今はオシャレのひとつとして20代の男子たちも生やしている人が多いヒゲ。しかし、企業の中には社外の人間と接する機会の多い営業担当者を中心にヒゲを禁止にしている会社も少なくありません。

シェーバー ひげ
画像はイメージです(以下同じ)
 もちろん、社則などに明記されていなかったとしても「営業マンはヒゲNG」という暗黙のルールが存在するといった話も聞きます。

3年間ドバイ支社で駐在員をしていた

 専門商社に勤める稲田剛典さん(仮名・30歳)は、25歳から約3年間、アラブ首長国連邦UAE)のドバイ支社で駐在員として勤務。同国や近隣諸国での商談・折衝などを担当していたといいます。

「といっても経験の浅い若造でしたから、上司のサポート役と言えば聞こえはいいですが、要は雑用ですね(笑)。けど、途中から代わりに取引先との打ち合わせを私に任せてくれることもあり、すごく良い経験になりました」

 そんな彼は両親ともに日本人でしたが濃い系の顔立ちで、以前から外国人ハーフに間違われることもしばしば。それは赴任先の上司も感じていたようで、ある日、「ヒゲを生やしたら似合いそうだな」って言われたといいます。

上司の一言をきっかけにヒゲを生やすことに

中東

「ドバイをはじめ、大半がイスラム教徒のアラブ諸国の成人男性は、基本的にみんなヒゲを生やしています。実際、こちらがヒゲ面だと相手も親近感が湧くみたいで、そのために伸ばす駐在員も少ないんです

 私は毎日剃っていましたが、もともとヒゲはかなり濃いタイプ。それで相手の印象が少しでも良くなればと思い、上司の何気ない一言を試してみることにしたんです」

 すると、これが取引先のアラブ男子たちから大好評。ますます外国人っぽい雰囲気になり、「本当に日本人?」と尋ねられることが何度もあったそうです。

打ち合わせや交渉でプラスの効果が

中東 ヒゲ

「さすがにヒゲのあるなしでビジネスに対する直接的な影響はなかったとはいえ、打ち合わせや交渉の場が和やかになることが多かったですね。おかげで変な緊張感もなく、『話が早くまとまった』と上司に褒められたこともありました」

 ちなみに稲田さんの会社では、外の人間と接する機会の多い営業担当は原則としてヒゲはNG。ただし、海外駐在員に関しては、現地の文化・風習などに応じて個々の判断に委ねられていました。

 でも、駐在経験のある社員でもイスラム圏に赴任したことがなければ、このルールを知らない人が多かったそうです。

出張で来た本社の課長には注意され…

 そんな中、日本から出張でドバイに訪れた本社の課長を空港まで迎えに行った際、ちょっとしたトラブルが発生。空港から現地オフィスまで移動する車内で、ヒゲを生やしていたことについて注意を受けてしまいます。

「激怒されたわけじゃないですが『君もルールは知っているよな? 会社の看板を汚さないように身だしなみにはもう少し気を使いなさい』といった感じで懇々と諭されてしまいました。事情を説明しようとも思いましたが、言い訳だと受け取られそうで。結局謝ることしかできませんでした(苦笑)」

 現地オフィスに到着後もその課長は、稲田さんの上司に対して彼のヒゲについて指摘。ここで上司から説明があり、ようやく誤解が解けたといいます。

本社勤務に戻り、今はこの課長が直属の上司に

職場 仕事

「課長からはお詫びの言葉をもらいましたが、『最初に話してくれたらいいのに』って。上司も『災難だったね』と笑っているし、本当にひどかったんですから。まあ、自分の立場じゃ本社のお偉いさんに何も言えませんよ、って反論したら納得されましたけどね(笑)

 それでもこの課長にはすごく気にかけてもらえるようになり、帰国した際は飲みに連れて行ってくれるようになったとか。しかも、本社勤務に戻った現在は直属の上司というから驚きです。

「ドバイ赴任中の上司もすごくいい人でしたけど、この課長とも今の関係はすこぶる良好です。ただ、ほかの同僚にこのエピソードをベラベラ喋るのはいい加減勘弁してもらいたいかも(苦笑)」

 最初の出会いは決していいものではありませんでしたが、かえってそれがいい関係を築くことができたのかもしれないですね。

TEXT/トシタカマサ イラストカツオ(@TAMATAMA_GOLDEN)>

-[身だしなみにまつわる喜怒哀楽]-

【トシタカマサ】

ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中