10月31日衆院選は、自民党が単独で安定多数、という結果だった。これを好感して、11月1日日経平均754円の爆上がり。「新しい資本主義の実現」を旗印にする岸田文雄首相だが、コロナ収束による経済再開が期待されるなか、今後値上がりが期待されるキシダノミクス銘柄とは?(※以下、有識者のコメント衆院選前)

岸田文雄総理大臣
岸田文雄総理大臣 ※首相官邸HPより

株式市場は、政治の安定を好む

 選挙前に新首相が誕生した当初、マーケットの反応は冷たかった。新政権が発足した10月4日をまたぎ、日経平均株価は8営業日連続で下落。ご祝儀ムードは見受けられなかった。最大の要因は首相就任直前に表明した金融所得税の引き上げだった。10日にテレビ番組で撤回を表明したが、先行きは不透明だ。

 ただ、経済アナリストの馬渕磨理子氏(@marikomabuchi)は「岸田さんは『国民の声を聞く政権』を打ち出し、リアルに声を聞いてくれた。年末に向けて株価も上がるはず」と評価する。

 菅義偉前首相の総裁選不出馬表明から総裁選、新政権誕生という激流。次の総選挙自民党は苦戦が予測されるものの、勝利はほぼ確実。馬渕氏は「株式市場は政治の安定を好む。自民党が勝利し、長期政権が続けば日本株は上がるでしょう」と見込む。

DXは成長の余地が残された業界

 株高への期待が高まるなか、馬渕氏が注目するのはDX(デジタルトランスフォーメーション)分野だ。国会での所信表明演説では「全ての人がデジタル化のメリットを享受できるようにする」とうたったが、立ち遅れは否めない。裏を返せば、成長の余地が残された業界でもある。馬渕氏の一押し銘柄は、大企業のDXをサポートする「ブレインパッド」。

「AI技術を用いて、デジタルマーケティングを手がけており、例えばSNS上の膨大な画像からコカ・コーラの商品ラベルの撮影場所を解析し、登山客に一定の需要があることを掘り起こしてビジネスにつなげるといった手法で成長を遂げています。他にも、助成金自動診断ツールの開発やコンサルを手がけるライトアップや、5G関連企業のアンリツといった銘柄もキシダノミクスの恩恵にあずかれそうです

馬渕氏注目!キシダノミクス銘柄

※以下、株価は11月1日時点の引け値。チャートは10月20日時点

ブレインパッド<東証1部・3655>5590円
AIビッグデータを活用したうえで新たなビジネスシーンの提供まで踏み込めるのが強み。この1年でも株価は堅調が続いている。「トヨタ自動車や、キユーピーりそな銀行にも参画していて、DXの次のステージを見据えています」

ブレインパッド<東証1部・3655>
ブレインパッド<東証1部・3655>
■ レノバ<東証1部・9519>5000円
大規模太陽光発電所およびバイオマス発電所の発電量が順調に推移し、1年間で3倍近い株価をつけているが、現状は押し気味で買いやすい銘柄。「ENECHANGEは高騰気味だが、時価総額はレノバの5分の1で今後に期待できます」

レノバ<東証1部・9519>
レノバ<東証1部・9519>
■ カラダノートマザーズ・4014>1513円
子育てアプリだけでなく、「終活準備ノート」などの人生の節目に切り込んだコンテンツ制作に定評。「ニッチなところには大手が参入しにくい。子育て関連銘柄は上場まで成長した企業は少なく、そういうところにはお金が集まりやすい」

カラダノート<マザーズ・4014>
カラダノートマザーズ・4014>

DX、介護、住宅……注目の分野は?

