日本時間2021年11月6日午後8時より、台湾の高雄・高雄流行音楽中心にて、台湾インディー・ミュージシャンの祭典【第12回金音創作奨(GIMA)】が開催された。

 12回目の開催となる今年は、初めて台湾南部の高雄で行われ、会場の高雄流行音楽中心のこけら落としイベント、そして今年初の有観客開催のアワードとなった。オープニングを飾ったのは台湾の人気ラッパーとシンガー4人で構成されたクルーのCHING G SQUADで、ステージ上で<ベストロックソング賞>にノミネートされる康士坦的変化球と合流するスムーズ且つ豪快なパフォーマンスに、客席は一気に盛り上がった。

 続いて22歳のwannasleep(李奕賢)が、今年の【Golden Melody Awards】で<特別貢献賞>を受賞した音楽業界歴44年にして華語ポップスのゴッドファーザーと称される羅大佑氏から、<ベスト新人アーティスト賞>を授与された。音楽創作精神の無限さを象徴するような世代間の強い繋がりが感動を呼んだ。

 また、授賞式には日本のアーティストも登場。電気グルーヴピエール瀧石野卓球は<ベスト電子音楽ソング賞><ベスト電子音楽アルバム賞>のオンライン・プレゼンターとして登壇し「台湾はこれまで何回も行ったことがありますが、人々の感情表現はとても温かく、フレンドリー。次回は高雄にも招待して頂きたいですね。」と、台湾のオーディエンスに活気を与えた。

 プレゼンター発表時から話題になっていたLiSAも同じくオンライン・プレゼンターとして<ベストロックソング賞>と<ベストロックアルバム賞>を発表。丁寧に中国語で受賞したアルバム名を述べる彼女が「ロックと言えば、どこの世界にいても(中略)こうやっぱりみんなで楽しめるというのがすごく魅力だと思います。台湾のアーティストの皆さんの今後の活躍も楽しみしています。“GIMAはいま”、音楽でこの瞬間を照らしましょう」と力強く温かいメッセージを伝えた。

 昨年の<ベストプレイヤー賞>受賞者である大竹研は、今年は同賞のプレゼンターとして登場し、日本の若池敏弘とアメリカ育ちの陳思明に今年の<ベストプレイヤー賞>を授与した。これは一般的に馴染みのない楽器を演奏し、台湾の音楽シーンに独自の創造性をもたらした点が評価のポイントとなっている賞である。

 また、台湾インディーズミュージックの発展に寄与した人物に贈られる<特別貢献賞>は、レコード店で30年以上に渡って活躍し、その豊富で幅広い音楽の知識と優れたセンスで、洋楽、ポップス、クラシック、台湾のインディーズ音楽の普及に尽力し、既に欠かせない存在である呉武璋が受賞。10分近くに及ぶ熱のこもった受賞スピーチには、会場から大きな拍手が贈られた。

 今年の受賞者の中で最も多くの部門を勝ち取ったのは血肉果汁機とYELLOW黄宣の2組。血肉果汁機は主要部門である<ベストアルバム賞><最優秀バンド賞>と<ベストライブパフォーマンス賞>の3部門を受賞した。昨年の司会者であり、今年の審査員長を務めた阿爆ABAOが「メタル音楽を非常に親しみやすいものにしている血肉果汁機は、伝統音楽、お祭りで聞かれる音楽、EDMの要素を融合させている。ギターで北管のメロディーを即興で演奏することで、普段メタルに触れない観客に楽しんで聴いてもらえるようにし、台湾の特徴を持つ音楽を国際的な舞台に送り出すバンドです」と述べた。

 <ベストR&Bソング賞>と<ベストシンガーソングライター賞>の2つを受賞したYELLOW黄宣には、審査員から「今時珍しい実験的なR&B曲でありながら、豊かなディテールに密接にマッチする楽器の表現力と、シンガーとしてのスキルや解釈も素晴らしい」と称賛された。

