2021年10月31日に投開票された第49回衆議院議員選挙は、野党第一党である立憲民主党が野党一本化を進めて臨みました。しかし、思うような結果を残せず、改選前から議席を減らしています。

立憲代表選
コロナ禍での代表選は11月30日の臨時党大会で投開票されて新代表が選出される見通し
 立憲民主党を率いてきた枝野幸男代表は、衆院選の結果を受けて辞任。新たな顔となる代表を決める選挙が、11月19日に告示されました。代表選に立候補したのは、逢坂誠二議員小川淳也議員泉健太議員西村智奈美議員(届出順)の4候補です。代表選は30日の臨時党大会で投開票され、選出される予定です。

 本記事では、首相官邸や政界の取材歴が10年超のフリーランスカメラマン小川裕夫(@ogawahiro)が、立憲民主党の代表選を解説します。

今回の代表選は接戦になる見込み

 先の衆院選により、立憲民主党に所属する国会議員衆議院96名、参議院44名の140名になっています立憲民主党代表選に立候補するには、現職の国会議員20名以上の推薦人を集めなければなりません。今回の代表選に4名が立候補したことを踏まえると、早くも代表選が接戦になっていることが窺えます。

 今回の代表選は、これまで築いてきた立憲民主党カラーを刷新することが求められているといわれます。2009年に誕生した民主党政権は、党内のゴタゴタもあって2012年には政権を奪還されました。以降、民主党は党勢を回復する策を模索。一部の議員が民主党から離れ、再び合流するといったことを繰り返しています。

 そうした混乱も、支持者の民主党離れを加速させました。民主党政権の中枢にいた議員が多くを占める立憲民主党にも同様の不信感が長らくつきまとっていました

代表を担う議員に必要な要素は

立憲代表選
共同記者会見は、予定の終了時刻を過ぎても記者からの質問が絶えなかった
 立憲民主党衆院選で議席を減らしましたが、来夏には参議院選が迫っています。それだけに、ここで一致団結しなければ党勢回復は見込めません

 今回、代表選に出馬した4議員は全員が衆議院議員です。旧民主党色を感じさせないフレッシュな顔を選ぼうとする意図が見えますが、代表という重責を担う議員は、それなりの期数、つまり議員経験数がなければ務まりません。国民的な人気の高い議員でも、それは一過性かもしれないからです

 議員を長く務めれば、順風のときだけではなく必ず逆風も経験します。また、自分のミスでなくても同じ党の議員が不祥事を起こせば、代表は責任を問われます。期数を重ねた議員は、そうした苦渋・辛酸を経験しています。それだけに、逆境を跳ねのける力があります。つまり安定感と表現できる力です。

新たな立憲民主党のイメージを生み出せるか

立憲代表選
逢坂誠二候補は、ニセコ町長の経験もあるので地方の問題にも精通
 立候補した4候補の経歴を見てみましょう。62歳で最高齢の逢坂候補が5期、小川候補が6期、47歳で最年少候補の泉候補が8期、西村候補が6期です。

 経歴から、中堅クラスの議員が立候補して代表の座を争っていることが窺えます。中堅クラスといっても、4候補とも旧民主党政権で副大臣や政務官を務めた経験があります。そのため、旧民主党カラーを完全に刷新しているとまでは言えないでしょう。

 当選したばかりの新人議員に、党の代表を任せるわけにはいきません。だから、ある程度の議員経験を求められることは仕方がないのかもしれません。旧民主党で多少の実績がある4候補ですが、これまでに前面に立って党や政権を引っ張ってきた議員ではありません

 そうした事情から、新たな立憲民主党イメージを生み出せるのではないか? という期待が寄せられていることも事実です。

“開かれた会見”には多くの記者の姿が

 とはいえ、代表選の話題が埋没してしまうのではないか? といった危惧もありました。9月に実施された自民党総裁選は、実質的に次の首相を決める選挙でした。そのため、国民的な関心が高まりました。

 一方、野党第一党ながらも衆院選で議席を減らした立憲民主党からは熱気や関心が薄れていました。そうした事情もあり、11月19日の共同記者会見を取材に来る記者は少ないのではないか? 盛り上がりに欠けるのではないか?と考えられていたのです。

 自民党総裁選記者会見コロナ対応を理由に平河クラブ自由民主党の記者クラブ)の記者のみの参加に制限したのに対して、立憲民主党の代表選は記者クラブのみならず雑誌・インターネットフリーランスの記者も参加できる、開かれた会見になりました

