コロナ禍で猫や犬を飼い始める人が増えていますが、四足歩行の猫が後ろ足2本ですくっと立ち上がるという「猫背」の概念を覆すような“直立”した猫の姿がネット上で話題になることがあります。四足歩行の猫が2本足で立つ姿はかわいいものですが、この行動を不思議に思う飼い主も多いのではないでしょうか。

 ネット上では「うちの猫も最近よく立ち上がります」「かわいいけどちょっと心配」「骨は大丈夫なの?」など、さまざまな声が上がっています。猫が見せる不思議な直立の意味について、獣医師の増田国充さんに聞きました。

周囲を警戒している?

Q.猫が後ろ足2本で立つことには、どのような意味があるのでしょうか。

増田さん「本来の猫の姿勢は四足歩行です。健康な猫であれば、後肢(こうし)、つまり、後ろ足の2足で体を支え、上半身を上に持ち上げる姿勢をすること自体は可能です。なぜ、2本足で起立しようとするかは諸説あり、はっきり解明されていない部分が多いのですが、周囲を警戒しているとき、または周囲に何か興味・関心を引くものがあるときに起立する、という説が有力とされています。ちなみに、2足で起立する動物として『ミーアキャット』がいますが、彼らは猫科ではありません」

Q.後ろ2本足で立つことの多い猫の特徴を教えてください。

増田さん「健康でそれなりに体力があり、さらに、好奇心旺盛な猫が起立しやすいのかなと思います。個人的見解ですが、猫の品種による差はあまりないのではないでしょうか。それよりも、個体ごとの性格や活動性が、起立をするかしないかの差につながっていると思われます」

Q.猫が立ったとき、病気や骨・筋肉の異常などは考えられないのでしょうか。

増田さん「2本足で立つこと自体で、病的な問題が生じているとは考えにくいと思います。逆に、筋肉や関節に異常があると、2足で起立することが困難になることが予想されます。意外に思われるかもしれませんが、猫は高齢になると、関節炎などの整形外科関連の問題が多く発生します。これまでできていた2足での起立がしづらくなるほか、普段の歩行にも鈍さが見られるような様子があったら要注意です」

Q.立っている様子がおかしい場合、飼い主はどのように対処すべきでしょうか。

増田さん「普段から起立する猫の場合、起立のバランスが取れないようなときや、体を持ち上げたときに痛そうな鳴き声を上げたり、起立姿勢から普段の4足の姿勢に戻ったときに歩き方に異常が見られたりしたら、腰や後肢に何か問題があるかもしれません。このような様子が見られたときは、飼い主が起立を促すような刺激を与えたり、過剰な運動をさせたりすることは控えるべきでしょう。足腰の問題である場合は、早期に治療が必要となることがあります」

Q.日頃から立つことの多い猫について、注意すべきポイントはありますか。

増田さん「健康体だからこそ2足で立つことができるのですが、後ろ足で自身の体重を支えることになるので、体重が増加すれば、それだけ下半身に負担がかかります。起立の姿勢以外でも、歩き方や跳び方などに変化がないか、また、日常的に行う毛づくろいの様子や食欲、排せつの具合などをよく観察し、『様子がおかしいな』と思ったときは早めにかかりつけの獣医師に診てもらいましょう」

オトナンサー編集部

猫の直立の意味は?