明治、大正、昭和――女子学校教育の黎明期。
シスターフッドを結んだふたりの女性が世界を変える!

大正最後の年。かの天璋院篤姫が名付け親だという一色乕児(いっしきとらじ)は、渡辺ゆりにプロポーズした。彼女からの受諾の条件は、シスターフッドの契りを結ぶ河井道と3人で暮らす、という前代未聞のものだった・・・。

«「私、河井道先生とシスターフッドの関係にあります。女子英学塾時代の恩師でもあり、親友でもある女性です。結婚しても、これまでどおり、彼女との仲を維持していけるのであれば、お申し込みを承諾します。彼女と一緒に理想の女学校を作り、生涯をともにすることが私の夢なんです。もちろんその学校で教師をするつもりで、仕事を辞めるつもりはございません」
こっちがあっけにとられているのも意に介さず、ゆりは瞳を輝かせている。乕児はおずおずと尋ねた。
シスターフッドっていうのは・・・・・・?」
イエス・キリストのもとに集う姉妹、つまりは血縁関係をもたない女性同士の絆を指します。聖書にもございますでしょう? 聖なる力でキリストを宿したマリアが同じくヨハネを宿した遠い親戚のエリザベトを訪ねて行って、二人で姉妹のように手を取り合って危機を乗り越えようとしたのを覚えていらっしゃいますか? ああいう、無条件の助け合いや分かり合いを指すのです」
もちろん洗礼は受けたし、聖書を研究しているつもりだったが、正直なところその箇所は印象が薄かった。
「私たち、年齢は一回りは離れておりますが、シェアしてきたんです。いいことも悪いことも。私と家族になるのであれば、道先生も家族ということになります」»
(本文より)

女子教育に尽力した恵泉女学園中学・高等学校の創立者・河井道をモデルにした大河小説。
情熱あふれる道のもとには、新渡戸稲造、津田梅子、平塚らいてう、山川菊栄、広岡浅子、村岡花子、さらには野口英世まで、次から次へと当時の有名人が集った。
そんな彼女を生涯にわたって支えた、無邪気で天真爛漫なゆり。
灯りを繫いだ女性たちをいきいきと描く、痛快エンターテインメント大作。

「最初に道先生について書きたいと言った時、“一度も恋愛していないし、面白くないんじゃないか”と言う方がいたんです。でも私は、そこが逆に新しいと感じました。道先生は当時としては長生きして、女性たちと一緒に自分がやりたいことをやった人なんです。それと、調べていくと、乕児さんの名付け親の篤姫にたどり着くんですよね。篤姫は大奥の3000人の女性たちの身の振り方を考えて尽力した人。そこから女性たちの活動の流れが始まっているんだなと感じました」
柚木麻子さん特別インタビューより▶▶▶https://shosetsu-maru.com/interviews/quilala_interview/asakoyuzuki_rantan

【著者プロフィール】
柚木麻子(ゆずき・あさこ)
1981年東京都生まれ。立教大学卒業後、2008年にオール讀物新人賞を受賞。10年『終点のあの子』でデビュー。15年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞受賞、16年同作で高校生直木賞受賞。近著に『BUTTER』『さらさら流る』『マジカルグランマ』など。本作に登場する恵泉女学園は、著者の母校でもある。

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