憧れの声優が自分の名前をフルボイスで呼び、ゲームシステムで巧妙に作られた世界で恋が実るまでの恋愛を楽しめる──。

 2002年にPS2で発売されたときめきメモリアル Girl’s Side』(以下、ときメモGS)は、当時の女性向けゲームの中ではそれまでになかった最新技術を用いて、乙女ゲームというジャンルをさらに世に広めた衝撃の作品でした。

 電ファミが2018年に掲載した「乙女ゲーム年表」では、当時の女性ファンたちが「おのれの“人生”そのもの」とまで言ったと紹介されています。

ときめきメモリアル Girl’s Side』

 北海道の田舎の片隅に住み、ちょっと貧乏だったせいか、なかなか親に最新のゲーム機を買ってもらえずゲーム環境に恵まれなかった筆者も、本作に熱中したことは忘れていません。
 PS2を持っている友だちの家に何度も通って、葉月 珪くんのシナリオを最後まで見させてもらい、ニンテンドーDSときめきメモリアル Girl’s Side 1st Love』が発売されてからは、友だちからゲーム機を借してもらいひたすらプレイして全キャラクターのエンディングを見ました。

 それ以降、『ときメモGS』のナンバリングシリーズを全作プレイしつくして、気づけばもうすぐ20周年。オトカドールで女児向けアーケードゲームにハマり、武装神姫の布服文化で針と糸を持つようになるなど、さまざまなコナミゲームと妙な縁があり人生を変えられてきた私の中でも、『ときメモGS』は特別な思い入れがあるシリーズです。

 そして10月28日には、最新作となるときめきメモリアル Girl’s Side 4th Heart』が発売されました。前作から9年ものときを経ての最新作ということで、ひとりのファンとしてこれ以上うれしいことはありません。

 そんな『ときメモGS』は『ときメモ』の女性向けバージョンと思われがちかもしれませんが、じつは異なるゲームシステムや表現を盛り込んで独自の歴史を歩んできたシリーズです。

 本記事ではそんなシリーズを振り返り、『ときメモGS』がどのように楽しめる作品なのかをあらためて伝え、おひさしぶりのファンの方も新規の方も、プレイヤーがひとりでも増えることを願いたいと思います。

『ときめきメモリアル Girl's Side』 ポータルサイトはこちら『ときめきメモリアル Girl's Side 4th Heart』 公式サイトはこちら

文/如月レン
編集/ishigenn


※この記事は、『ときめきメモリアル Girl’s Side 4th Heart』をもっと多くの方に遊んでほしいコナミさんと、電ファミニコゲーマー編集部のタイアップ企画です。


「あの声優の声で名前を呼んでもらえる」 ── 驚きに満ちていた『ときメモGS』

 

ときメモGSシリーズの舞台「はばたき市」。1作目、3作目、最新作となる4作目の主人公が通う「私立はばたき学園」と、2作目の主人公が通う「羽ヶ崎学園」がある海辺の都市。

 あらためて、『ときメモGS』シリーズでプレイヤーは女子高生として高校生活や男性キャラクターとの恋愛を楽しめる作品です。シリーズの舞台は「はばたき市」と呼ばれる架空の街で、最新作『ときメモGS4』に登場する「私立はばたき学園」は、一作目と三作目にも登場する学園となっています。

 高校への入学から卒業までの3年間で主人公を育成し、デートを繰り返して意中のキャラクターとのエンディングを目指すゲームの基本システムはシリーズの伝統として引き継がれています。

最新作『ときメモGS4』の育成画面。

 ファンの間では、作品のメインになる男性キャラクターは「王子」と呼ばれており、それぞれ性格や生い立ちは異なるのですが、じつは彼らは名前の一部には「王」という部首が含まれているという共通点があります。

 いまのところ過去作はPS2ニンテンドーDSPSPでしか出ていませんが、好みの「王子」が見つかったら、彼が登場する作品から遊び始めることもおすすめの遊び方かもしれません。

左から1stの葉月 珪、2ndの佐伯 瑛、3rdの桜井 琉夏と桜井 琥一。3作目は「W王子」として王子キャラクターが2名登場しました。4人とも素敵な男性ですが、好みのキャラクターはいらっしゃいますか?

