台湾立法院(国会)の王金平院長(議長)は6日、大陸とのサービス貿易協定成立に反対して立法院議場の占拠を続ける学生らに向け、大陸との協定を監督する法律が成立する前に、サービス貿易協定に関連する党団会議を開催しないと述べた。所属する国民党の方針とは異り、党内では「事前に知らされていなかった」と驚き、困惑する声が出た。王院長は国民党の「大物政治家」だが、馬英九総統(党主席)とは厳しく対立している。

 王院長は6日、学生らが占拠する立法院議場に足を運び、「協定監督の法律」が成立するまでは党団(党議員団)会議を開催しないと述べた。国民党として協定成立への動きを止めるとの発言だ。王院長は同時に「自分の持ち場(学校、大学)に戻ってほしい」と呼びかけた。

 国民党サービス貿易協定を巡る激しい反発を受け、「大陸との協定を監督する法成立に動く」などと、反対派の意見を一部取り入れる動きを見せていたが、「サービス貿易協定成立への審議と監督法の審議を同時進行する」としている。学生側は納得せず、議場の占拠を続けている。

 王院長による「先に監督法、その後で協定審議」の発言で、国民党に衝撃が走った。国民党政策会の林鴻池執行長は、王院長の発言について「国民党団は事前に知らされていなかった。ぎょっとした」と述べた。

 国民党は同日夜、党として「協定監督法の審議とサービス貿易協定の審議を同時進行の立場は不変」と発表した。

 馬英九総統に、立法院議場を占拠した学生との対話を求める声は多い。馬総統はいったん学生らと対話する姿勢を示したが、学生側が求めた「公開討論」に難色を示したことなどで、実現していない。

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◆解説◆

 金平立法院院長は1941年に高雄州(現在の高雄市)で生まれた。1975年から立法院選挙で連続当選している。99年に立法院院長、2000年には国民党副主席に就任した。

 民進党からの政権奪回などのため、馬英九主席とは多くの選挙を「二人三脚」で戦ってきた。しかし2013年9月には、馬英九主席が王院長に「検察への介入があった」として辞任を求め、王院長の党籍を抹消した。王院長は日本の「比例代表」に似た「選挙区なし」の議員であり、党籍を抹消されると議員の地位を失う。

 王院長は、民進党議員が被告になっていた裁判で、検察側に「無罪判決が出た場合、上告しないよう」求めた。台湾では民進党関係者が絡む裁判で、検察が執拗に上告を繰り返す場合が多いことに対して「政治的意図がある」との批判がある。

 王院長は検察への要請について「検察の職権乱用を食い止めるため」と主張。同件が明らかになったきっかけが最高検察署による「電話盗聴」だったことを取り上げ、「電話盗聴も正規の手続きを経ていない。やはり職権乱用」と批判した。

 王院長は、党籍抹消を不当として訴訟を起こした。裁判所はまず、王院長側が求めていた身分保全の仮処分を認めた。そのため、王院長は議員の地位を失うこともなく、院長としての活動も継続することができた。裁判所は2014年3月19日、王院長の言い分を全面的に認め、「国民党の党籍は存在している」との判決を言い渡した。

 馬総統との対立の最大の原因は、王院長が対立する最大野党の民進党の意向もできるかぎり汲み取る議会運営を行ったため、重要法案が通らないなどで馬総統がいらだったこととみられている。

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 学生らがサービス貿易協定に強く反発したのは、馬英九総統に対しての「またか」という怒りと失望があったと考えられる。

 馬英九政権は、台湾で大きな関心を集めている核四(第4原子力発電所)の建設について2013年2月、国民投票を行うと発表し、実施時期を13年8月とする考えを明らかにしたにもかかわらず、現在(14年4月7日)になっても実施していない。

 原発反対運動でも大規模なデモが発生。反対派からは「最初は原発反対だったが、今は反馬英九になった」との声がでた。「民意をないがしろにし、その場をつくろって逃れようとする」との批判だ。

 大陸とのサービス貿易協定でも、「条項ごとに徹底審議」と説明したが、3月17日に審議を打ち切って成立を宣言したため、学生らが猛反発。国会に突入し、占拠を続ける事態になった。同協定に対する反対だけでなく、政局運営の手腕そのものに「怒りが爆発」したと考えてよい。

 李登輝元総統はかつて、民主化を求める学生と直接対話し、問題を解決に導いた。李登輝元総統は今回の問題について何度か取材を受けており、涙を流して「馬総統は学生と対話すべきだ。あれでは学生がかわいそうだ」などと述べた。

 李元総統は90年代に自らが進めた民主化を「すでに限界」と述べ、最近では「第2次民主改革」の必要性を説いている。4日にも同問題についての講演会で登壇し、91歳という高齢にもかかわらず、約1時間半にわたり熱弁をふるった。

 台湾ではサービス貿易協定などがきっかけで、国民党内及び政界に「激震」が走る可能性も出てきた。(編集担当:如月隼人)