暇さえあれば家中を掃除していたという15歳の少年は、2年前に強迫性障害と診断された。少年が“極度の掃除好き”を売りに車の清掃ビジネスを始めたところ、現在では英国のセレブたちもご用達の人気ビジネスに発展しているという。『The Mirror』『Manchester Evening News』などが紹介し、話題を呼んでいる。

英グレートマンチェスター、サルフォードのワースリーに住む15歳のジカイア・ディチェット君(Zykiah Ditchett)は13歳の時、強迫性障害(OCD)と診断された。

強迫性障害とは、自分の意思に反してある考えが頭に浮かんで離れず(強迫観念)、その不安を振り払おうと何度も同じ行動を繰り返してしまうこと(強迫行為)で日常生活にも影響を及ぼす状態を指す。ジカイア君の場合はそれが掃除であった。

強迫性障害と診断された後、母親のジョー・ディチェットさん(Jo Ditchett、45)は「息子が少しでも外に出る機会になれば」とクリスマスプレゼントに車の洗車用キットを贈った。最初は車1台につき5ポンド(約770円)で親戚の車を掃除していたジカイア君だったが、そのうち「近所の車も掃除していい?」と母親に尋ねてきたという。

そんな息子の要望に応え、ジョーさんはFacebookの地元のコミュニティグループに「息子は大の洗車好き」「もし洗車して欲しい人がいたら、家の前に車を停めておいて」と投稿した。

すると1時間後には十数人がジカイア君のためにと駆けつけ、閑静な住宅地の道路に長い車の列ができたという。

ジョーさんは当時の様子をこのように語っている。

「車の列は家の前から道の端まで続き、隣の通りにまで及んでいました。」
「皆がジカイア(とその試みを)を支えようと、駆けつけてくれたのです。」
「息子はよくやったそうで、皆から『またやってほしい』と頼まれました。」
「息子は5ポンド(約770円)で洗車を引き受けていましたが、皆は息子に10ポンド(約1530円)を渡してくれました。」

このジカイア君の“掃除へのこだわり”を上手く使ったアイデアと、障害に向き合う前向きな姿勢には多くの人が驚きと感動を覚えた。地元のパブ「Coal and Cotton Gin Bar」のオーナージェイソンさん(Jason)もそのうちの1人で「ジカイア君の仕事ぶりに本当に感銘を受けた」と家族に連絡をくれたという。

ジェイソンさんはさらに「週末に店の外にあるキャノピーテント(設置型の日よけテント)で洗車の仕事をしてみてはどうか」とジカイア君に提案し、洗車のための場所を提供してくれたそうだ。

小さなキャノピーテントでのスタートから2年、15歳になったジカイア君は現在、SNSやホームページを開設し、洗車ビジネス「Dirt2Clean Manchester」を運営している。

その顧客の中には、英サッカーチーム「マンチェスター・ユナイテッドFC」でディフェンダーとして活躍したガリー・ネヴィル元選手(Gary Neville) や現役MFのスコット・マクトミネイ選手(Scott McTominay)、恋愛リアリティ番組『ラブ・アイランド(Love Island)』から誕生したカップルでインフルエンサーのモリーメイ・ヘイグ(Molly-Mae Hague)とトミーフューリー(Tommy Fury)など多数のセレブも名を連ねている。

このジカイア君の目覚ましい活躍を振り返り、ジョーさんはビジネス成功までの経緯をこのように明かした。

「息子は今、『ラブ・アイランド』の人気者たちの車掃除をしています。」
「すべてソーシャルメディアのおかげです。」
「高性能の車を持つ人たちがこぞって息子のところにやって来ますが、息子はどんな車でも洗います。」
「息子はいかなる講習も受けたことがなく、全て独学でやっています。InstagramやYouTubeなどで洗車の過程を見て学んでいました。チラシなんかも、自分で作っているんですよ。」
「たくさんの若い人たちから『どうやって(ジカイア君は)洗車を始めたの?』と聞かれますが、息子の答えはいつも『バケツスポンジからさ』です。」
「息子がバケツスポンジの使い方をマスターするまでには、1年かかりました。」

ジカイア君の洗車ビジネス「Dirt2Clean Manchester」では、冬場や野外での洗車は10ポンド(約1530円)、簡易洗車の“mini valets”が20ポンド(約3070円)、車の内外まで完璧に綺麗にする“king valets”が50ポンド(約7670円)と顧客の要望に合わせたコースを用意しているという。

画像は『Joann Ditchett 2020年5月5日付Facebook「When folk say he’s only a kid washing cars?」、2021年4月6日付Facebook「“Do it with passion or not at all”」、2020年12月12日付Facebook「Here we have a HAPPY returning customer」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 YUKKE

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