくいかない」の違和感

 なので、党内では当然、議論をしているでしょう。内閣の閣議で話し合っているときも、各大臣は自民党員ばかりです。党内では話し合っているけど、国会では話し合っていない、話す必要がないと。もちろん専門家に話を聞いたりしているかもしれませんが、これは国会でチェックを受ける必要はないと考えている。

 ちなみに「野党だったらうまくいかない」とか、「自民党にしかできない」とか、そういった議論はすべて「主」である「民」である僕らがチェックできている前提で行うことです。

 今では国会は、官僚が用意した答弁を読むだけの儀式と化してしまいました。国民の問題を議論する場が国会だからこそ、今の国会のあり方を改める必要があると思います。

「常会」と呼ばれる通常国会は、150日間の会期と決まっています。2021年は1月から6月にかけて行われましたが、国会を通年で行わない進め方をしている日本は、世界でも非常にレアなケースです。

民主主義国家になれていない日本

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 24時間365日、国民の間ではさまざまな出来事や問題が起こり、さまざまな調整が必要となるにもかかわらず、国会を開いていない時期がかなり長い。地方議会などでもそうです。だから国民的議論が必要とされていないということは、日本が民主主義国家になれていないということです

「民」が「主」であるならば、国会議員が決めなければいけないことは常に山積みなはずです。なので、常に議論の場が開かれているという状況を「主」である「民」が当たり前のごとく求めていくことが、民主主義国家の始まりだと思っています。

 民主主義国家としてのスタートラインに立つ前に、国会を開くことすらしない人たちに任せている。こういった今の状況が、本来の意味で民主主義国家になれていないと僕が感じる理由です。今回の選挙の争点はひとつ。“反国会”か、“国会”か。

<TEXT/ダースレイダー 構成/bizSPA!取材班 撮影/山口康仁>

【ダースレイダー】

1977年パリで⽣まれ、幼少期をロンドンで過ごす。東京⼤学に⼊学するも、ラップ活動に傾倒し中退。2010年6⽉に脳梗塞で倒れ合併症で左⽬を失明するも、現在は司会や執筆と様々な活動を続けている。

「自民党政権公約」発表時、高市早苗氏(※高市早苗公式HPより)