子どもがなかなか野菜を食べない、好きなものしか食べようとしないと、親としては栄養面から成長に不安になりますよね。

ユーグレナが2021年8月、1歳から5歳の子どもを持つ親200人に対して行った子どもの体質などに関する悩みについての調査では、1位が「好きなものしか食べない(77人)」、2位「野菜を食べてくれない(48人)」とトップ2が偏食傾向への悩みでした。

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そこで今回は、本調査にコメントを寄せていた医師の石原新菜先生に、偏食の子を持つママ・パパにその対策をアドバイスいただきました。

さらに、子どものハッピーホルモンを増やすための腸内環境改善に適したフードや、塩分との付き合い方もご紹介します。

子どもが野菜を食べてくれない!どうしたらいい?

子どもがなかなか嫌いな野菜を食べてくれないというのは、親としてはよくある悩みですよね。この問題、どうすればいいのでしょうか。

石原新菜先生(以下、石原)「子どもは本能で好き嫌いがあります。無理に嫌いなものを食べさせる必要はありません。だんだんと食べられるようになるので焦らなくて大丈夫です。

食べられるものの中からバランスよく、ビタミン、ミネラル、食物繊維をしっかり摂りましょう。例えば、トマトが嫌いでもカボチャが好きならば、カボチャで栄養を摂るといったいった感じです」

トマトが嫌いなら、カボチャなどに代替すれば良いということですね。他にどういう代替があるのでしょうか?

石原「子どもを2人育てた経験と医師の立場からお答えしますと、栄養素を完璧に同じものに置き換えるのはむずかしいですが、緑黄色野菜なら同じ緑黄色野菜の中で食べられるものを見つければOK。キノコ類ならキノコ類の中で食べられるものを見つけましょう。

どうしても食べられないものは無理して食べさせる必要はないですよ。大きくなってくると食べられるものが徐々に増えてきます」

そこで、よく子どもが苦手だといわれる4つの野菜やキノコについて、代替案を伺いました。

1.ピーマン

石原「ピーマンは緑黄色野菜。ピーマンが苦手な子が多いのは苦味があるからです。緑黄色野菜のパプリカほうれん草に置き換えるといいでしょう。パプリカなら苦味がなく、甘いので食べやすいです。

緑のことを考えるなら、ほうれん草もオススメ。ほうれん草のおひたしや、子どもが好きなコーンと一緒に炒めるのも良いですね」

2.玉ねぎ

石原「玉ねぎと同じ仲間は、にんにく、ネギ、ニラあたりになるので、置き換えはむずかしいですね。

玉ねぎを生で食べられる子どもはあまりいないですが、火を通すと甘くなるので、お味噌汁スープ、カレーの中に入れてしまえば食べられるでしょう。炒めるか、ゆでるかするのがオススメです」

3.なす

石原「なすも苦手な子が多いですね。ナスはウリ科ですが、ナスのムラサキの色素、ナスニンというポリフェノールが摂取できます。

これはアントシアニンと同じもので、紫芋やブドウブルーベリー、小豆などが食べられれば摂取できるのでOKです」

4.しいたけ

石原「しいたけが苦手な子は、おそらく香りが苦手なのでしょう。他のキノコで代用すると、なめこのようにぬるぬるしていて、しかもあまり香りがなくて、ツルっと食べられる食感は、子どもが好みやすいです。

エリンギやシメジも小さく切ればあまり気にしないと思います。

キノコ類は腸内環境にも良いですし、ビタミンDの前駆体が多いので、体内でビタミンDになり、カルシウムの吸収効率をアップして骨を丈夫にしたり、免疫力アップにもかかせないビタミンなので、その子が食べられるキノコを探求してあげましょう」

子どもの塩分量の気をつけ方

子どもの塩分量の気をつけ方

また、石原先生は、子どもがあまり食べない原因として、塩分も考えられると話します。

石原「食事をあまり食べないのは、もしかしたら塩気が少なくて、おいしく感じられていないからかもしれません。

逆に量を食べ過ぎてしまう子は、必要な塩分量を摂れるまで本能で食べ続けてしまっているのかもしれません」

子どもの一日の適切な塩分量はどのくらいなのでしょうか?

