新型コロナウイルスが猛威を振るう昨今では人前で咳き込む際、妙な罪悪感や申し訳なさが付き纏うもの。どうにかして咳を抑えられる手段はないだろうか…と思い悩んだ経験は、誰しも一度はあることだろう。

現在ツイッター上では「絶対セキが出ない」マスクが注目を集めているのだ。

【話題のツイート】発想が天才的すぎる


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■ポイントは「頬部分」

大きな話題となっているのは、自称「関数アーティスト」として活動中のレオンさんが24日に投稿した一件のツイート

投稿にはなんの変哲もないマスクが一枚写った写真が添えられているのだが、よくよく見ると頬部分の辺りに、何やら意味深な数式が記されているではないか。

セキなしマスク

じつはこれこそが、レオンさんの生み出した「セキが出ない」マスクなのである。


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■文系は思わずモヤモヤ?

投稿からわずか数日で6,000件以上ものRTを記録している同ツイートだが、一体どういうことなんだ…? と首を傾げてしまった人もいることだろう。

要点を説明すると、レオンさんのツイート本文に「計算不能な間違った数式を印刷することで『セキが出ない』というおまじないをかけたmathク」とつづられているように、マスクに記された乗法(掛け算)は答え(積)を求めることが不可能な数式なため「積が出ない」が「咳が出ない」に見事に掛かっているのだ。「マスク」と「math」(数学)が掛かっているのもニクい。

ウィットに富んだオリジナルマスクを受け、ツイッターユーザーからは「天才かよ…」「こういうの大好き」といった反響の声が続出。中には「マスクをつける甲斐(解)なしってことで」といった具合に、これまたハイセンスな数学ネタを披露するユーザーも見られた。

しかし、根っからの文系脳である記者の目には、件の数式は「なんか知らんが妙な掛け算っぽい式」としか映っておらず、「積と咳が掛かっているのは分かるが、そもそもこの数式は本当に誤っているのか…?」という疑問が拭えないのも事であり、ツイートに寄せられたリプライを見ると、そうしたモヤモヤを抱えている人物は少なくないようなのだ。

そこで今回は「セキが出ないマスク」の生みの親であるレオンさんに、詳しい話を聞いてみることに。すると、衝撃の事実が明らかになったのだ。

■マスク作成の経緯が最高すぎる

マスクに関する取材だけでなく、数式の解説をも笑顔で快諾してくれたレオンさんは、現役の東京大学大学院生。6年ほど前から「関数アーティスト」として関数を用いたイラストなどを多数投稿しており、今回のマスク作成も、自身のアーティスト活動の一環なのだとか。

「コロナ禍でマスクが必須アイテムとなっている中、アーティストの方々がデザイン性の高いマスク作品を公開しているのを多数お見かけし、自分も数学に関連したマスクを作りたいと感じたことが、今回のマスクを作成した経緯となります」と、振り返ってくれた。

「積」と「咳」を引っ掛けたマスクにすることは比較的早く閃いたのだが、「分かる人が見たら思わずニヤリとしてしまうレベル」になるよう、問題の難度を決めることに時間をかけたというから微笑ましい。

なおマスクに書かれた数式は「行列」と呼ばれるもので、レオンさん曰く「数学専攻でなくとも、理系の学部に進学したのであれば、大学一年生時に学ぶ分野」だそうだ。


■その「行列」とやらは何なのか…?

「行」という横に並んだ一筋と、「列」という縦に並んだ一筋の組み合わせで成り立っているのが行列。

今回のマスクに登場した数式は一見すると[]に囲まれた12と34の掛け算のように見えるため、つい12×34=408というパワー系解答を導き出したくなってしまうが、それぞれの数字は1と2、3と4で独立しており、1つの行と2つの列によって構成された1×2型の行列の掛け算となっているのだ。

行列

なお、行列の掛け算を行なう際は「片方の行列の行と、もう片方の列の個数が同じでなければならない」というルールが存在する。そのため今回のような「1×2型の行列」同士の掛け算は不可能となり、答えは「積なし」となるのだ。

行列

Zoom取材に当たり、レオンさんは「行列の積が計算可能となる大事な条件はmが一致することです」と、ホワイトボードの図式を指差しながら力説してくれた。願わくば、学生時代にこんな先生と出逢いたかった…。

そんなレオンさんはこれまでにも「数学」に関する個性豊かな作品を多数発表しており、2017年には「たった一つの数式で3Dのポン・デ・リングを表示する」という、壮大さと身近さが同居した発表で一躍時の人に。

ツイッターだけでなくYouTubeでもこうしたユニークな作品をアップしているので、気になる人はぜひチェックしてみてほしい。

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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ

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