2012年からスタートしたTVアニメ『ソードアート・オンライン』 。『ソードアート・オンライン』で最大の長編である《アリシゼーション》編が2020年9月に完結したが、今度は物語の原点でもある《アインクラッド》編をアスナ視点で描いた映画『ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア』がスクリーンに登場した。
アインクラッド》第一層からの軌跡を深く掘り下げていく、作者・川原礫自身によるリブート・シリーズだ。

新作でありながら、これまでの軌跡を辿るという『SAO』ファンには懐かしさもあり、そしてこれから『SAO』に触れるという人にとっては「始まりの物語」となる今作。
キリトを演じる松岡禎丞アスナ結城明日奈を演じる戸松遥、そして、『SAO』に初“ログイン”となるミト/兎沢深澄を演じる水瀬いのりに、『SAO』の魅力、今作ならではの見どころを語っていただいた。

懐かしさと新しさが融合した『ソードアート・オンライン』

――まず、最初に台本を読まれたときの感想をお聞かせください。

戸松:『プログレッシブ』の原作があった上で、さらにミトを加えてというオリジナルのお話ということで、テレビシリーズと同じシーン、セリフという懐かしい部分が完全に新作として書き下ろされている部分があって……新しさと懐かしさの絶妙なバランスがあります。原点回帰ではあるのですが、今回新たに描かれているストーリーなので、台本を読んでいて「こう来るのか!」と純粋に楽しませていただきました。

松岡:《アインクラッド》編をまた新しくアスナ視点でできるということで「このシーンを映像化したときにどうなるんだろう」という期待値はかなり高かったのですが、実際に拝見したら、その期待以上のものでした。
戸松さんがおっしゃられたように、「あのときのシーンをもう一度できる」という喜びもあったり、当時のテレビシリーズを見ていたときに「ここはもうちょっとやり方があったな」と思ったところを改善できたのはすごくよかったです。

水瀬:私は本作から登場するキャラクターなので、まず台本が手元に届いたときは「本当に出られるんだ」という喜びがありました。
オーディションの時点でミトというキャラクターの断片的な特徴であったり、思いは知っていたのですが、ストーリーの展開について知ったのは台本を読んでからでした。そのため、やっと手に入れられた物語を読むような気持ちでワクワクしながらページを開いていきました。
私が演じるミトは、今回はアスナに大きく関わるキャラクターということで、2人の日常だったり、時には緊迫したシーンだったり、アスナというキャラクターを形づくるためにミトというキャラクターが生み出された理由を、本編の台本を読ませていただいたときに感じたんです。台本を読んで、自分の役割を改めて受け取ったような気分でした。

今までで一番アスナとキリトの心の距離が遠かった

――今回、アスナ目線ということで、アスナキリトの関係がテレビシリーズとは変化しているところもあると思うんですが、以前とは気持ちの作り方や、相手の印象が変わったなどありますか?

戸松:時系列的にキリトと出会う前のところから描かれていくので、そういう意味では本当に今までの思い出を全部リセットする感覚でした。演じてきたものは1回忘れて、もう一度ゼロからアスナを組み立てていきました。
TVアニメシリーズでキリトと出会ったときにツンツンしているアスナから描かれているのですが、今回はキリトと会う以前にミトといろんなことがあって、どうしてそういう態度になったのか掘り下げられているのがすごく良かったです。キリトに対しては、今までの中で一番距離感がある状態で演じました。

松岡:今まで10年近くやってきて、アスナキリトの距離感が近すぎたからこそわかったことだったのですが、実際にテストで掛け合ってみた瞬間、5ミリから10ミリぐらいのアクリル板が間にあるのかな? というぐらい心の距離がありました。
関係をリセットするって寂しいことなんだなって思って、衝撃を受けました。と、同時に「あっ、そうだそうだ、最初の頃はこうだったな」と。

――水瀬さんから見て、今回のアスナキリトの関係性はどうでしたか?

