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突然のぎっくり腰に苦しめられる人が増えているという。その背景には、コロナ禍における自粛生活と急激な冷え込みがあった。専門医に聞いた対処法--。

「このところ、いわゆる『ぎっくり腰』で診察にいらっしゃる患者さんが増えています。長引くコロナ禍と、急な冷え込みが関係していると考えられます」

こう話すのは、東京・お茶の水セルクリニックの院長で、整形外科医の寺尾友宏さんだ。

先月、東京や大阪などで出ていた時短営業の要請が解除された。また各地方で県内旅行限定の割引クーポンが発行されたことなどもあって、出歩く人が急激に増えている。

一方、先月中旬ごろから日本各地を寒波が襲った。10月22日には東京の正午の気温が、10.7度と12月中旬並みの寒さに。

こうした「寒波」と「自粛明け」が、“ぎっくり腰”急増の要因になっていると寺尾さんは言う。

「コロナ禍で運動や外出を控えて、筋肉を使う機会が減った人は少なくありません。筋肉は、使わなければ減り、硬くなってしまいます。そこに急な冷え込みがあると、血管が収縮し、血行が悪くなる。この『体が固まり、血行が悪くなっている』状態が、ぎっくり腰を招くのです」

ぎっくり腰になってしまった場合は、どう対処すればいいのだろうか。

「小さな傷、痛みのうちに発見できれば、コルセットなどをつけて防御し、2~3日安静にすれば、痛みが緩和することもあります」(寺尾さん・以下同)

寺尾さんは、診察に訪れた人にはまず前かがみになってもらい、「ズキッとした痛み」があるようなら、椎間板の傷を疑うという。

「正式診断するためにMRIを撮ることもありますが、どちらにしても治療方針はほぼ変わりません。通常は、ロキソニンボルタレンなどの経口の消炎鎮痛薬、あるいは筋弛緩薬を処方することもあります」

湿布は椎間板まで薬が届かないこともあるため、あまり出すことはしないそうだ。

「もし湿布をする場合は、冷たい感触の冷湿布か、カプサイシンなどが入った温湿布を選ぶのですが、個々の症状に、どちらが効果的であるかの見極めは難しいんです」

そのため、どうしても湿布を使いたい人には、「長時間貼り続けることを避けて、使ってみて患部がラクなほうにしてください」とアドバイスするという。

発症後は「2~3日は安静にすること」が鉄則だというが、それ以後も安静を続けると、「逆に、回復が遅くなる」という。

「本人ができる範囲で、無理のない日常生活を始めてください。傷ができているところがさらに硬くなり、傷の治りも遅くなりますので、寝たきりは禁物です」

■信号待ちの間に10秒で予防と対策

発症から1週間~10日ほどたったら、予防&基礎体力アップのために、簡単なエクササイズにトライすべきと寺尾さん。

【おなか凹ませ運動】

「まずは、座っている状態で、おなかを凹ませる動作をやってみてください。ベルトをキツく締めるイメージでこの動作をするだけで、背骨の奥の筋肉や、骨盤底筋群を使って背骨と椎間板の周りを強化できます。慣れてくれば、立ったまま、信号待ちの間にできますよ」

次に、猫のポーズもおすすめ。

【猫のポーズで上下運動】

四つんばいになって、猫がギューッと背中を持ち上げる動きで体をキープしたのち、押し下げた状態でまたキープする。

「これは背骨全体の動きをよくします。ゴムみたいに伸び縮みするイメージです」

それぞれ、10秒を1日5回ほどというのが目安だが、最初は5秒くらいでも構わないという。

最後に寺尾さんがこうアドバイスしてくれた。

「ここ1~2年、コロナで活動レベルが落ちて、体は硬く、筋肉が減る……ぎっくり腰の症状が出やすい状況が整ってしまっています。少しでもいいですから、いままで以上に体を動かしましょう。いまの活動レベルよりもアップさせることを意識してください」

真冬に向けて、今日から少しずつぎっくり腰対策を実践しよう。