トヨタの強さ「鉄壁」
トップ3は変わらずの顔ぶれ。トヨタの強さはだれにも止められない。
【画像】社会情勢を反映【意外に伸びたロードスター/デリカD:5 どんなモデル?】 全136枚
そう感じずにいられないのが、10月の月間新車登録台数ランキング(普通車と小型車の販売データ)だ。
1位は「ヤリス」で1万566台、2位が「アクア」の7643台、3位は「カローラ」7278台、そして4位は「ルーミー」で6999台。
10月も上位はトヨタの独占である。
ただし、ご存じのように、いま半導体や新型コロナウイルス感染拡大によるアジアからのなどの部品供給不足で自動車メーカーは思うように車両を生産できていない。
そのためこのランキングの数字は市場の人気をそのまま反映しているわけではなく、オーダーを受けたうち「生産できた車両の数」ともいえる。それは頭の隅に置いておく必要があるだろう。
とはいえ、トヨタの強さは鉄壁だ。凄すぎる。
今年に入ってから4位以内にトヨタ車以外のモデルがランクインしたのは、3月と8月に日産「ノート」が4位になったのみ。
トップ3がトヨタ以外のクルマだったことはない。
ちなみにトップの「ヤリス」にはハッチバックのヤリスのほか、SUVの「ヤリス・クロス」とスポーツモデルの「GRヤリス」も含んでいる。
また3位の「カローラ」は新型のセダンとステーションワゴンに加えて従来モデルの「カローラ・アクシオ/フィールダー」とSUVの「カローラ・クロス」を含めたもの。
そう考えると、ボディ別にカウントすれば真のトップは「アクア」といえる。
ヴェゼル浮上 ホンダに勢い
そんな10月のランキングで注目すべきトピックがある。
2021年4月にフルモデルチェンジした同車は、受注好調が伝えられながらも5月が11位で以降6月:9位、7月:6位、8月:10位、9月:9位となかなかトップ5までは食い込めなかった。
その背景には「半年待ちもザラで仕様によっては1年以上待ち」と生産の事情もあるのだが、10月にはトヨタのトップ4に続く5位までランクアップした意味は大きい。
ヴェゼル人気をあらためて感じさせるではないか。
ちなみに、6位にもホンダが続いてランクイン。6237台を販売した「フリード」が入っている。
何を隠そうフリードは、今年4月から9月まえの6か月間のランキングでも9位に入った人気モデル。
現行型のデビューは2016年9月なので、すでに5年目に入ったロングセラーながらこの実績はなかなかである。
ホンダといえば主力モデルである「フィット」の不調(とはいえ10月には5403台を販売して8位に食い込んでいる)が伝えられる。
しかし、これもコンパクトカーとしてフリードとの二人三脚でユーザーを迎えていると考えれば腑に落ちるのは気のせいではないだろう。
そしてホンダのモデルで、もう1台注目すべきは「オデッセイ」。
販売台数は1860台、ランキングは25位とそれだけを見ればどうってことはないのだが、前年同月比が「2695.7%」ととんでもない数値。
これは驚かずにはいれられない。
こんなミラクルが起こった理由は2つ。
昨年10月がマイナーチェンジ直前で販売台数が極めて少なかったことの反動。そして、予定されている生産終了だ。
スバル 脅威の伸び率叩き出す
オデッセイは年内で製造を終了することが決まっている。
そのため「オデッセイが欲しい」という人たちがこぞって購入しているのである。
そのなかには「いつかオデッセイを買おうと思っていた」という人のほか「オデッセイを所有して気に入っているから、買えるうちに新車へ乗り換えておこう」という買い替えユーザーも少なくないだろう。
オデッセイは現在のところ国内向けでは最も大きなサイズのミニバンだが、販売終了は、ホンダから国内向けの大きめのミニバンが消えることを意味する(ただし時間をおいて後継モデルが登場する可能性はある)。
しかし前年同月比といえば、この10月にはもっと驚くべき数字が出た。
「6028.6%」や「5368.2%」というとんでもない記録だ。実はどちらもスバルで、前者は「BRZ」、後者は「レヴォーグ」だ。
勘のいいひとはお気づきだろう。どちらも1年前の販売台数は新型販売前で、今年10月の販売台数はフルモデルチェンジを迎えてのものだ。
BRZが1266台、レヴォーグは1181台と販売台数自体はどちらも目を見張るものではなく、単に前年同月と比べて驚異的に伸びたということに過ぎない。
とはいえ、データを見るうえで非常に興味深いものだ。
一方で、フルモデルチェンジどころかマイナーチェンジや大きな改良をしたわけではないのに前年同月比の数字が伸びている不思議なモデルもある。
マツダ「ロードスター」、三菱「デリカD:5」、日産「リーフ」、そして日産「マーチ」だ。一体何が起きたのか?
ロードスター/D:5の伸び 社会情勢反映
そのうち、前年同月比「146.6%」となる541台を販売して46位となったロードスター、そして164.8%の1480台を販売して27位となったデリカD:5は現在の社会情勢を反映しているといわれている。
それは「コロナ禍」だ。
どうしてコロナだとロードスターが売れるのか?
スポーツカーやスーパーカーの売り上げが伸びているのは世界的な傾向だ。
その背景にあるとされているのは、旅行にも行けず、外食で贅沢もできず、お金が余っている層が趣味のクルマを買い足すから。
何を隠そう、ロードスターは新型コロナウイルス感染が拡大してから、北米でも大きく売り上げを伸ばしている。
一方でデリカD:5の販売が伸びたのは、同じコロナ禍の影響でもロードスターとは少し異なる。
日本のみならず世界的に、「密」を避けての爆発的なアウトドアブームが起こっていて、「アウトドアレジャーに都合のいいクルマ」として買い替えもしくは新規購入時にデリカD:5を選ぶ人が増えていると考えられる。
たしかにSUVとミニバンの特徴を兼ね備えるデリカD:5は唯一無二の存在。
とはいえそれがコロナの影響で売り上げを伸ばすとは。
まさに「風が吹けば桶屋が儲かる」的な図式が目の前で起きているのだ。
残りの日産2台は、リーフが前年同月比138.4%で922台。マーチは121.2%で572台を販売した。
リーフはもしかすると、日本でもジワジワとEVの波が来ているのかもしれない。
しかしマーチに関しては、販売が伸びた理由はまったく見当がつかない。
しかし、ときにはそういった販売増加の理由が不明なクルマもあるのが新車販売データなのである。
こうしてチェックしてみると、新車販売データはしっかりと社会を反映しているのが面白い。
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