11月27日に「世界アニマル動画100連発」(TBS系)、28日に「アンタッチャブルのおバカワいい映像バトル 動物VS人間!笑える動画121連発」(フジテレビ系)が放送されました。

 どちらも土日ゴールデンタイムの2時間特番として放送された動物番組。27日の午後7時からはレギュラー番組の「I LOVE みんなのどうぶつ園」(日本テレビ系)も放送されたため、動物番組がかぶる形になっていたのです。

 さらに少しさかのぼると、この2週間あまりで多くの動物特番が放送されました。

 11日にゴールデンタイム2時間特番で「動物スクープ100連発 爆笑&可愛すぎ犬猫マル秘行動解明&ウサギ島で衝撃映像SP」(TBS系)、18日にゴールデンタイム3時間半特番で「どうぶつピース!!292日ぶり空港探知犬の今&犬ニャン衝撃映像51連発SP」(テレビ東京系)、19日に深夜の1時間特番で「かまいたちのあつまれ!どうぶつの話」(フジテレビ系)、20日にゴールデンタイム2時間特番で「I LOVE みんなのどうぶつ園」を放送。

 また、同日の同時間帯に2時間特番で放送された「世界フシギ動画祭り」(テレビ朝日系)も、その大半は動物関連の動画でした。そして、きょう30日午後7時からも「サンドウィッチマンどうぶつ園飼育員さんプレゼン合戦 ZOO−1グランプリ」(CBCTBS系)が放送されます。なぜ今、これほど、動物特番が増えているのでしょうか。

レギュラーの動物番組はハイリスク

 もともと、動物番組はテレビ局にとって「鉄板」と言われるコンテンツの一つ。ファミリー層を中心に老若男女からのニーズがあり、これまで、「わくわく動物ランド」(TBS系)、「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」(フジテレビ系)、「どうぶつ奇想天外!」(TBS系)、「生き物にサンキュー!!」(TBS系)、「天才!志村どうぶつ園」(日本テレビ系)などが放送されたほか、現在も「I LOVE みんなのどうぶつ園」「どうぶつピース!!」「坂上どうぶつ王国」(フジテレビ系)がレギュラー放送されています。

 特にコロナ禍の重苦しいムードが続く今は「癒やされたい」という意味で動物そのものの需要がアップ。朝昼の情報番組でもミニコーナーがあるほか、新着ニュースや占いなどのコーナーに画像・動画がインサートされる機会が増えています。

 一方、ネット上でも動物関連の動画は人気コンテンツの一つ。YouTubeやSNSなどに動画が大量にアップされ、ペットの犬、猫、ウサギ、ハムスターハリネズミフクロウなどや、動物園や水族館のパンダ、ゾウ、カバ、イルカアザラシセイウチなど、さまざまなスター動物が誕生しています。

 このところ、動物の動画を大量に扱った特番が増えているのは、テレビの作り手たちがこうしたネット上の現象をうまく利用していることの表れ。実はレギュラーの動物番組を作るのはテレビ局にとってハイリスクであり、「なぜ、こんなことをさせるのか」「虐待ではないか」というクレームが殺到しやすく、実際にそれが引き金となって終了したというケースもありました。そのため、現在放送されているレギュラー番組では、保護犬や保護猫のコーナーや、大家族とペットたちのドキュメンタリーなどのローリスクな企画が増えています。

 その点、一般人が撮影した動画であれば、制作上の手間や費用が少ない上に、クレームを受けるリスクが低いなど、特番化しやすい条件が目白押し。高視聴率こそ難しいものの、それなりの結果が得られる、失敗の少ない特番として放送できるのです。

今こそ明るく楽しいムード番組を

 緊急事態宣言が全国的に解除され、コロナ感染拡大の脅威がやわらいだ現在、テレビ編成・制作の現場では動物番組だけでなく、「今こそ明るいムードの番組を増やしていこう」という動きが見え始めています。

 例えば、27・28日の土日ゴールデンタイムを振り返ると「バナナマンのせっかくグルメ」(TBS系)は2時間特番で豪快に食べまくり、「ジャンクSPORTS」(フジテレビ系)はレスリングメダリスト・川井姉妹がビックカメラで爆買いし、「行列のできる相談所」(日本テレビ系)はプロが選ぶ絶頂宿を特集し、「ちょっと不安なので…一緒に行ってもらえますか?」(テレビ東京系)は豪華旅行や大豪邸などをピックアップ。

 また、お笑い系特番では25人もの人気芸人がドラフト会議形式でチームを組んでコントを披露する大型ネタ番組「ドラフトコント2021」(フジテレビ系)を放送し、スポーツ特番では「SMBCプロ野球日本シリーズ2021 オリックス×ヤクルト」(TBS系)、「世界卓球2021」(テレビ東京系)が放送されました。

 もちろん、かなり前から放送が決まっていた番組もあるでしょうが、構成・演出などの点で「より明るく、楽しそうなムードの番組に」という意図が見え始めているのも事実。その明るいムードの中心にいるのは、お笑い番組と動物番組であり、特に後者は今後も視聴者を癒やすコンテンツの象徴として、特番やレギュラー番組内のミニコーナーなど、さまざまな形で放送されていくでしょう。

コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志

今、動物特番が増えている理由は?