台湾では馬英九政権が打ち出した大陸とのサービス貿易協定に反対する学生らが18日、立法院(国会)に突入し、議場などの占拠を始めた。占拠は4月1日現在も続いている。多くの学生が「生活」しはじめたため、議場内は大量のごみが乱雑に散らばる状態なった。批判の声も出たが、学生らはさまざまな工夫をすることで、状況の改善に努めている。3月30日に総統府周辺で主催者発表で50万人が集まった大規模抗議デモでは、「清掃部隊」を配置した。デモ解散後に現場に入った清掃員も「感激」するほど、ごみがきちんとかたづけられていたという。

 学生らに占拠された国会の議場内はすぐさま「ごみだらけ」になった。学生は国会側の清掃員を内部に招いて作業を依頼するなどした。すると「自分のことを自分でできない」などといった非難の声が出た。学生は議場内部のごみ収集場所を定めて、清潔の維持に努めることになった。「清掃隊」を組織して、場内の清掃も実施した。

 それでもごみの分別などで問題が発生。学生はごみ箱の上に「もしもだ、あんたがこのゴミ箱に箸を捨てたら、次の1秒に史上最凶の物を、あんたの鼻の穴に突っ込むからな」との貼り紙を貼りつけた。

 同表示については、「あまりにもひどい」との批判が出た。学生側は「とにかく、目立つようにしなければ」と釈明したが、しばらくして「社会運動をしている若者は、ごみをきちんとと分別するよね」と赤いハートマークを添えた表示に変えた。

 立法院周辺住民からは「夜になっても騒ぐ。うるさすぎる」との苦情が出た。学生側代表は「午後10時から午前8時までは拡声器使用を禁止」、「拡声器の音量は40デシベル以下」、「住宅区には入らない。住宅区の前にはすわり込まない」などの規則を定め、参加者に改めて「平和的、理性的に訴えよう。住民に迷惑をかけてはならない」と呼びかけた。

 学生側は、騒音などについての自主規則を住民側に書面で約束。抗議運動参加者に規則を順守させるために「監視隊」を巡回させはじめた。

 サービス貿易協定への反対運動が特に評価されたのは3月30日に総統府周辺地域で実施した「大抗議デモ」だった。同日、集まった人数は主催者発表50万人、警察発表では11万6000人で、メディアの多くは25万-35万との見方を示した。

 同デモの終了予定時間は午後8時だった。学生側代表が午後7時半ごろに登壇し、政府に対する要求を改めて表明。全員でスローガンを叫び、ほぼ予定時間に散会した。台北市長は抗議活動終了後に「道路がすみやかに使用できるようにしてほしい」と訴えていたが、周辺地域を埋め尽くした人は、20分後にはほとんどが撤収した。

 一方で学生側の「清掃部隊」が活動を開始。作業終了後、道路にはごみひとつ、残っていなかった。参加者の多くは自発的にビニール袋などを持参してごみを持ち帰ったが、現場に残されたごみも多かった。学生らは残されたごみを一定の場所にまとめた。すべて完璧に分類されていたという。

 総統府周辺地域の清掃員を18年間務めているという男性の陳さんは、「多くの人が集まるのでこのところ、仕事量がいつもの倍になっている。しかし学生らは、こちらが特に要求していないのに、ごみをきちんと分類している。感動的だ」と述べた。

 陳さんは、3月30日のデモについても、「学生が清掃隊を繰りだし、ごみの分類もしてくれた」と説明。清掃作業員にはいつも丁寧に「ご苦労さま」と声をかけてくれるという。陳さんは「(私たちも)疲れているのは事実ですが、疲れているとは言えませんね」と述べた。

 同日のデモについては、台湾の政治の中枢部である総統府周辺のデモであっただけに、当局は学生らの動きを懸念しないわけにはいかず「総統府突入を試みた場合、実弾射撃も辞さない」と警告していた。実際には混乱は一切なかった。

 3月30日のデモについて、多くの台湾人が「史上で最もすばらしい学生運動」との賛辞を表明した。(編集担当:如月隼人)