不倫をしている夫が「家庭内別居」を始めた——。夫の行動に疑問を感じている女性が弁護士ドットコムに相談を寄せました。

女性は最近2人目の子どもを出産したばかりですが、夫は妊娠中から不倫をしていました。女性が「子どもに何かあった場合、不倫相手から慰謝料をとる」と言ったところ、なんと夫は「お前がその気ならこっちだって考えがある」と家庭内別居状態を作り始めたというのです。

夫は毎朝女性が作っていた弁当を拒否し自分で用意。皿洗いも「やるな」と自分の分だけ洗うようになり、洗濯も「触るな」と義母にお願いしている状態だと言います。

「夫はきっとネットで調べて婚姻関係の破綻の状態を作り、慰謝料を払わずに自分が損をしないように離婚をしようとしているのではないか」。そう考える女性は、この状態だと家庭内別居が認められてしまうのか心配しています。

果たしてこうした状況で「婚姻関係の破綻」とみなされることはあるのでしょうか。

高木由美子弁護士は「夫が不貞した事案で、離婚の裁判や不貞慰謝料の裁判で夫が『家庭内別居』を主張してくることは多い」としつつ、「『家庭内別居』で『婚姻関係の破綻』とみなされることは、ゼロではないですが、難しいと考えてよろしいかと思います」と指摘します。高木弁護士に詳しく聞きました。

可能性はゼロではないが難しい

——過去にはどのようなケースで「婚姻関係の破綻」とみなされたのでしょうか。

10年以上前の裁判例で、同一の家に住んでいるが、生活を完全に別にしている、妻が夫に家事をせず、会話もほとんどない、つまり「家庭内別居」という事案で、婚姻関係は既に破綻しているとした例はあります。

しかし、この裁判例でも、「家庭内別居」だから破綻しているとしたのではなく、その他の事情、夫が、生活費を入れなかったり、ギャンブル等で浪費して借金を作ったり、妻自身が離婚調停を申し立てたことがあったりといった事情があったためにそれらも考慮されて、「婚姻が破綻している」とされたようです。

実際、夫が不貞をする夫婦はそもそもあまり仲が良くなく、家庭内別居のような生活をしている夫婦は珍しくありませんが、家庭内別居を理由として「婚姻が破綻している」と不貞夫に有利な結論になった例は、見当たりません。

夫の行動は「わざとらしく悪質」

——女性は夫の行動について「慰謝料を払わずに離婚しようとしている」とみています。

夫は、おそらく、「家庭内別居」で既に婚姻関係は破綻していたから、不貞したとしても、自分は有責配偶者(自分に離婚の原因がある配偶者)ではないから慰謝料も払わないと主張することが考えられます。

しかしながら、お子さんが生まれたばかりということは、少なくとも1年以内には性交渉があったことになりますので、それだけでも「家庭内別居」だったとの主張すら苦しいです。

さらに、不貞した上で一方的に家事を禁止して義母にやらせるなどのわざとらしい行動も、悪質でむしろ夫の有責性を増強すると思います。

——「家庭内別居」を続けていれば、離婚しやすくなるのでしょうか?

夫は自分が不貞した有責配偶者であったとしても、「家庭内別居」を継続していれば、有責配偶者からの離婚請求が認められる要件の1つである「長期間の別居」を満たし、離婚しやすくなるのではないかと考えている可能性もあります。

確かに、有責配偶者の離婚請求が認められる要件の1つとして「長期間の別居」はありますが、基本的にこれには「家庭内別居」は入りません。なので、家庭内別居をいくら継続しても、夫からの離婚請求が認められることはありせん。

裁判例では見当たらなかったのですが、仮に、「家庭内別居」が「婚姻破綻」と認められる場合があるとしたら、家計も家事、生活も全て別で、夫婦として協力することは一切せず、どちらも他にパートナーがいて、双方がそれらを了解した上で、単に同じ家で生活をしているだけということが考えられます。

しかし、そのような状況なら、さすがに同居はしないのではないかと思いますので、いずれにしてもレアケースだと思います。

【取材協力弁護士
高木 由美子(たかぎ・ゆみこ)弁護士
第一東京弁護士会所属。米国・カリフォルニア州弁護士
事務所名:さつき法律事務所
事務所URLhttp://www.satsukilaw.com/

不倫している夫が、突然「家庭内別居」をはじめました