長い間秘密のベールに包まれていた米空軍の「次世代航空優勢(NGAD:Next Generation Air Dominance)(以下、NGAD)」プログラムが、徐々に姿を現してきた。

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 NGADプログラムとは、「F-22」の後継となる次世代戦闘機を含む「ファミリーシステム」の開発を目的とした米空軍のプログラムのことである。

 一般に、次世代戦闘機がNGADと呼ばれている。

 NGADプログラムには「航空優勢」が含まれているので、「航空優勢」について簡単に説明する。

「航空優勢」とは、武力攻撃が発生した場合に、味方の航空機が大規模な妨害を受けることなく諸作戦を遂行できる状態のことであり、これを確保することにより、その空域下で海上作戦や陸上作戦の効果的な遂行が可能となる。

 仮に「航空優勢」を失えば、敵の航空機ミサイルなどにより、飛行中の航空機はもとより、地上部隊や航行中の艦船なども攻撃を受けることになる。

 このため、戦闘機が作戦空域に迅速に展開し、より遠方で、敵の航空機ミサイルによる航空攻撃に対処できる態勢を整えることが、極めて重要となる。

 このような戦闘機の重要性に鑑み、各国とも戦闘機の開発等に注力しているのである。

 さて、NGADプログラムは、2010年代初頭に開始されたが、長い間、次世代戦闘機の設計概念などが公表されず、新しい戦闘機の開発を断念したのではないかと見られていた。

 ところが、2020年9月、突然、ウィル・ローパー空軍次官補(調達・技術・兵站担当)(当時)は、NGADの実証機が、すでに飛行していたことを明らかにした。

 そして、2021年6月、米空軍参謀総長のチャールズブラウン大将は、インド太平洋地域での運用を考慮したNGADはF-22よりも大きなペイロードミサイル・爆弾の搭載量)と航続距離を備えると証言した。

 また、同じ公聴会に出席していた航空戦闘コマンドACC)司令官のマーク・ケリー大将は「NGADはインド太平洋地域向けに大きなペイロードと航続距離を備えたタイプと比較的戦場までの距離が短い欧州向けのタイプの2種類になるかもしれない」と証言した。

 以上の米空軍幹部の発言(発言の詳細は後述する)などから、米空軍の次世代戦闘機、すなわち第6世代戦闘機は、F-22より大型の航続距離の長い戦闘機で、インド太平洋地域向けと欧州向けの2つのタイプが計画されていることが明らかになった。

 だが、第6世代戦闘機が有人機、無人機または有人・無人の両用戦闘機であるかについては、米空軍幹部からは含みを持たせた発言がなされている。

 以下、初めに戦闘機の世代区分について述べ、次にNGADの開発動向について述べ、最後に日本および主要国の次世代戦闘機の開発動向について述べる。

1.戦闘機の世代区分

(1)戦闘機の戦い方の変遷(出典:防衛省「次期戦闘機の開発」)

 戦闘機同士の戦い方(「空対空戦闘」)は、ミサイル技術や情報共有のためのネットワーク技術の進展などにより大きく変化している。

 戦闘機同士が近距離(目視範囲内)で格闘戦を行う「ドッグ・ファイト」から、目視できない遠方からミサイルを発射・回避し合う戦い方が主流になった後、現在は、ステルス性による秘匿と多数の高精度なセンサーからの情報の融合が重要となっている。

 世代の違う戦闘機間での戦闘では、新世代機が圧倒的に優位と言われている。

(2)戦闘機の世代区分

 ジェット戦闘機の「世代区分」は、ロッキード・マーティン社が自社の製品であるF-22F-35を「第5世代」と呼称し、他社の競合機を「第4世代」とすることで差別化を図るために作り出した言葉であるとされる。

 直感的に理解しやすい区分けだったこともあり、戦闘機の「世代」なる用語は世界的に定着した。よって、戦闘機の世代区分に明確な基準はない。

●第1世代戦闘機とは、1940年代に登場した黎明期のジェット戦闘機をいう。

 1950年代までの亜音速ジェット戦闘機がこれに分類され、超音速ジェット戦闘機は続く第2世代ジェット戦闘機以降に分類される。

 代表的な第1世代戦闘機としては、米国の「F-86」、ソビエト連邦の「MiG-15」などが挙げられる。両者は朝鮮戦争での空中戦によって広く知られている。

●第2世代戦闘機とは、1950年代に登場した初期の超音速戦闘機をいう。

 米国の「F-100」は、史上初の実用超音速ジェット戦闘機である。これ以降に登場し、1960年代まで運用された超音速ジェット戦闘機が第2世代として分類される。

 代表的な第2世代戦闘機は、米国の「F-104」、「F-105」、「F-106」、ソ連の「MiG-19」、「MiG-21F」 、「Su-7」、「Su-9」、「Su-11」などをいう。

