アメリカのメリーランド州にあるメリーランド大学の研究チームは、ステンレス製ナイフの3倍の切れ味を持つ木製ナイフを開発したことを、『Matte』誌に論文発表した。
木材の自然の強度を活かしつつ弱い分子成分を除去し、特別な加工処理を施すことで、木材を23倍の硬度に変え、再利用できる持続可能な調理器具に形成。環境への影響にも期待できるという。
メリーランド大学の木材科学者テング・リー氏率いる研究チームは、ミディアムステーキを簡単に切り、何度でも洗って再利用できる木製ナイフを開発。その強度はステンレス製のテーブルナイフの3倍の切れ味を持つことを明かした。
私たちのキッチンには、まな板や箸、麺棒など長期間にわたり使用できる多くの木製器具があります。
この木製ナイフも、表面を塗り直し、研ぎ、同じ定期的維持を行うことで、何度でも使用可能となります。(リー氏)
Watch a wooden knife that is sharper than steel cut through steak
ナイフの硬度を高めるためのプロセス
研究チームは、ナイフの刃の硬度を23倍に高めるため、2段階プロセスを実施した。
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木材の主成分のセルロースは、セラミック、金属、ポリマーなどのほとんどの加工材料よりも強度と密度の比率が高くなっていますが、既存の木材の使用法はその可能性をほとんど発揮していません。
木材の40~50%はセルロースですが、残りのヘミセルロースとリグニンは、弱い分子成分です。
硬化木材プロセスでは、これらの弱い成分を除去し、木材の潜在能力を最大限に発揮させました。(リー氏)
まず、2段階の最初のステップとして、チームは最初に木材を部分的に脱リグニンした。
通常、木材は非常に硬いが、リグニンを取り除くと柔軟性が出る。そこで次に、化学的に処理された木材に圧力と熱を加えたホットプレス加工を行い、水を緻密化して除去。
その後、任意の形状に成形し木材を鉱油でコーティングすると、使用中や洗浄中に木材の切れ味を保護するのに役立つことも見出した。
高解像度の顕微鏡を使用し、木製ナイフの強度を確認しながら開発を進めたチームは、この2段階のプロセスによって木材の自然の欠陥を取り除き、より硬度に変化させることに成功した。
持続可能な木製ナイフは環境への影響にも期待
チームは今回の開発で、プロセスに使用される化学物質を再利用できる頻度と必要なエネルギー量を調査したところ、従来の方法と比較しても木製ナイフの作成プロセスが環境への影響が少ないことを発見した。
更に、同じ処理方法で作成した木製の釘を使って、3枚の木板を一緒に釘付けしている動画を公開したチームは、木製の釘も従来の鋼の釘と同じくらい鋭いことを示している。
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ステンレスやセラミックと比較して、硬化した木製ナイフは従来のディナーテーブルナイフと同様の性能を発揮でき、持続可能であることから、今後プラスチック製の食器に取って代わる可能性を備えた再生可能で低コストの代替品となることが期待されている。
written by Scarlet / edited by parumo
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