~投資家必見!有名企業のESG戦略分析シリーズ~

昨今、企業のESGに向けた姿勢への注目度が高まっています。ESGとはE(環境)、S(社会)、G(企業統治)の英語の頭文字をとったものです。今回は様々な上場企業がESG戦略を検討、実施する中で、大手損保のSOMPOホールディングスを取り上げ、同社のESGに対する取り組みをご紹介します。

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E(環境):気候変動への取り組みは自社ビジネスにもつながる

まず、E(環境)についてです。同社は国際的組織「金融安定理事会(FSB)」が掲げる気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同し、気候変動に対するさまざまな取り組みと透明性の高い情報開示を推進しています。気候変動は地球環境に大きく影響し、その影響は水や食料、雇用、格差にまで及んでいます。

この気候変動の問題に対し、同社は取締役会が定めるSOMPOグループERM(戦略的リスク経営)基本方針のもと、「想定を超える自然災害の甚大化および脱炭素社会への移行に伴うレピュテーション毀損や資産価格への影響などの気候変動リスク」を重大リスクと定義づけ、役員が責任者となって対策を実施しています。

そして、気候変動は産業構造の変化や新たな技術革新などをもたらし、同社のビジネスチャンスにもつながっています。社会における気候変動への対策が不十分な場合、自然災害が激甚化しやすくなるため、同社は保険を軸とした知見・ノウハウを活用し、新たな商品・サービスの提供を進めています。たとえば、独自の気候予測分析データなどを活用したリスクコンサルティングや、海外向けでは東南アジアで「天候インデックス保険」なども提供しています。

また、再生可能エネルギーや新たな技術の開発に伴う気候変動の緩和によって新たな保険ニーズが生まれるとの想定のもと、事業環境作りとして気候変動の緩和も主導しています。「2050年実質排出ゼロ」水準の温室効果ガス削減方針を表明し、同社が使用する電力の再生可能エネルギーへの切り替えなどを進めているほか、投融資先を含むバリューチェーンの実質排出ゼロを目指し、ステークホルダーとも連携しながら削減に取り組んでいます。

S(社会):多様性への配慮が社員能力向上やサービス開発に寄与

同社の社会貢献の範囲は交通事故防止や健康経営、文化・芸術の普及など裾野が広いですが、ダイバーシティ&インクルージョンに向けた姿勢には要注目でしょう。障害者差別解消法への対応として、同社はユニバーサルデザインに対応したパンフレットを提供するなど、障がい者・高齢者に配慮した取り組みを実施しています。また、「障害者差別解消法」に沿い、契約締結や保険金支払いなどの各オペレーションプロセスや、店舗などの物理的環境、顧客からの相談体制などにおいても改善を図っています。

LGBTへの配慮も優れています。同社はLGBT社員の能力を最大限発揮できる環境整備のもと、配偶者がいる場合に利用できる手当てや弔慰金の支給、慶弔休暇の取得、各種福利厚生施設の利用について、同性パートナーも配偶者とみなしています。社員の理解を深めるために、教材の全職場への配布やLGBT勉強会の開催なども実施しています。

サービス面でもLGBTの配慮を取り入れています。同性パートナーが受取人に指定された生命保険について、「パートナーシップ証明書」の写しなどの提出によって被保険者と受取人の関係確認を一部省略し、スムーズな手続きを可能としました。損害保険でも、配偶者の定義に同性パートナーを含め、契約締結や保険金支払いに対応しています。

外国人に対しても配慮しています。同社は外国人旅行者が日本入国後に加入できる訪日旅行保険を販売しています。外国人旅行者は日本滞在中の病気やケガの際、「どの医療機関に行くべきかわからない」「健康保険などの給付がないため、自己負担が高額になりやすい」「言葉が通じない」など多くの不便・不安を抱えています。

海外旅行保険が普及していない国や地域が多数あることから、同社は政府との協議を重ね、外国人旅行者が自国で旅行保険に加入せずに日本に入国した場合でも、入国後に加入できる訪日旅行保険を開発しました。同社の訪日旅行保険では外国人旅行者の治療費補償やキャッシュレス治療、多言語対応、医療機関手配などに対応しており、従来の外国人が抱える不便・不安の軽減につながっています。

G(企業統治):透明性高い積極的な情報開示

コーポレート・ガバナンスにおいて、同社は体制強化の一環として2019年6月に指名委員会等設置会社に移行し、より高い透明性と公正性のもと経営しています。情報開示での配慮も優れ、役員報酬が総額1億円を超える者は個別で氏名・金額を開示しているほか、投資家・アナリスト向け説明会も年間300回以上実施しています。

情報セキュリティー面では、最高情報責任者(CIO)が責任者となってグループ全体で効率的かつ実効性のあるサイバーリスク管理態勢を整備しています。また、日々高度化・複雑化するサイバーリスクへの対処に向け、IT企画部内に専門組織としてサイバーセキュリティグループを設置し、戦略策定やグループ横断的なセキュリティー強化も進めています。

顧客プライバシーの保護にも注力しており、苦情については外部当事者に報告するなど適切な対処を組織内で図っているほか、苦情の件数も公表するなど透明性も意識した体制となっています。

SOMPOホールディングスのESG戦略のまとめ

SOMPOホールディングスのESGについて、いかがだったでしょうか。「大きな会社だから、いろいろな活動をしているんだろうな」「保険を扱っているから、社会貢献には積極的なんだろうな」といったように漠然としたイメージを持っていた方も多いと思いますが、このように各切り口で情報をまとめてみることで、より立体的・鮮明なイメージを持つことができたでしょう。

とりわけ、E(環境)とS(社会)に向けた取り組みは、自社サービスの開発や従業員能力の向上につながるなど業績に直結するような材料でした。これを受け、株式投資をする人は企業のESG戦略の重要性がより理解できたのではないでしょうか。同社は気候リスクやLGBTのように、社会的に新しいテーマに向けた取り組みにも積極的です。今後の先進的な活動にも要注目だと考えます。

参考資料