石原「子どもの一日の食塩摂取量の目標は『日本人の食事摂取基準』(厚生労働省)で定められています。1~2歳では男子3.0g未満、女子3.5g未満。年齢にしたがって増え、12歳以上では男子8.0g未満、女子7.0g未満で成人と同じになります。

なお、男女で異なるのは体格に差があるからです」

子どもの塩分量が現在、適切か判断する方法はあるのでしょうか。

石原「減塩にこだわる必要はありません。下手に減塩してしまうと、家の食事はほとんど食べないのに外食したときはたくさん食べてしまうとか、ポテトチップスを欲しがるとか、味の濃いジャンクフードが食べたいなどと言い出したりと、反動が心配です。

だからといって濃い味付けにしてしまうのは間違っていますが、大人の健康的な食事なら、子どもと大人は食べる量が違うので、それぞれの年齢で食べる量で、適量の塩分摂取量になるはずです。

塩分を欲している子どもは、例えば、お味噌汁をつくると『お味噌汁おかわりー!』とか『ごはんに黒ゴマ塩をかけてー!』『漬物だいすきー!』などと言い始めます。

これくらいを足してあげるのはまったく問題ないです。でも、家でジャンクフードを食べさせてしまうのはおすすめできません」

腸内環境を整えてハッピーホルモンを出す!

ところで、冒頭で紹介した調査では、「なかなか寝ない(46人)」「落ち着きがない(40人)」「癇癪(かんしゃく)を起こしやすい(27人)」という子の悩みを抱える親も多くいました。

それらの対策の一つとして、石原先生は腸内環境を整えることを勧めます。

石原「ハッピーホルモンといわれるセロトニンの9割は腸で作られるといわれているため、腸内環境を整えることもオススメです。

子どもに積極的に食べさせたい食品は、発酵食品と食物繊維。発酵食品から摂った良い菌を腸の中で育てるには、エサとなる食物繊維もしっかり摂ることが大事です」

子どもにおすすめの発酵食品

納豆、ヨーグルト、味噌、お酢

石原「発酵食品は、腸内環境を整えてくれることで自律神経や免疫機能への関与も期待できます。納豆とお味噌汁は毎日食べさせると良いですね。

お味噌は体を温める食品で、温かいお味噌汁で摂ると腸を温める効果もあって非常に理想的です。朝ごはんに取り入れるのが特におすすめです。

お酢も酢酸菌という、腸内細菌のエサとなる菌を腸に入れるためにぜひ摂りましょう。お味噌汁、牛乳にお酢ひとさじを入れることで毎日ちょっとずつ摂らせることができます」

子どもにおすすめの食物繊維豊富な食品

アーモンドカカオココア)、ユーグレナ

石原「アーモンドには、食物繊維のほか成長期に不足すると成長障害を起こすビタミンB2も豊富なことから、子どもにぜひ食べさせたい食品。カカオも食物繊維以外にも、ポリフェノールが豊富で、自律神経を整える効果があるといわれています。

ユーグレナは、ワカメや昆布と同じ藻の一種で、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、不飽和脂肪酸など59種類の栄養素をバランスよく含んでいる食品。子どもがユーグレナを含む飲料を摂取することで、便通の回数が増えたり、睡眠の質が上がったという報告事例もあります。

おいしく飲めるドリンクなら、野菜嫌いな子のビタミン・ミネラルなどの補給源としても利用できるでしょう」

子どもが好きなものしか食べない、野菜嫌いなどのほか、落ち着きや癇癪にも悩まされているなら、一度食事を見直してみるのも良いのではないでしょうか。

【取材協力】石原 新菜先生

医師・イシハラクリニック副院長/ヒポクラティック・サナトリウム副施設長/健康ソムリエ講師
長崎県生まれ。クリニックでの診察の他、わかりやすい医学解説と、親しみやすいキャラクターで、講演、テレビ、ラジオ、執筆と幅広く活躍中。著書は13万部を超えるベストセラーとなった『病気にならない蒸し生姜健康法』をはじめ、『「体を温める」と子どもは病気にならない』等30冊を数える。
日本内科学会会員。日本東洋医学会会員。日本温泉気候物理医学会会員。二児の母。