 そもそも『ときメモGS』は、「ゲームファンド ときめきメモリアルというユーザーからの投資の中で、女性向けときメモ』新シリーズとして誕生した作品でした。それだけに大きな期待を背負って生まれたゲームであり、これまでの女性向けゲームにはなかった革新的なシステムを搭載した意欲作になるよう開発されたように思えます。

 まず当時のほかの乙女ゲームになかった要素として挙げられるのが、「EVS」(エモーショナル・ボイス・システム)。固定の名前ではなく、ゲームプレイ開始時に入力した名前やあだ名をゲーム中でキャラクターが呼びかけてくれるという、夢のような合成音声システムです。

 そして高校生活を彩る魅力的なキャラクターたちを演じる声優は、緑川光石田彰といった有名声優が多数起用されていました。EVSを通じて「あこがれの声優の声で大好きなキャラクターが自分の名前を呼んでくれる」という夢のようなシチュエーションには、当時多くのプレイヤーのときめきが止まらなかったはずです。

■『ときめきメモリアル Girl’s Site』男性キャラクター出演声優
葉月 珪:緑川光
守村 桜弥:石田彰
三原 色:三木眞一郎
姫条 まどか置鮎龍太郎
鈴鹿 和馬:檜山修之
日比谷 渉:山口勝平
氷室 零一:子安武人
天之橋 一鶴:小杉十郎太
蒼樹 千晴:森久保祥太郎
天童 壬:保志総一朗
花椿 吾郎:速水奨

2002年にリリースされた『ときメモGS

 さらに意中の相手とデートに行くときにファッションを選べるというのも、当時の乙女ゲームとしては目新しい要素でした。

 主人公は週末に出かけてキュートやセクシーなどにジャンル分けされた洋服やアクセサリーをショッピングで入手することができ、それを意中の相手の好みにあわせて着て行きます。

 センスのない服を着て行ってしまうと相手に嫌われるので、おこづかい(ゲーム内の通貨「リッチ」)をやりくりしたり、アルバイトに従事してお金を貯めるという選択肢も追加されました。

最新作『ときメモGS4』でのコーディネート画面。

 また、同性キャラクターと友情を育んだり、ときに意中の相手を巡って恋のライバルになって対立するなど、異性との恋愛以外の要素が増えていることも本作の特徴です。

 好感度によっては「VSモード」と呼ばれるモードに突入し、女友だちから嫌味を言われたり、意中の相手と仲良くなりづらくなったりします。この他にも、男性キャラクターと友だちになる「親友モード」という存在もあり、恋人なのか友だちなのか曖昧な関係値を築くこともできます。

 豪華なキャスト、合成音声、ファッションやアルバイト、友情と対立と恋愛……それまでの乙女ゲームになかった試みやシステムは、当時の競合作品に埋もれない独自の強い魅力を備えた乙女ゲームとして多くのプレイヤーを魅了しました。

記念すべき1作目の「王子」は、モデルの「葉月珪」くん。
成績優秀スポーツ万能な優等生で、顔よしスタイルよしのまさに「王子様」。
ボイスキャストは「緑川 光」さんが担当されています。

「偶然の事故のキス」で運命の出会いを描いた『2nd Kiss』登場! 三作目のPSP版『Premium ~3rd Story~』ではいち早く「Live 2D」に対応

 

2006年にPS2でリリースされた『ときメモGS 2nd Kiss

 前作が前例のない革新的な乙女ゲームとして登場してから4年。満を持して2006年にPS2で登場したのが二作目ときメモGS 2nd Kissです。

 基本システムは一作目の時点ですでに完成されていたため前作からのプレイヤーには入りやすく、一方で物語の舞台になる学園が前作とは違って登場人物が一新されていることから、新規プレイヤーにも受け入れられやすい作品となっています。

事故チューができてしまう「セカンドキスシステム」

 そして前作のゲームシステムを受け継ぎつつも新たな要素を追加しており、さらにときめく新作になっていました。そのシステムがセカンドキスシステム」です。

 サブタイトルにもなっているこのシステムは、『ときメモGS2』の独自システム。「ゲームの序盤に好きなタイプの異性と出会い、偶然の事故でキスをしてしまう……!」というイベントが発生するというシステム。

 このイベントを発生させた相手とは通常とは異なる関係性になり、一部のイベントが変化するなど、シナリオのボリュームが前作よりも増えました。

2作目の「王子」は、お祖父さん喫茶店をお手伝いしている「佐伯 瑛」くん。
彼もまた成績優秀スポーツ万能で、人当たりも良くクラスの人気者ですが……実は猫をかぶっているとか???
ボイスキャストは「森田 成一」さんです。

