エアバス社の工場間で、パーツ輸送のために飛び交う異形貨物機「ベルーガ XL」。通常の旅客機ベースの貨物機と違い、外からは客室ドアが見あたりません。どこにあるのでしょうか。

エアバスA330をベースに設計されているものの…

ヨーロッパの航空機メーカー、エアバス社があるフランス・トゥールーズなどでは、ユニークな形をした大型輸送機ベルーガ XL」を見ることができます。この機は欧州各地にあるエアバス社の工場で作られたパーツを空輸するために作られました。そのため、胴体の上部がコブのように大きく盛り上がり、まるごと貨物スペースとなっているのが最大の特徴です。

ベルーガ XL」は双発旅客機エアバスA330をベースに設計されています。ただ、通常の旅客機から派生した貨物機「フレイター」とは異なり、特殊な用途ゆえに特別仕様の改修が施されており、A330の面影はほどんど残っていません。

大きく変わっているところのひとつが乗降口です。一般的な「フレイター」では胴体最前方の客室ドアなどをそのまま残し、そこからパイロットが乗り降りします。対して「ベルーガ XL」は、巨大な貨物ドアこそあれど、客室ドアがないのです。どこから乗り降りするのでしょうか。

まさかのところに乗降口がある理由

ベルーガ XL」の乗降口は、実は胴体の下部に存在します。前脚の少し後ろあたりにハッチがあり、そこからハシゴが出ています。パイロットなどはここから乗り込みコクピットに向かうのだそうです。

ちなみに「ベルーガ XL」のコクピットも特別な設計変更がされており、通常のA330より低い位置に設置されています。このような工夫によって、貨物室のスペースを確保でき、旅客機の主翼など、長尺の貨物を積み込むことが可能となっています。同機は、最大で約47mの物体が入る奥行きをもっているそうです。

なお、エアバス社では、「ベルーガST」という似た形の貨物機を運航しており、こちらは「ベルーガ XL」の先輩機にあたります。「ベルーガST」の乗降口についても、「XL」と同じく胴体下部に設置されています。

エアバス「ベルーガ XL」(2021年10月、乗りものニュース編集部撮影)。