 この日の最後のパフォーマンスには、9m88が謝明諺、藤井俊充、高飛、林庭? Tim、許郁瑛といった人気ミュージシャンと共に、ジャズビッグバンドで「平庸之上」を披露。さらに、マレーシアのシンガーソングライターであるYunaが事前に収録した「Dance Like Nobody's Watching」のパフォーマンス映像に合わせて、会場にいるバンドが生演奏を行い、音楽が重なりあうことで雰囲気を大きく盛り上げた。

 今年のアワードの最大のサプライズは坂本龍一からの手紙で、司会者が以下のメッセージを読み上げ、授賞式が締めくくられた。

「【第12回Golden Indie Music Awards】の開催おめでとうございます。今回、このような素晴らしい音楽賞で皆さまと交流する機会を与えていただき心から感謝申し上げます。本来なら台湾にうかがい、皆さまと共に授賞式を楽しみたいところですが、パンデミック、そして私自身の病気のためにそれが叶わないことをとても残念に思っています。メッセージをと依頼されましたが、わたしがお伝えしたいことはこれだけです。

他人のやらないことをやれ。
過去を繰り返すな。

do what other people don't.
don't repeat what it's already done.

貪欲に自分の音楽を追求してください。新たなエネルギーにあふれる音楽が台湾から多く生まれることを願っています。」

 GIMA公式YouTubeチャンネルでは、本授賞式のパフォーマンス映像のほか、授賞式前に行われたカンファレンスの様子、ライブイベント【亞洲音樂大賞Asia Rolling Festival】などが視聴可能だ。


◎受賞一覧
<ベストアルバム賞>
血肉果汁機『GOLDEN 太子 BRO』
<ベストバンド賞>
血肉果汁機『GOLDEN太子BRO』
<ベストシンガーソングライター賞>
YELLOW黄宣『浮世撃』
<ベスト新人アーティスト賞>
wannasleep(李奕賢)/『裸雀』
<ベストプレイヤー賞>
呉政君『野蓮出庄』
陳思銘『垂釣島嶼』
若池敏弘『Yu』※uの正式表記はウムラウト付き
<ベストライブパフォーマンス賞>
血肉果汁機『GOLDEN 太子 BRO』
<ベストアジアンクリエイティブアーティスト賞>
Nodey『: -) 』
<ベストロックアルバム賞>
拍謝少年『歹勢好勢』
<ベストロックソング賞>
石青羅林「欲」
<ベストフォークアルバム賞>
藍。掉『垂釣島嶼』
<ベストフォークソング賞>
謝永泉「親愛的△好〇 Akokey 」※△:女部に尓、〇:口部に馬
<ベストヒップホップアルバム賞>
春艶(余承恩)『感恩的心』
<ベストヒップホップソング賞>
熊仔「88BARS」
<ベスト電子音楽アルバム賞>
OVDS『黒的靱性』
<ベスト電子音楽ソング賞>
N7a「zaljum 水 (feat. 阿爆(阿仍仍)/ R.fu)(日出版)」※N7aの正式名称はNにアキュート・アクセント、aにウムラウト付き
<ベストジャズアルバム賞>
羅妍△『蒼鷺十三號』※△:女部に亭
<ベストジャズソング賞>
魯千千「行」
<ベストR&Bアルバム賞>
LINION『Leisurely』
<ベストR&Bソング賞>
YELLOW「後現代獨白」
<ベストオルタナティヴ・ポップアルバム賞>
Matzka『回到原點』
<ベストオルタナティヴ・ポップソング賞>
林以樂「沙漠△瑰與駱駝」※△:王部に攵
<審査員特別賞>
巴奈『愛,不到』
<特別貢献賞>
呉武璋

LiSA/電気グルーヴ/坂本龍一がプレゼンター&メッセージ登壇、【第12回金音創作獎】レポート