 1960年代より徐々に第3世代へと移行するが、その区別は曖昧である。

 ちなみに、1956年に配備の始まったサイドワインダー(空対空赤外線誘導ミサイル)を装備した「F-86」が1958年の台湾海峡における金門島砲撃戦時の大規模な空中戦で中国空軍の「MIG-17」を撃墜した戦果をあげた事例などから、「ミサイル万能論」が唱えられた。

●第3世代戦闘機とは、主に1960年代に登場した超音速戦闘機をいう。

 先の第2世代戦闘機との区別は曖昧であるが、マルチロール・レーダー誘導ミサイル搭載能力・夜間戦闘能力を有するものが第3世代として分類される。

 代表的な第3世代戦闘機は、米国の「F-4」、「F-5」、「F-111」、ソ連の「MiG-23」、「MiG-25」、「Su-15」、中国の「J-8」、「JH-7」、フランスの「ミラージュ F1」などをいう。

●第4世代戦闘機は、1980年代から運用が始められ、現在まで運用されている高度な多用途性能・長距離広域探索レーダー・同時交戦能力などを有するマルチロール機をいう。

 多用途性を実現するため、前世代よりはるかに推力重量比の大きな戦術航空機用のアフターバーナーつきターボファンエンジンを装備している。

 代表的な第4世代戦闘機は、米国の「F-14」、「F-15」、「F-16」、「F/A-18」、フランスの「ミラージュ2000」、中国の「J-10」、「J-11」、ロシアの「MiG-29」、「MiG-31」、「Su-27」などをいう。

●第5世代戦闘機とは、おおよそ2000年代から運用が始められたステルス性能を有する戦闘機のことをいう。

 ロッキード・マーティン社は、第5世代ジェット戦闘機の特徴を「センサーフュージョン」・「ステルス性」・「(第4世代に勝る)性能」・「より進歩した整備・保守性」と定義している。

 代表的な第5世代戦闘機としては、米国の「F-22」と「F-35(A、B、C)」、ロシアの「Su-57」、中国の「J-20(殲20)」などである。

 ただし、J-20については、他のステルス機が有していないカナード翼を有している。カナード翼は運動性能を向上させるが、反面ステルス性が損なわれるという指摘がなされている。

●第6世代戦闘機

 日・米・中・ロなどは、2030年から2035年の実用化を目指し次世代戦闘機/第6世代戦闘機の開発を競っている。

 第6世代戦闘機には、第5世代を超えるステルス性能、指向性エネルギー兵器の搭載、クラウドシューティング能力および有人戦闘機随伴型の無人機との協働などの幅広い能力が求められている。主要国の開発動向は後述する。

2. NGADの開発動向

 NGADプログラムは、米空軍向けの2030年代の航空優勢システムを開発するために2010年代初頭に開始された。

 このプログラムは、推進力、ステルス、先進兵器、デジタル設計(CADベースエンジニアリング)、航空機のシグネチャー管理などの分野でいくつかの重要な技術を開発することを目的としている。

  NGADプログラムは「ファミリーシステム」として説明されており、戦闘機システムの中心であり、システムの他の部分は、追加の弾薬の運搬など他の任務を遂行するための無人支援航空機である。

 以下、NGADプログラムに関連する米空軍幹部の発言等を時系列に沿って述べる。

①2019年2月、米国の第5世代戦闘機F-22の後継機となる第6世代の戦闘機の就役は2030年頃と見られていたが、2019年になっても国防総省から第6世代戦闘機の設計概念等が発表されず、米国は第6世代戦闘機の開発を諦めたのでないかいう噂も流れた.

 ところが、突然、2019年2月28日開催されたシンポジウムで、ウィル・ローパー(Will Roper)空軍次官補(調達・技術・兵站担当)は、次のような全く新し構想を詳解した。

2030年以降の不確実性により単独解決策での対応は困難である。従って、これから10年もの期間を費やし新型制空戦闘機1種類を開発するのではなく次世代制空戦闘機数種類の開発、調達、配備を目指す」

「すなわち、すべての要求性能を単一の戦闘機に盛り込むのではなく、今後の技術開発のリスクを分散するため、新型機を2年ごとに登場させるものである」

 これは「デジタルセンチュリーシリーズ」(注)と呼ばれる。

デジタルセンチュリーシリーズ」の提唱者で空軍改革に辣腕を振るったローパー次官補は、2021年1月に退任した。「デジタルセンチュリーシリーズ」が採用されるかは不明である。

