かつては安泰の代名詞だった正社員。だが、彼らの大半は“負け組”予備軍だった。70歳まで働く未来を想定し、「なんとか会社にしがみついてやり過ごす」というスタイルはもはや通じない。正社員の特権が失われたとき、社会全体はどのように変化するのか――

◆「正社員9割が負け組」で社会はどうなる?

「経済的リスクを鑑みて、子供を産もうとする人が減るのは明白」と分析するのは、経営コンサルタントの中沢光昭氏だ。

「危険信号が灯っていた日本の少子化・人口減少に拍車がかかり、経済危機から脱するための国力そのものが失われてしまう危険性が高い。今年は過去最低の80万人を割ると言われており、新たに生まれた子供の数は’74年の4割以下となる見込みです。

 将来の働き手、消費者である子供の数が減れば、国内マーケットはより加速度を増して縮小していくばかり。オイルショック東日本大震災リーマンショックと、日本はこれまで何度も経済危機を乗り越えてきましたが、今後そうした危機が訪れた際に、乗り切れるだけの国力が日本にはもう残されていないという悲しい未来も想定されます」

◆20年後には1400万人もの労働者が減る

 出生率が今のペースで推移しても、20年後には1400万人もの労働者が減るという。これだけ働き手が減れば、年金制度にも大きな狂いが生じる。

河野太郎行政改革担当大臣が、基礎年金の財源を保険料から“消費税”に切り替える案を主張し物議を醸しました。こうした議論が出る時点で、20年後を待たずとも現行の年金制度は崩壊寸前であることは間違いない」(人事ジャーナリストの溝上憲文氏)

 仮に税金で年金を賄おうとすれば、消費税10%からさらに7~8%の増税が必要との試算も。現行の制度のまま年金受給額が目減りする未来でも、消費税が増税される未来でも、会社員にとっては苦しい状況に変わりなさそうだ。

◆平均賃金の横ばいが続くと…

 また、増税や年金額の目減りだけでなく、平均賃金の横ばいが続く日本では今後、物価の上昇に家計が苦しめられるシナリオも考えられる。

「賃金が上がらないと、消費が落ち込み物価が下がっていく“デフレ”に陥るものですが、近年は原油価格の高騰や世界的な原材料の価格上昇で、不景気でも物価は上昇している。『スタグフレーション』(景気後退を意味するスタグネーションと物価上昇を意味するインフレの合成語)と呼ばれる現象で、日本に限らず世界経済の大きな懸念とされています」

◆今後は年2~5%の物価上昇が続く?

 日本人の賃金は20年間ほぼ上がっていないが、その間、物価が上昇していなかったのも事実。しかし、今後は「年2~5%の物価上昇が続く」と試算する専門家の声も。賃金が上がらない日本の会社員にとって、そのダメージはあまりにも重い……。

 人口減少による国力低下に、年金制度の狂い、果ては物価上昇によるダメージ。正社員を取り巻く環境のみならず、日本の社会全体へのダメージは計り知れないようだ。

【経営コンサルタント 中沢光昭氏】
経営コンサルタントとして活動する傍ら、経営者として破綻企業などの再生を行う。『好景気だからあなたはクビになる!』(扶桑社新書)など著書多数

【人事ジャーナリスト 溝上憲文氏】
月刊誌、週刊誌記者を経て独立。経営、ビジネス、人事、雇用、年金問題などを中心に執筆活動を展開。著書に『人事評価の裏ルール』(プレジデント社)など

<取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/杉原洋平 モデル/加藤昌夫 伊藤義浩>

―[正社員[9割は負け組]説]―


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