11月シリーズはアウェイでの2連戦。日本代表はグループ4位というポジションでこの戦いを迎えた。

9月、10月と1勝1敗で終えていた日本。10月はライバルであるサウジアラビア代表にアウェイで敗れた一方で、オーストラリア代表にはホームで勝利。崖っぷちから一歩だけ前に出た状態での11月の2試合は連勝が必須だった。

そんな中11日のベトナム代表戦は1-0で勝利。オマーン引き分けたことで3位に浮上するというオマケも付いてきた。

そして迎えたオマーン代表戦。日本は苦しい戦いを強いられたが1-0で再び勝利。見事に連勝を達成し、さらにオーストラリアが中国代表と引き分けたことで2位に浮上することに成功した。

目標としていた勝ち点6をアウェイから持ち帰ったことは大いに評価できる。窮地に立った中からの生還。もちろん残り4試合でどうなるかは分からないが、自力でW手が届くを掴める位置には戻ってきた。その点は評価すべきだろう。しかし、それでしかないということも言える2試合だった。

◆変化のないメンバー

ベトナム戦も苦しい戦いとなり、なかなか攻め手が見いだせなかった展開となり、カウンターから伊東純也が奪ったゴールのみに終わった日本。決して多くのチャンスを作ったとは言えない状況、そして難しい最終予選ながらもゴールを奪い切れない攻撃陣には心配の声が多く挙がった。

そして迎えたオマーン戦。10月のオーストラリア戦から採用している[4-3-3]を継続して採用したが、この日のスタメンを見て様々な感想を持ったはずだ。

勝ち点3が必要だった状況とは言え、堅く戦った上に良い戦いとは言えなかったベトナム戦。そこからメンバーを入れ替えたのは、出場停止で出ることができなかったMF守田英正(サンタクララ)のみ。そして代わりに投入したのはMF柴崎岳(レガネス)だった。

オーストラリア戦から3試合、先発でピッチに立った選手はのべ33名いるわけだが、実際には13名。11月シリーズは前述の柴崎と、ケガが回復しなかったDF酒井宏樹(浦和レッズ)の代わりに2試合フル出場したDF山根視来(川崎フロンターレ)が加わっただけだった。

これまでの戦いがベストなパフォーマンスであれば、何も声はあがらなかったはずだ。しかし、ベトナム戦を見ても攻撃陣は不発。そして、結果的にオマーン戦も我慢の戦いとなった前半戦は、攻撃面で全く良いところがないまま終わっていた。

結果として最も重要な2連勝を達成したからよかったものの、本来日本が目指すべきはそこではないはず。自ら首を絞める戦いを見せてきたツケを払っているわけだが、懸念されていた通りの前半となったことは言い訳できない。

そして試合の流れを変えたのは、後半から出場したMF三笘薫(ロイヤルユニオン・サン=ジロワーズ)であり、DF中山雄太(ズヴォレ)であり、FW古橋亨梧(セルティック)だった。

通常の試合とは全く違うプレッシャーを感じる最終予選だから、経験を重んじるという考えは理解できるが、経験を重んじすぎることは正解ではないはずだ。それでは、未来が全くなくなってしまう。

◆目標はW杯出場ではない


試合後、森保一監督はメディアの取材でメンバーについてコメント。「今後に関しては選手が経験を積んでこのアジア最終予選の中でも存在感を発揮している選手たちが何人もいるので、ポジション争いのところはニュートラルに見て決めていきたいと思います」と語っている。

言葉尻を取るというわけではないが、この発言から見ても、経験のない選手たちを信頼しきれなかったということだろう。W杯出場に向けて勝たなければいけない最終予選の試合で、日本代表デビューを果たしながらも一発目のプレーでギアを入れ替えさせた三笘の気概を信じられなかったとうことだ。途中出場ながらも試合の流れを読んで振る舞いを変えられる中山も信頼はできていなかった。随所にポストプレーで強さを見せる大迫だったが、3トップのセンターという役割からは程遠いパフォーマンスに終わり、相手守備陣を撹乱させる古橋もスタメンでは使えなかった。

それぞれの選手の自チームでの活躍は明白。これまでも選手選考の際には自チームでの活躍を挙げていながら、実際の最終予選のピッチには自信をもって送り込めていないのが現状だ。

もちろん準備の期間が短く、コンビネーション等を考えればこれまで招集が続いている選手を起用した方が良いだろう。慣れ親しんだメンバーで突き詰める方が時間はかからないことも理解できる。しかし、それで状況が打破できていないという現実も存在していた。

前述の発言から見えることといえば、2位というポジションに戻れたことも大きく影響していそうだ。とにかく勝ち点3しか見えていなかった戦いから、勝利を目指しながらもチームとしての発展を目指す戦いができる状況になったのであれば、来年の戦いはしっかりと選手の状態を見極めて起用してもらいたいところだ。

◆試合に関われなかった国内組の東京五輪世代


そして森保監督は2試合続けてメンバー外になったFW前田大然(横浜F・マリノス)や、FW上田綺世(鹿島アントラーズ)、DF旗手怜央(川崎フロンターレ)についても言及した。

「そういった意味では単純にアクシデントや想定外のことが起きたことによる入れ替えという部分で、単なるサポートとして呼んだ意図はありません」

あくまでも戦力として呼んだ上で、試合に臨むメンバーからは外れたと説明した。もちろん、代表チームでの活動時間が短いため、和を重んじ、連携・連動を重んじる森保監督ならではの判断だろう。ただ、攻撃陣が不発の中で特徴を持っている選手たちがメンバー外になったことは、やはり大きな話題となった。

森保監督は「我々がこれまで作ってきたチーム作りの中での序列ということも加わって、一緒に活動してもらった中、短い練習の時間しかないですが、やはり序列を崩してもらうという部分では、新しく加わってもらった選手たちのプレーは見せてもらいました」とコメント。「今回出場できなかった選手たちには悔しい気持ちしかなかったかもしれませんが、私自身は代表活動で試合に出れる選手、ベンチに入れる選手、サポートに回る選手を含め、たとえ試合に出られても出られなくても、この経験があって必ず成長に繋がると、自分の中で確信して招集させてもらっています」と語り、更なる努力が必要であるということだ。

試合に絡めなかった中で、この3選手が何を感じ、どう成長に繋げるのか。シーズンは残り少ないが、この3人の変化が見られれば、ホームで戦う1月の戦いでは起用される可能性もあるだろう。ただ、それも全て成長あってこそ。ポテンシャルがあることは事実であり、それを大きく伸ばすために彼らが何をどう選択して成長するかは、今回の三笘のように起爆剤になり得る可能性を秘めているだけに、大きく期待せざるを得ない。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》

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