(注)米空軍は1954年から1959年までの5年間に、F-100、F-101、F-102、F-104、そしてF-105F-106という、6種類の戦闘機を就役させており、これらは「センチュリーシリーズ」と呼ばれる。

デジタルセンチュリーシリーズ」は、デジタル設計技術と最新の製造技術を駆使して、おおよそ8年ごとに、その時点の最新技術を盛り込んだ新戦闘機を戦力化し、すでに就役している戦闘機はおおよそ16年程度で退役させるという構想である。

 デジタル技術の活用により、センチュリーシリーズに近い周期で新戦闘機を開発し戦力化していくというコンセプトである。

②2019年8月、デイビッド・A・クラム(David A. Krumm)空軍少将(空軍次官補オフィスのグルーバル戦力プログラム部長)は、バージニア州アーリントンで開催されたNGADに関するミッチェル研究所主催のパネルディスカッションで、次のように語った。

「空軍が開発しているNGADプログラムは、必ずしも新しい戦闘機の開発を意味するものではない。NGADには、すべての軍種及び航空・陸上・海上・宇宙・サイバー空間を含むすべての領域において相互にデータが共有されていることが必要である」

「すなわち、それらのすべてが、ネットワークで結合されていることが、我々の求めていることである」

③2020年9月14日ウィル・ローパー空軍次官補(当時)は米軍事専門紙「ディフェンス・ニュース」との独占インタビューで、米空軍のNGADの実証機が、すでに飛行していたことを明らかにした。

 また、ローパー空軍次官補(当時)は、実証機がどのような戦闘機か、どのメーカーが開発したのか、いつ頃初飛行を行なったのかといった点は一切明らかにしていない。

 しかし、VR(仮想現実)などのデジタル設計開発技術と最新の製造技術を駆使したことで、次期戦闘機に要求される性能が決定してから1年足らずで初飛行に漕ぎ着けたと述べた。

 飛行した実証機はプロトタイプではないと見られている。

2021年4月12日、米空軍は次期戦闘機コンセプトアート(下図)を公表した。

 これより数日前の4月9日には隔年報告書で同様のコンセプトアートが公表されている。これらのコンセプトアートでは、胴体や主翼を一体化させたブレンデッドウィングボディ機として描かれている。

コンセプトアートの説明(筆者作成)

 戦闘機の左側に3基の空対空ミサイルと機体中央に1基のミサイルが示されている。これは、NGADがミサイルを機体内部に搭載することを示唆している。

 航空機の後方には、「絶え間ない競争(constant competition)」というキャプションが付いたデバイス示されている。これは電子戦の対抗手段を示唆している。

 戦闘機の右側には、「デジタルテストdigital experimentation)」というキャプションが付いた航空機ジェットエンジンを示す3つの図が示されている。

 これは、ジェットエンジンデジタルテストをこれまで以上に活用するという空軍の声明を示しているのであろう。

 最後に、戦闘機のすぐ後ろに2番目の航空機が表示されている。これはNGADプログラムには戦闘支援無人機を含んでいるという空軍の声明を示していると思われる。

2021年5月13日、空軍副参謀長(戦略・統合・要件担当)のクリントン・ヒノテ(Clinton Hinote)中将は、「ディフェンス・ニュース」との独占インタビューで、次期戦闘機について、「現時点では、我々は、有人機、無人機又は有人・無人の両用機を考えている」と語った。

 また、同中将は次のような発言もしている。

F-22素晴らしい戦闘機であるが、2030年代半ばに設定された台湾への中国の侵略をシミュレートした2020年に開催された空軍のウォーゲームでは、中国の脅威が存在する地域に侵入するために(F-22でなく)NGADを頼りにした」

F-22の問題点は航続距離の短さとウエポンベイ(機体内部に設けられたミサイル・爆弾の収納スペース)が小さいことである」

2021年6月16日、米空軍参謀総長のチャールズブラウンCharles Brown)大将は、下院軍事委員会が開いた空軍の2022年度予算要求案に関する公聴会でNGADに含まる有人戦闘機について証言を行った。

 そこで「NGADの主任務は制空戦闘だが高度な防空システムで守られた環境下でも作戦を遂行するため自身を狙う防空システムを排除できる程度の空対地攻撃能力(マルチロール能力)を備える可能性がある」と明かした。

