様々な事情を抱えてアニマルシェルターにやってくる動物たちは、人間に酷く怯えて心を開いてくれないこともある。イギリスのアニマルシェルターで保護された犬も、そんな動物の1匹だった。人の目の前で食事をせず姿を現すこともなかったこの犬は、保護されてから601日目に体を震わせて怯えながらも初めてスタッフの手から直接おやつを食べた。犬が心を開いたその瞬間を捉えた動画には、「胸が痛くなると同時に、素晴らしい瞬間でもある」と人々の胸に響いたようだ。『Manchester Evening News』などが伝えた。

英マンチェスターのウォースリーにあるアニマルシェルター「Dogs 4 Rescue」に昨年2月、保護された犬の“ベティ(Betty)”と“スクーブ(Scoob)”が一緒にやってきた。2匹は人を噛むことはなかったものの、非常に警戒心の強い犬だった。保護された経緯は明かされていないが、過去によほど酷い経験があったのかもしれない。そう感じずにはいられないほどの臆病ぶりだったという。

シェルターではそれぞれの犬に犬小屋を用意せず、開放的な環境で世話をしている。スクーブはすぐにスタッフや新しい環境に慣れてきたが、ベティは保護されてから何週間も身を隠せる場所に閉じこもり、食事はスタッフがいない時に出てきて食べていた。

そんなベティを心配したスタッフたちだったが、無理に触れ合うことはせずベティから心を開いてくれるまで数か月ほどそっと見守った。その代わりにスタッフが他の犬と一緒にいるところをベティに見せて、安全な場所であることを伝えようとした。

それでもベティはなかなか警戒心を解いてくれず、スタッフは他の保護犬がベティを連れ出してくれたり、おやつの時間に他の犬と一緒に参加してくれることを願った。

長い時間がかかったものの、ベティは次第に外に出て他の犬とじゃれ合って遊ぶようになってきたという。しかしそれもスタッフが近くにいない時のみで、スタッフは遠くからこっそりとその姿を確認していた。

本当に一歩ずつだが、ベティが徐々にシェルターの環境に慣れてきていることにスタッフたちは喜びを感じた。そしてベティが保護されてから601日目、ついにスタッフの手から直接おやつをもらうベティの姿を捉えた動画が投稿された。

動画ではベティが距離を取りながらも、スタッフの持つおやつが気になる様子を見せている。2~3歩近づいたが、それ以上足が進まないようですぐに引き返してしまった。その場でウロウロと歩いて迷っている様子のベティだったが、ゆっくりとスタッフに近づくとその手から直接おやつを食べたのだ。

おやつをくわえると急いでスタッフのもとを離れたベティだったが、人の前に姿を現すことすら怖がっていた頃のベティを考えれば、今回の行動は非常に大きな進歩である。

この動画には、「少しずつ勇気が出てきたね! いつか人間への恐怖に打ち勝てるよ」「ベティが恐怖と闘う姿に涙が出る。酷い人間がいたんだろうね」「まだ怖がっているようだけど、素晴らしい勇気だよ」「胸が痛くなると同時に、素晴らしい瞬間でもあるね」と多数のコメントが届いており、ベティが勇気を振り絞った姿に多くの人が胸を打たれたようだ。

なお保護された犬が人に慣れることができず、さらに病気などを抱えていると新しい飼い主が見つかりにくい。そうした場合にはやむを得ず安楽死になってしまうことも少なくない。過去には健康問題を抱え人と目を合わせなかった犬が安楽死寸前まで追い込まれたが、優しい飼い主に保護され心を開いたという奇跡的なケースもあった。

ベティにもいつか優しい飼い主が見つかり、心から安心して暮らせる場所が見つかって欲しいと願う声も見受けられた。

画像は『Dogs 4 Rescue 2021年10月16日付Facebook「Thank you everyone for your kind generosity for Baily today.」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)

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