4月2日、六本木ニコファーレ週刊文春niconicoのコラボが発表された。特集記事を雑誌の発売日にニコニコチャンネルの「ブロマガ」に配信するという意欲的なもの。若年層の利用が多いとされるニコニコ動画と、中高年層の読者を抱える文春という異色の組み合わせ、その目的は?

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 週刊文春としては、新たな読者の獲得はもちろんだが、ネット上に勝手にコピーされて記事が拡散されてしまっている現状に一石を投じたい、という思いもあるようだ。「雑誌不況の中、電車の中で週刊誌を読む人を見かけることがめっきり減った。スマホでソーシャルゲームをやっているような若者にも、週刊文春を突きつけたい」と西川氏は意欲を示す。

 配信はniconicoが既に展開しているブロマガを通じて行われる。ブログとメルマガの機能を備え、課金にも対応しており、ePUB形式を採用している。12年8月以来、300以上のチャンネルが開設されており、有料登録者数は13万人を超えている。

 週刊文春デジタルは、このブロマガに購読価格864円(税込)で毎週木曜日朝5時に最新記事(本紙掲載のすべての特集記事)が配信される。この金額は1冊400円という紙の雑誌に比べるとお得だという。「電車の中吊りで目にするようなタイトルの記事はほとんど読める」と西川氏。

 会見に出席した川上氏は、芥川賞直木賞の生放送や、川上氏の「ジブリ見習い日記」という連載を通じて週刊文春との交流が深まったと振り返る。そんな中「ネット上での炎上」材料を常に提供し続けている週刊文春が、まとめサイトなどで勝手に取り上げられているのは「もったいないと思っていた」という。

 すでに3年前から他誌で電子雑誌の販売は開始しているが、週刊文春では「プル型ではなくプッシュにチャレンジしたかった」と西川氏。定期購読スタイルを採用するブロマガによって、新たな読者を獲得できるのかを業界を先駆けとして試すことになる。

 週刊文春デジタルでは、テキスト記事だけでなく動画も活用する。「中吊りを見てるだけ」という番組を配信したいと川上氏。西川氏はまずは「打倒ホリエモン」(ブロマガ購読会員数が約1万人)ということで1万人の会員獲得を目指すとその鼻息は荒い。

 質疑応答の際、筆者は「書き手という属人性の強いブロマガで、週刊文春というブランドでどの程度購読を集めることができるのか?」と疑問をぶつけたが、それに対して川上氏は「たしかに属人性が強いブロマガだが、すでに雑誌的に複数の書き手が寄稿している津田大介氏のブロマガのように、その性格は変わりつつあると感じている。また、週刊文春はすでにネットでは一種のキャラクターと化しているのではないか、という実感がある」と応えた。

 今回の異色のコラボがどのようなケミストリー(化学反応)を生むのか、注目したい。

文=まつもとあつし

「週刊文春デジタル」を発表した文藝春秋・西川清史常務取締役(左)とドワンゴ・川上量生代表取締役会長