 岸田政権では新たにこども庁を創設し、子育て施策の一元化と推進を目指していく。ただ、子育て関連の上場企業は希少で、投資が集中しやすい。馬渕氏は「子育てアプリを運営しているカラダノートに注目しています」と語る。

 また、脱原発派の河野太郎氏の総裁選出馬で9月は乱高下が続いた電力株も岸田政権で安定株に。

「再生可能エネルギー関連もレノバや時価総額600億円ほどのENECHANGEに期待」(馬渕氏)

“成長と分配”を掲げる岸田首相は、看護職、介護職、保育士などの賃上げを重点施策に挙げており、これらの株価は10月に入って軒並み上昇ムードにある。サラリーマン投資家の弐億貯男氏(@2okutameo)は有料老人ホームなどを運営するリビングプラットフォームに太鼓判を押す。

「施設介護はストックビジネスに似て、稼働率が一定の割合を維持できれば利益が計算しやすい」

住宅ローン控除は延長を見込む向きが強く業界は堅調

住宅ローン

“分配”という観点では、庶民のマイホーム取得支援に大きく寄与してきた住宅ローン控除。11月が期限だが、延長を見込む向きが強く業界は堅調だ。

「東海を地盤として2019年首都圏に進出した注文建売住宅販売のアールプランナーは、企業規模がまだ小さいけれど勢いがあり、リターンが見込める」(弐億氏)

 また、総選挙後の経済再開の機運に乗って、弐億氏が評価するのはSUVに特化した中古車販売のグッドスピード。感染収束に伴う移動の緩和や、密を避けられるアウトドア人気の高まりなどが株価を押し上げる要因となる。

「中古車市場自体は成熟しているが、3万店弱の中小販売店が乱立する状況から大手がより拡大していくと見ています」(弐億氏)

弐億氏注目!キシダノミクス銘柄

※以下、株価は11月1日時点の引け値。チャートは10月20日時点

■ グッドスピードマザーズ・7676>2012円
中古車業界は分散から集中の流れが強まり、大手上場企業の寡占化が見込まれる。「成熟市場とはいえ、SUV市場は中古車の中では拡大している。アウトドア人気の高まりや整備事業などの付帯ビジネスもついてくる」とプラス要素にも着目する

グッドスピード<マザーズ・7676>
グッドスピードマザーズ・7676>
アールプランナー<マザーズ・2983>6110
岸田首相はリモートワークの推進にも言及しており、住宅需要は数年継続する見込み。「オープンハウスなどは上場当時よりも株価が10倍以上上がっている。現状で小さい企業は、中長期でみれば10バガーのようにリターンが高まる」

アールプランナー<マザーズ・2983>
アールプランナー<マザーズ・2983>
■ リビングプラットフォーム<マザーズ・7091>2650円
コロナ禍で多くの介護施設はクラスター防止で新規利用者の受け入れを停止せざるを得なかったが、緊急事態宣言解除によって再開。岸田首相の介護職賃上げ策も後押しとなり、介護関連銘柄は全般的に底打ちして反転してきている

リビングプラットフォーム<マザーズ・7091>
リビングプラットフォーム<マザーズ・7091>
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 一方で、Go To再開による観光や外食株の高騰が指摘されるが、「短期的にはリバウンドが見込めるが、もとの状態に戻るのがやっとでは」(弐億氏)。「人材不足でサービスが提供できず一時的にインフレが起きるのではないか」(馬渕氏)と冷ややか。政治の動向に加え、経営体力や財務体質を見極めた投資戦術が求められる。

<取材・文/吉田光也 チャート/楽天証券提供>

【馬渕磨理子】
経済アナリスト。日本株の個別銘柄や経済動向をテレビや雑誌など多数の媒体で解説する。また、ベンチャー企業の日本クラウドキャピタルでマーケティングを行う

【弐億貯男】
サラリーマン投資家。割安成長株投資で、10倍株(テンバガー)を獲得して’19年に利益2 億円を達成。近著に『割安成長株で2億円実践テクニック100』(ダイヤモンド社)

【週刊SPA!編集部】



岸田文雄総理大臣 ※首相官邸HPより