道路脇に椅子を置いて座り込み、カウンターをカチカチ鳴らしている人を見掛けたことはないでしょうか。車が通るたびにカウンターを押す「道路交通量調査」の調査員ですが、その調査員が本年度から、国の調査では姿を消したようです。なぜでしょうか。またそもそも、何のためにカウンターをカチカチしているのでしょうか。国土交通省の担当者に聞きました。

AI観測など機械観測を全面導入

Q.道路交通量調査の目的など、概要を教えてください。

担当者「道路交通量調査の調査員廃止については、本年度秋季に実施している『全国道路街路交通情勢調査 一般交通量調査』(以下、『本調査』)における交通量調査に関するものです。よって、これ以降の回答はすべて、『本調査』に関する事項としてお答えいたします。

本調査については、日本全国の道路と道路交通の実態を把握し、道路の計画、建設、管理などについての基礎資料を得ることを目的として、1928年から、おおむね5年ごとに実施してきました。極めて簡単にいうと、例えば、『この道路は交通量が増えているから、車線を増やせるように拡幅を検討しよう』といった議論をする際の基礎資料になるということです。

調査対象は国道と都道府県道の全路線、および、政令指定都市の市道の一部です。調査実施時期は9~11月の秋季を基本としています」

Q.1928年開始ということは、戦時中や震災後も調査が行われたのでしょうか。

担当者「戦時中の調査は実施していませんが、震災後については、例えば、2011年の東日本大震災後の2015年にも本調査を実施しました」

Q.どれくらいの規模で調べているのでしょうか。調査員の人数は。

担当者「本調査で実施する交通量調査の調査区間は全部で約4万4000区間あります。調査員の数は区間ごとに車線数や交通量等に応じて異なっているため、正確には分かりませんが、元々はこの調査区間数以上、つまり、万単位の調査員が交通量を測っていたものと思います」

Q.本年度から、国交省では人手による調査をやめたとのことですが、その理由と代替策を教えてください。

担当者「日々進化するICT技術を活用し、業務の効率化・高度化を図ることが求められています。交通調査の分野においても、ICT技術を活用した常時観測体制を構築することを目指しており、社会情勢の変化に対応すべく、国が調査する約7600区間については本年度調査から、全面的にAI(人工知能)観測などの機械観測を全面導入することにしました。

国道にある保守管理用の監視カメラの映像を解析して、車などの台数を数えるとともに、センサーで通過車両を自動計測する『トラフィックカウンター』も活用します。AI観測が普及することで、5年に1回の大規模な本調査のときだけでなく、交通量を常時観測できる体制が構築でき、タイムリーにきめ細やかな道路交通対策が実施できるようになります」

Q.今回の廃止は国道のみでしょうか。都道府県道での人手調査の状況を教えてください。

担当者「本調査における機械観測の全面導入は、国土交通省が管理を行っている直轄国道のみとなります。都道府県の管理している道路の状況については、現在、実際に本調査を行っている段階であり、人手観測の調査の状況については把握していません」

Q.交通量調査は将来的に、どのようになる見込みでしょうか。

担当者「本調査については、全国的な統計データとして、引き続き、5年に1度実施します。一方、AI観測などの機械観測を普及させることで、常時観測できる範囲を拡大できればと考えています」

オトナンサー編集部

「カウンターをカチカチ」がなくなる?