 さらにブラウン大将はインド太平洋地域での運用を考慮したNGADはF-22Aよりも大きなペイロードと航続距離を備えると証言した。

 また、同じ公聴会に出席していた航空戦闘コマンドACC)司令官のマーク・ケリー(Mark Kelly)大将は「NGADはインド太平洋地域向けに大きなペイロードと航続距離を備えたタイプと比較的戦場までの距離が短い欧州向けのタイプの2種類になるかもしれない」と証言した。

3.日本および主要国の開発動向

 ロシアは、次世代戦闘機MiG-41/PAK-DP」の開発を進めている。

 報道によれば、Mig-41は「Su-57」をベースに開発され、最大速度マッハ4、ステルス性を有し、対ミサイルレーザー兵器を装備し、宇宙に近い超高高度付近で航行し弾道ミサイルに対応し、また遠隔操作による無人航空機UAV)としても運用でき、早ければ2025年にはプロトタイプが開発されるとされる。

 中国は、複合材料を大幅に採用してステルス性を高めた次世代戦闘機の開発を行っていると中国メディアが、2020年12月14日に報じたが、詳細は不明である。

 また、かつて、「暗剣」や「火龍」が次世代戦闘機の候補ではないかとメディア上で取りざたされたが、その後関連情報は一切報道されていない。

 欧州では、仏・独・スペインが、将来戦闘機FCAS:Future Combat Air System)の共同開発を進めている。戦闘機1機で複数の無人機コントロールするとされる。

 一方、英主導の次世代戦闘機テンペスト」計画には、スウェーデン・伊が開発に参加している。

 テンペスト計画では、パイロットが搭乗する有人機型とほぼ同サイズ無人機型を同時に開発し、有人機と無人機で編隊を組んで運用するとされる。

 日本は、F-2の退役・減勢が始まる2035年頃から、次期戦闘機(F-3仮称)の導入を開始するとして、2020年度概算要求で、初めて「ミッションシステム・インテグレーションの研究」(177億円)および「遠隔操作型支援機技術の研究」(19 億円)を計上した。

 開発体制としては、米国から必要な支援と協力を受けながら、我が国主導の開発を行うとしている。

 防衛省2010年8月に公表した「将来の戦闘機に関する研究開発ビジョン」に示された将来戦闘機F-2戦闘機後継)コンセプトでは、

ネットワークで繋がった戦闘機によるクラウドシューティング

②前方で戦闘機の機能を担う無人機

③弾数に縛られない指向性エネルギー兵器

④電子戦に強いフライ・バイ・ライト(fly-by-light

⑤我が国の最先端素材技術による敵を凌駕するステルス

⑥世界一の我が国のパワー半導体デバイス技術による次世代ハイパワーレーダー

世界一の我が国の耐熱材料技術による次世代ハイパワー・スリム・エンジンの先進技術7項目が挙げられている。極めて挑戦的なコンセプトである。

 次期戦闘機でこれらの先進技術を実現し、F-3が、世界一戦闘機になることを期待したい。

おわりに

 次世代戦闘機の特徴は、有人戦闘機と有人戦闘機随伴型の無人機との協働の能力が求められているということである。

 軍用無人機は、用途により、無人攻撃機、無人偵察機、無人警戒監視機などに分類される。上記の用途に用いられる無人航空機は既に実用化されている。

 だが、無人で空中格闘戦などの制空戦闘を行う無人戦闘機(UCAV:unmanned combat air vehicle)の研究が各国で続けられているが、いまだ構想段階にある。

 現状では制空戦闘を行う無人戦闘機の開発が難しいため、先進各国では有人戦闘機と協働し、有人戦闘機を支援する無人機(以下、ロボット僚機と呼ぶ)の研究開発に取り組んでいるのである。

ロボット僚機」が促進される理由としては、

①有人戦闘機との役割分担でパイロットの負担を減らすことができる、

②「ロボット僚機」の機能を空中給油や電子戦などの機能に限定すれば格闘戦などの戦闘よりは単純な動きになるので技術面、経費面で開発が容易となるなどが考えられる。

 だが、「ロボット僚機」には自己判断を行える高度な人工知能(AI)を搭載した自律戦闘能力が求められている。

 さて、日本は軍用無人機の開発・製造では世界の趨勢から一人取り残されているのが現状である。

 第6世代戦闘機の開発において有人戦闘機のみならず自律型無人機でも他国の技術を凌駕してほしい。

 かつて、世界に冠たる「百式司令部偵察機」や「零式艦上戦闘機ゼロ戦)」を生み出した日本の航空機技術力は、今も健在であってほしい。

ゼロ戦の夢よ、再び」と願うのは筆者だけではないであろう。

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