
10月31日、東京都調布市の京王線布田−国領駅間を走行中の新宿行きの上り特急電車にて、70代男性の右胸を刺し、ライターオイルを撒き、車内に火をつけた疑いで、服部恭太容疑者(自称・24歳)が逮捕された。
日本中に衝撃を与えた事件を受け、ツイッター上でも様々な意見が飛び交っているが、そんな中で「とある注意喚起」が話題となっているのをご存知だろうか。
■「リツイートとかしないで」
注目を集めているのは、時代劇系Vtuberとして活動する秋山銀次郎さんが投稿した一件のツイート。
「京王線で事件、重体の方が無事意識が戻りますことを祈ります」という文言から始まる同投稿には、「この後刃物で襲われた時の対処方とかTwitterで上げる人が増えるかも知れないので、多数武術をやってる身から一言」それは役に絶対立たないものなので、リツイートとかしないでください。1にも2にも逃げること、逃げる以外に手立てはないです」という注意喚起が続いていたのだ。
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■「逃げる」ことは恥ずかしくない
秋山さんはその後のツイートにて「電車の中では逃げられないという意見も多かったので補足」「逃げるというのは犯人と距離を取るってことです」と、細部についてもコメント。
「警察が来るまでの時間稼ぎもそうですが、状況を把握するための時間も得ます」「犯人と遭遇した時、犯人が絶対的に先手を取っています。少しでもイーブンにするためにもその場から逃げるしかないんです」と、逃げることの大切さについて説いている。
「逃げる」という言葉に悪いイメージを持っている人は決して少なくないほか、今回のような痛ましい事件が発生した際、ネット上には「もし自分がその場にいたら、いかに勇敢に立ち回っていたか」と突如、自分語りを始める人が散見されるもの。
そうした人の中には「非常時に自分の身さえ助かれば良いのか」「逃げるなんてみっともない」といった具合に、事件に巻き込まれた人々を非難し出すケースもあり、こうした行為が「非常時に自分だけ逃げるのは恥ずかしいこと」という謎の先入観を抱かせ、悪循環を生じさせているような思いすら湧いてくる。
そんな中で「(対処法の)リツイートをしないでください」「逃げてください」と冷静に呼びかけた秋山さんのツイートには、「本当にその通りです。護身術でも、相手に立ち向かうのは最後の手段です」「空手の師匠も同じことを言っていました。刃物からは逃げるのが一番」「確かに素人が咄嗟にできることなんて、たかが知れてるんですよね…」といった共感の声が多数寄せられていた。
■「刃物にはこう対処」に違和感
京王線で事件、重体の方が無事意識が戻りますことを祈ります
この後刃物で襲われた時の対処方とかTwitterで上げる人が増えるかも知れないので、多数武術をやってる身から一言
それは役に絶対立たないもなので、リツイートとかしないでください
1にも2にも逃げる事
逃げる以外に手立ては無いです
ツイート投稿主の秋山さんは前述の通り、時代劇系Vtuberとして活動中。
時代劇の普及のためにYouTubeで活動路続けている中、時代劇の一環として古武術・現代武術を10年以上修行する身で、そうした経歴もあって、今回の事件を受けて思うところがあったそうだ。
ツイート投稿の背景について、秋山さんは「8月に起きた小田急線の事件の後、『刃物にはこう対処する』などの護身動画が結構目についたんですね」「今回も多分出るんだろうなぁと思いまして、このツイートをしました」と振り返っている。
また「護身術は使えないというわけではないのですが」と前置きしつつ、「かなりの稽古量と条件が限られたときでないと、効果を発揮しないんですね」「今回の事件のような完全に虚を突かれたときは、相当の稽古を積んで、何も意識しなくてもその行動が取れるレベルの方でないと、効果を発揮するのは無理だと思います」とも語ってくれた。
■「戦う」という選択肢について
「逃げる」という行為とは対照的に、偉大な行動として捉えられがちなのが「戦う」という選択肢。
実際、件のツイートに対しても「勇敢に戦う!」という意見を寄せていた人が少なからずいたようだが、秋山さんは「犯人に遭遇したときって戦う、という選択肢を選ばないといけない状況ではないと思うんです」と語り、「逃げた先が狭い個室で隠れるところが無く逃げ道がふさがり、犯人が攻撃してくるとき」など、本当に「戦う」以外の選択肢がないシチュエーションを挙げてくれた。
また、一見正しそうに見える自己犠牲の精神についても「実際にやると結構大変なことが起きます」とバッサリ。
負傷して人質になる可能性のほか、戦って死んだという事実が周囲に伝播してしまうと、追い込まれて戦うしか選択肢がなくなった際に「どうせ戦っても死ぬんだ…」という無気力さを引き起こす恐れもあるという。
■「武装した犯人」を制圧できるのは…
「もし余裕があれば、お子さんとかご老人などの逃げにくい人を抱えて逃げる」「もしお子さんがたくさんいて余裕がないときは、適当なガタイのいい人に押し付ける。パニックになってるときに押し付けると結構すんなり聞きます」とも補足している秋山さん。
また「武装した犯人を制圧できるのは、同じく武装した警官や自衛官だけだと思ってください」というコメントも見られ、「巻き込まれた人達は圧倒的に不利な状況なので、逃げることを非難するのはお門違いです。例え友人、恋人、親兄弟が被害に遭っている中で逃げても、非難しないでください」とも強く呼びかけていた。
事件に巻き込まれ「逃げる」という正解を選んだ人々に言われなき非難が寄せられると、それはまた新たな被害者を増やすことに繋がってしまうのだ。

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