水瀬:アスナに関しては「こんなに感情的な部分がたくさんある子なんだ」というのを改めて知りました。 かっこよくてクールで、凛として強いってイメージもある中で、ゲームを始めた当初は取り乱したり、恐怖におののいたり、普通の女の子らしさを持ちながら、でもこの世界を生きていく中で、その自分に打ち勝たなきゃいけないっていう想いとともに戦い、成長していった。本当に自分と戦っている女の子なんだ、と。
そういう意味ではやっぱりキリトの戦う姿は彼女にすごく大きな影響を与えたんだな、と思いました。
キリトは言葉で何かを伝えるよりも、自分の思いを、戦いや行動で示すことでアスナの心を動かしたと思うので、ミトを演じている側からだと複雑に見えました。

きっとミトもキリトみたいに、アスナに背中を見せたかったんだと思います。だから、キリトはミトの憧れにもなったんじゃないかな。

――今までになかったようなアスナとミトの普通の女子中学生の日常を演じてみていかがでしたか?

戸松:すごく新鮮でした。こんなに長く『SAO』に関わってるのに、リアル世界での描写って多くはなくて。あったとしても、もう「SAO」という世界から生き残った後のお話なので、今回の劇場版で描かれる現実世界とは全然経験値が違います。なので、現実でのアスナの向き合い方もやっぱり違った感覚がありました。本当に何も知らないころのただの“結城明日奈”が前半でしっかり描かれていたので、嬉しかったですね。1人の中学3年生の女の子として日常の学生生活やミトと遊んでいるシーンは、演じていて楽しかったです。

水瀬:私もアスナとミトの2人だけの時間がこんなにあったんだ、と知り嬉しかったですね。ミトもアスナだから見せられる一面がたくさんあったと思います。だからこそ、アスナにとってもミトにとってもお互いがすごく大切な人で、代わりがいない。彼女たちにとっては本来それが当たり前の日常なのですが、その関係性をイチ視聴者から見ていると、「ああ尊いってこういうことなんだな」って思いました。

――松岡さんは、2人の日常シーンをご覧になられていかがでしたか?

松岡:アスナは「SAO」のゲームに入る前は、秀才ですが、本当に普通の女子学生だったんだなと。ある種、「SAO」が彼女の人生を変えてしまったというのはあるのですが、もしナーブギアがなかったら、アスナってどんな子になってたんだろうなということを考えてしまいました。 ですが、学生生活のシーンは、ずっと見ていたい気持ちもありながら、何か切なさを感じるところでもありました。

個性が出る極限状態の対処法?

――『SAO』の作中では死と隣り合わせということで極限状態、追い詰められている状態だと思うんですけど、みなさんが追い詰められているときの対処法ってどうされているんですか?

戸松:つぐつぐあるじゃないですか(笑)

松岡:もうやらないですよ。どうしても口回らないセリフが出てくると落ち着けってなりますけど。

――松岡さんが何かされていることがある……?

戸松:「SAO」の最初のほうは、松岡くんがもう緊張しすぎて、力加減の歯止めが利かなくなるときがあるんです。
雑魚モンスターに150~160%ぐらいの力でやっていたのに、今度は逆に20%ぐらいになっちゃう時があって。自分でだんだんテンパッてくると、パアン!って自分をビンタして「落ち着きなさぁい!」って言うのが結構名物だったんです。それで軌道を正すっていうか。

松岡:そうですね。

戸松:でも《アリシゼーション》の最初まではやってたよね。石田彰さんがすごく笑ってました。

松岡:あー……(笑)いや、本当に回数は減りましたよ。

――戸松さんはいかがですか?

戸松:私はなんだろう……
でも、テンパってると自覚した瞬間に負のスパイラルに入ってしまうので、思い込み方式ですね。「テンパッてなんかいない!」と。プレッシャーが大きいときほど「私はできる」ってマインドコントロールしないと、陥ったときに出られなくなってしまうので、根本的に思い込みをします。

水瀬:私は諦めます。

戸松・松岡:(笑)

戸松:みんな全然違いますね(笑)

水瀬:風で交差点に飛ばされた自分の帽子が何台の車にもひかれたことがあるのですが、もう本当に供養というか、お疲れさま、と気持ちで拾いにはいかないです。もう諦めですね。こういう運命だったと受け入れて、また明日から頑張ろうっていうような気持ちです。

松岡:悟ってますね。

水瀬:それが運命なので(笑)

『SAO』の醍醐味は?