 さらにシリーズ1作目とこの2作目は、それぞれ2008年にニンテンドーDSへ新規コンテンツを追加して移植され、筆者のような当時遊びきれなかったプレイヤーにも広がるようになっりました。

 光学ディスクとROMカートリッジの違いなどから、「豪華声優陣によるフルボイス」、「EVS」といった要素は削られている【※】のですが、一方でニンテンドーDSならではの2画面、タッチパネルといった要素を活用した良質なアレンジ移植であり、新キャラクターが追加されるなど、移植元のタイトルを遊んだことがあるプレイヤーにもうれしい作品でした。

※なお1作目『1st Love』はのちにフルボイス版『1st Love Plus』が同じニンテンドーDS向けに2009年リリースされた。

ときめきメモリアル Girl’s Side Premium ~3rd Story~ プロモーションムービー

 シリーズ3作目はニンテンドーDSで2010年に発売されたときメモGS 3rd Story』で、2012年にはときメモGS Premium ~3rd Story~』としてPSPでもアレンジ移植されました。シリーズ初の携帯ハードでの新作でしたが、移植作で培った携帯ハードの特性を活かしたゲームデザインと、携帯機とは思えないほどのボイス量が印象強い作品です。

 特定の組み合わせの男性キャラクター2名にアプローチしていると発生する三角関係モード」、攻略対象となる男性キャラクターの目線で語られるシナリオを楽しめる「ADVイベント」など、数々の追加要素によってこれまでのシリーズ作に決して劣らない完全新作となっていました。

三角関係モード」

 またやはり本作のPSP版を語る上で外せないのが、もともとの絵はそのままにキャラクターの表情や体が動くようになる技術「Live 2D」です。『ときメモGS Premium ~3rd Story~』では、2012年にいち早くこのシステムを導入し、豪華声優陣のボイス演技とあわせてシナリオの演出性やキャラクターの実在感を高めていました。

 いまでは女性向けスマートフォンゲームとして有名なあんさんぶるスターズ!2015)を筆頭に、会話画面でキャラクターの立ち絵が滑らかに動くのは近年の乙女ゲームの定番となっていますが、こういった点からも『ときメモGS』シリーズが最新の技術を柔軟に取り入れて進化を続けているゲームであることがわかるのではないかと思います。

3作目は、なんと「W王子」。
新たに三角関係を楽しむモードが追加されたことからか、王子も2人登場します。
こちらの彼は「桜井 琉夏」くん。明るくやんちゃで女の子たちの人気者ですが……。
主人公とは幼馴染の関係。ボイスキャストは「杉田 智和」さんです。
W王子のもう1人「桜井 琥一」くん。
琉夏くんのお兄さんですが、同い年で同学年。
ニヒルでぶっきらぼうな性格と外見から近寄り難いと思われがちですが、人情に厚く優しい一面も持っています。
ボイスキャストは「諏訪部 順一」さんです。

最新技術の採用と有名声優やアーティストの起用。そして「オタク向けすぎない配慮」が『ときメモGS』を支えてきた

 ここまで当時のプレイした興奮を思い出しながらシリーズを解説してきましたが、『ときメモGS』の強みはやはり「その時代の競合する他タイトルにない要素」をしっかりと確立していることと感じました。

 PS2のマシンパワーとDVDによる大容量を活かした「EVS」の導入、本家をそのままコピーするのではなくより進化や洗練が考えられた各システム、そしてLive2Dの採用など、新しい技術を取り入れて今までにない体験をプレイヤーに与えてくれる唯一無二のタイトルだったからこそ、たくさんのプレイヤーに支持されたのではないかと思います。

 また、『ときメモGS』は一作目から声優陣はみんな有名アニメで主演・準主演級の活躍をしている有名声優をキャスティングしてきました。さらに一作目のオープニングとエンディングには、なんとあのB’zが採用されており、それぞれゲーム内でSIGNALと「美しき世界」という曲が流れます。

※「SIGNAL」、「美しき世界」(それぞれB’z公式チャンネルより)

 パッケージデザインも『ときメモGS』を語る上で外せないポイントです。アニメチックなキャラクターを前面に押し出す、いわゆる「オタク向け」のように感じてしまう一般的なデザインは、非常にわかりやすいですが一部のコアなユーザー以外はなかなか手を取りづらく書いにくいのではないかと思われます。