 そうした理由も重なり、4候補による論戦を間近に取材しようとする記者が多く現場へと駆けつけました立憲民主党代表選の共同記者会見は予定時間を延長するほどの盛り上がりを見せました。集まった記者の関心事は、来夏の参院選です。新代表は2022参院選を戦う顔にもなりますが、野党候補の一本化を進めるのか? それとも方針転換するのか? そこに注目が集まりました。

4候補とも野党共闘については前向き

立憲代表選
泉健太候補は、候補者のなかで最年少ながら当選回数は最多
 立憲民主党の支持者の間でも、野党共闘についての評価は分かれています。野党候補を一本化したことにより、小選挙区で接戦を制した候補者がいたことは事実です。その一方で、比例票は伸びを欠きました。
 
 それを、どう判断するのか……程度の差はありますが、4候補ともに基本的に一人区は野党一本化に前向きな意思を示しています。ただ、4候補ともに地域の個別な事情を見ていくことにも言及。一本化に伴うメリットデメリットを考慮しているようです

 野党一本化で、特に焦点になりそうなのが京都府選挙区です。京都選挙区は2人区のため一本化調整をしない可能性は高いのですが、改選を迎える福山哲郎議員は2017年民進党希望の党へと合流する騒動の際に枝野幸男議員とともに立憲民主党を立ち上げた、いわば創立者でもあります。

政策には大きな相違点は見られず

 福山議員は、先の衆議院選挙でも立憲民主党の幹事長として全国を飛び回りました。すでに当選4回という重鎮であり、出馬させないという選択肢は考えられません。

 他方、前回の2019参院選では共産党の倉林明子議員が立憲民主党の候補者に競り勝って議席を獲得。京都は従来から共産党が強い地域です。前回の参院選で議席を獲得した勢いに乗って、今回も共産党が候補者を立てたいと考えることは不自然な話ではありません。

 そうした政局的な話も重要ですが、もっと肝心なことは4候補者が掲げる政策です。実は、4候補者が掲げる政策は濃淡あるものの大きな相違点は見られません。経済政策・外交・安全保障などの基本的な方向性は変わりません。しかし、どの政策を優先的に取り組むのか? どの政策を特に重点的と考えているのか? などで党の方針は異なってきます。

各候補は何に対して力を入れるのか

 逢坂候補は、人への投資を最重要政策として訴えています。人への投資とは、つまり教育に力を入れることです。教育に力を入れても、成果はすぐに現れません。それは逢坂候補も口にしていますが、教育を受ける選択肢を増やすことが将来的な成長につながる重要な政策であり、教育への投資が結果的に経済への牽引力にもつながっていくとしています

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小川淳也候補は、ドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」で話題
 小川候補は、リベラルの立ち位置を守るとして国家主義・権威主義に陥らないことを掲げています。そのうえで、政治を古い昭和モデルから新しい時代に適したものへとアップデートする必要性を強調。その鍵となるのは政治家への信頼・信用であるとし、支持を取り戻すための政策課題に取り組む意気込みを語ります。

 泉候補は、普通の安心が得られる社会を掲げ、医療・介護・教育・保育といったベーシックサービスの体制づくりや拡充に力を入れると宣言。泉候補は国民民主党に属していましたが、2020年立憲民主党国民民主党が合流したのを機に新・立憲民主党に属しました。新・立憲民主党が発足した際の代表選にも出馬した過去があり、そうした意味でも他候補より熟練な面もありそうです。

立憲民主党代表は11月30日に

立憲代表選
西村智奈美候補は、実家が米農家のため第一次産業への取り組みにも積極的
 西村候補は国際NGO活動に従事していた経験から、内と外から社会を見つめつづけてきたことを強調コロナで疲弊した社会を克服する力として、地方の力・女性の力・草の根の力の3つが重要だとしています。また、多様な声を反映させることの必要性も掲げています。

 立憲民主党は強い逆風下にあるので、代表に意欲を示す議員はいないのではないか? 仮に代表選に出馬する議員がいても、その数は少ないのではないか? との事前報道もありました。フタを開けてみれば、幅広い立候補者が出揃いました。それだけに1回目の投票で過半数を獲得する候補者が出ないことは十分に予想されます。その場合、上位2候補による決選投票になります。

 いずれにしても、今月30日には新しい代表が決ります。誰が代表に就任しても、党勢の立て直しから始まります。それは決して容易な作業ではありません。

<取材・文・撮影/小川裕夫>

【小川裕夫】

フリーランスライターカメラマン1977年静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。首相官邸で実施される首相会見にはフリーランスで唯一のカメラマンとしても参加し、官邸への出入りは10年超。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)などがある Twitter:@ogawahiro

コロナ禍での代表選は11月30日の臨時党大会で投開票されて新代表が選出される見通し