――「ミト」がどんなキャラクターか、どんな展開になるのかドキドキの状態でファンの方は公開を待っていると思うんですけど、みなさんがご覧になって感じた今回の映画のハラハラドキドキするポイントはどこにあると思われますか?

水瀬:やっぱり「SAO」の中の死が現実の死に直結する描き方には、テレビシリーズや原作を読んでいる方でも、もう一度劇場で直面する瞬間っていうのはまた心臓をわしづかみにされるような、ドキドキ感や苦しさがあるんじゃないかなと思います。ミトを演じているからこそなんですけど、「ゲームであって、遊びではない」というところがすごくミト自身にも刺さってきました。

戸松:ミトを交えたオリジナルのお話になっているので、やっぱり最後ミトがどうなるんだろう、と思いながらご覧になるのだろうと思います。アスナキリトは絶対死なないという安心感はあるのですが、ミトは最後まで観ないとどうなるのかわからないと思うんです。
他にもアスナの視点で描かれる《アインクラッド》編になるので、知ってるキャラクターがいるのか、初めましてのキャラクターが出てくるのか、ご覧いただいての楽しみにはなると思います。
あと、《アインクラッド》は層ごとのボスがいるので、ボス戦になるとやっぱり背筋がシャキッとなります。

松岡:視覚的に恐ろしかったシーンは始まりの街をでてすぐのアスナの描写です。「こんなに危険な世界なんだ」ということがアスナの表情で伝わってきます。
全編通して、結構シリアスと言いますか、ゾワゾワするシーンが多かったですね。
戸松:私は洞窟でのあの場面が結構怖かったですね。トラウマシーンです。

松岡:容赦なかったですよね。

水瀬:本当にこう生きるか、死ぬかを目の当たりにして、皆さんの迫真の演技の叫び声を聞いて、すごく心が痛かったです。

松岡:「早く早く早くそこから離れて!それ以上行ったら見つかっちゃうよ!」というハラハラする感じがありましたね。

――作中でミトが「醍醐味」という言葉をよく使っていましたが、この作品の醍醐味はなんだと思われますか?

戸松:これだけリアルに感じられる世界観のゲームって夢だなと思っていて、夢とロマンが本当に詰まっています。本当に死ぬのだけは避けたいのですが、それさえなければ素晴らしいゲームなんですよね。
どうしても攻略部分がメインになってしまうのですが、ストーリーを進めていく上で、実は《アインクラッド》って、それ以外の楽しい部分がたくさんあるのです。テレビシリーズは特に攻略の方がメインでしたが、今回ミトとアスナがイチから武器買い揃えたりとか、考えてみれば戦いにはそれが必要なんですよね。
そういう楽しさみたいなのは、オンラインゲームならではで、きっと小さなクエストとかもいっぱい落ちてるんですよね。
なので、クエスト受注したり、細かい部分で楽しめるのは醍醐味で面白いところなのかなと思いました。

松岡:本当にこんなゲームがあれば、ずっと中に居られますよね。
TVシリーズの作中でも、実際に餓死者が出たり、戦闘だけじゃない要素がある中で、普通にご飯を食べたりして、様々なものを感じることができます。 実際に生きているうちに実現できるかどうかわからないですが、実現したらやってみたいですね。

水瀬:私が思う醍醐味はやっぱりシンクロ感ですかね。ゲームの中で成長していく過程がちゃんとリアルの自分の気持ちの成長ともシンクロしているのがすごいなと思います。
人間力じゃないですが、「SAO」の世界で学んだことがリアルな自分にも投影されて残っていくのはすごく夢があるな、と感じました。ゲームの中で強くなるにはただスキルが強いだけじゃなくて、知識を得たり、生き方そのものを学べるシンクロ感はすごく体感してみたいなと思います。

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撮影/鬼澤礼門、取材・文/ふくだりょうこ

松岡禎丞・戸松遥・水瀬いのり