 しかし本シリーズは一貫して、パッケージ前面にはキャラクターのビジュアルを採用せず、イメージボードや可愛いロゴを配置して、広く女性が手に取りやすく、ショップの陳列でも目を惹く個性的なデザインを採用しています。

歴代『ときメモGS』のパッケージ。
基本的にキャラクターイラストを使用しておらず、ゲームに馴染みの薄い女性層も手に取りやすい工夫が光るデザイン。
ニンテンドーDS版3作はパッケージデザインに共通のモチーフ(布地に刺繍やデコレーションを施したハンドメイド風のデザイン)が用いられており、店頭展示でもシリーズ作品であることが伝わりやすく、遠くから見ても『ときメモGS』であることを認識しやすかったように記憶しています。

 このように、ゲームに馴染みの薄い女性層にも興味を持ってもらえるようしっかりとマーケティング戦略を組んできたのが『ときメモGS』でした。初めて手に取った乙女ゲームがこの作品だった、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 新しい技術への挑戦や主題歌アーティスト、声優、パッケージデザインなど、「初めましての人が手に取りやすい工夫とコア層にも訴えかける斬新なシステム」こそが、『ときメモGS』シリーズが広く親しまれる理由ではないかと、筆者は思います。だからこそ最新作『ときメモGS4』も、単なる乙女ゲームではなく青春と恋愛を新しい体験を通じて楽しめるシミュレーションゲームとして、より多くの人が手を伸ばすことを願ってやみません。

最新作『ときめきメモリアル Girl’s Side 4th Heart』がついに発売

ときめきメモリアル Girl’s Side 4th Heart [Nintendo Direct | E3 2021]

 2019年4月、「ときめきメモリアル Girl’s Side DAYS 2019~はばたきウォッチャー増刊号~」という、『ときメモGS』シリーズの5年ぶりのイベントが開催されました。

 ファンたちのあいだでも「新作の発表があるのでは?」と期待の声が上がる中、イベントの最後についに発表された『ときめきメモリアル Girl’s Side4』。のちに正式タイトル『ときめきメモリアル Girl’s Side 4th Heart』となり、Nintendo Switch専用ソフトとして2021年10月28日に発売を迎えます。

 

 今作も追加要素として、3人の男性キャラクターと仲良くなり「仲良し4人グループを結成」することで発生する特殊イベントや、ゲーム内通貨「リッチ」を使った学食システムで特別な会話を楽しんだりなど、新要素が豊富に用意されているようです。

キャプション:登場人物たちもとても魅力的で、筆者は声優の「阿座上 洋平」さんのファンのためNanaこと「七ツ森 実」くんが気になっています……!モデルさんという設定のためか高身長……。多彩な顔を持つミステリアスな高校生とのことで、彼と仲良くなることでさまざまな一面を見せてくれそうですね……!

 イベントが復活し、もう二度と遊べないのではとさえ思っていた新作が発表され、シリーズの20周年も見えてきた今日このごろ。9年ぶりの完全新作とのことで、初めて『ときメモGS』に触れる方も多いかもしれません。

 ひとりでも多くのプレイヤーに親しまれ楽しまれて、さらに次の作品やイベントへ繋がっていったら、ひとりのファンとしてこんなにうれしいことはありません。ハードも世代交代が進んでいるため、過去作のNintendo Switchへの移植にも期待してしまうところです

 まずは10月28日に発売された最新作『ときめきメモリアル Girl’s Side 4th Heart』を楽しんでいきましょう! はじめましての方も、お久しぶりの方も、ときめきの3年間に浸ってみてください。もちろん私も9年ぶりとなる新作を、思う存分満喫したいと思います。

ときめきメモリアル Girl’s Side 4th Heart』
『ときめきメモリアル Girl’s Side 4th Heart』 公式サイトはこちら

©Konami Digital Entertainment

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ライター
腕前は大したことないものの、ゲームが大好きな会社員です。
音ゲーから弾幕STGまで、アーケード作品も大好きで、クレーンゲームで散財することも……。
Twitter : @RenCos
編集
ニュースから企画まで幅広く執筆予定の編集部デスク。ペーペーのフリーライター時代からゲーム情報サイト「AUTOMATON」の二代目編集長を経て電ファミニコゲーマーにたどり着く。「インディーとか洋ゲーばっかりやってるんでしょ?」とよく言われるが、和ゲーもソシャゲもレトロも楽しくたしなむ雑食派。
Twitter:@ishigenn