六本木、麻布、青山など、お金持ちエリアで知られる港区。港区で配達経験のあるデリバリードライバーに話を聞くと、その暮らしぶりに多くのカルチャーショックを受けたといいます。

六本木
画像はイメージです(以下同じ)

港区は個人経営店からの注文が多い

 港区住民の懐事情は、こんな調査にも表れていました。カード会社クレディセゾンの2020年消費動向調査によると、フードデリバリーの1人あたりの使用金額が東京23区のなかで最も多かったのが、港区でした。

 平均値は月48回で、1か月の支払い額は約12万円。1日1回以上利用し、1日あたり約4000円を支払った計算になります。

 ドライバー歴2年の及川章介さん(仮名・25歳)メインの地域は板橋区ですが、気分転換に別のエリアにも足を運び、23区全体で配達経験を積んできました。

単身ではなく家族単位で注文する余裕

及川章介さん
及川章介さん
「ほかのエリアは3分の1くらいはチェーン店が占めているんですが、港区は高級路線の個人経営の飲食店からの注文が圧倒的に多いサラダ専門店とか、オーストレストラン、クラウドキッチンなど、庶民からするとサラダ1000円!?って思っちゃいますね(笑)。高級店は容器の質もよくて、こぼれなくて頑丈。包装紙にメッセージが書いてあったり、気遣いを感じます。

 デリバリーを注文する人は単身世帯で平均単価10002000円ですが、港区は家族連れの注文が目立ちます。いいお店で家族4人分を注文したら、合計1万円とかざらにあるんで、桁が違います。1万円もする厚切りステーキ外国人の家族が注文していて、いかにも富裕層だなって思いましたね。

 それと、港区ってオフィスも多いので、昼過ぎや残業時間といったオフピークでも1時間に2件は注文が入っていました。3時ごろにタピオカを頼む人も。おやつもペロッと注文できるような余裕を感じます」

牛丼1杯で1000円に

すき家 牛丼

 印象に残っている注文は、意外にも牛丼の注文だったという。

シンプルに、すき屋の牛丼並だけの注文があったんです。港区の人も庶民的なものを食べたいときがあるんだなぁと意外な一面でした。そのときは高級店のいい料理ばかりを運ぶプレッシャーから解放されて、なぜかありがたい気持ちになりました(笑)

 ただ、ほかの牛丼の配達と違ったのが配達距離。配達距離が長いと送料も上がるので、普段の牛丼の注文だと1キロ以内の距離に収まるんですが、その注文は1.8キロも先でした。配送料を合わせると1000円近くになっていて、やっぱり港区の人は配送料なんて気にしていないんですよね

垣間見える港区民の人柄

 ウーバーイーツには、利用者がドライバープラスアルファでお金を払うチップ制度がある。このチップがもらえる確率が全然違うことにも驚いたとか。

チップはだいたい100円から500円の間。運がよかったら10002000円もあると聞きます。外国人のお客さんにあたることが多いので、そのチップ文化の違いなのかもしれません。1日最低1件はもらいました。

 メインで配達してる板橋区ではまずそんなことないです。ドライバーからすると、港区の配達はそれが一番の魅力かもしれないです」

既読スルーが当たり前のチャットが港区では…

 ほかにも、港区ではメッセージのやりとりでも差を感じたといいます。

「お客様に届けるときに、チャットで『これから向かいます』とメッセージを送るんですが、普段は既読スルーされることばかりなのに、港区は『ありがとうございます』『Thank you』と返信が来ることが多かっですね。誰に対しても平等に親切に接するのが金持ちになる共通点なのかなって思いました

 では、商品を受け取るときの格好もきちんとしていたりするのでしょうか?

「服装は普通でしたね。もろ寝巻きの人も全然います。着飾ったりはしてなかったです」

港区の高級マンションは超厳重

タワマン エントランス

 慣れない厳重なセキュリティに、こんな失敗をしたこともあったそうです。

「はじめは勝手がわからないくて、警備員に怒られたことがありました。受付のコンシェルジュが不在にしていたときに、いいやと思って住民の後ろをつけてオートロックの中に入ったんですよ。

 だけど、目的の部屋番号がない。館内図を見たら届け先は別の棟で、急いでエントランスに戻ろうと思ったら、オートロックの扉が開かず出られなくなってしまい、焦りました。棟やブースごとにオートロックの玄関が分かれているなんて、そのとき知りましたよ。

 それに、たいていのマンションは受付で記帳して、『はい、どうぞ』とすぐ入館できるんですが、港区の高級マンションはコンシェルジュにアプリの画面を見せて、本当にデリバリーで来ているのか証拠を示さなくてはならないことも多い

 もちろんセキュリティのためでもあると思うんですけど、マンションの敷地が広いので、場所を案内するためでもあるのかなと。特に、アメリカの大使館に配達した時は、受付が電話でお客様に確認していて、かなり厳重でした」

ドライバーも身分相応?

ウーバーイーツ
写真/Shutterstock
 ドライバーにとって港区は稼げるエリアではありますが、特有の苦労もあるとか。

「港区って、坂道がものすごく多いんですよね。それに道路で走っている車が外車や高級車が多くて、余計神経を使いますよ。特に六本木周辺のけやき坂は、店も並んでるし、周辺のタワーマンションからの注文が多くて、何度も登りました。

 だからドライバー自転車でも電動サイクルを使っていることがほとんどで、いい自転車を使ってますよ。地域によってはママチャリドライバーもいますけど、港区はまずいないです。あとタワマンには、業者用の駐輪場が用意されていることが多いので、バイクを使っているドライバーも結構いますね。駐禁を切られるリスクないのでありがたいみたいです」

 住むにはハードルが高い港区。ドライバーになるのも例外ではないのかもしれない。

<取材・文/ツマミ具依>

【ツマミ具依】

企画や体験レポートを好むフリーライター。週1で歌舞伎町のバーに在籍。Twitter:@tsumami_gui_

及川章介さん