人気アプリゲーム『A3 !』が舞台化され、「MANKAI STAGE『A3!』」シリーズ(通称“エーステ”)として初上演されたのは2018年。劇団を立ち直らせる役者たちの物語は瞬く間にステージ界でも人気を博し、今なお愛され続けている。その“エーステ”が満を持して映画化へ。「MANKAI MOVIE『A3!』~SPRING & SUMMER~」(通称“エームビ”)として、12/3(金)より公開される。

【写真を見る】横田龍儀、春組らしいピンク色からチラリ

四季の名がつく各組が登場し、今作は春組と夏組が中心のストーリー。春組リーダー・佐久間咲也を演じる横田龍儀と、夏組リーダー・皇 天馬を演じる陳内 将にとって、映画化は感慨深いようだ。

■ついに映画化! LINEの動き方にも出た各組らしさ

——「映画化」と聞いて、最初にどう思いましたか?

横田龍儀(以下、横田):びっくりしました! 舞台が始まった頃は映画化するなんて想像もしていなかったので、素直に驚いたしうれしかったです。キャストみんなが愛しているこの作品を、さらにいろんな人たちに見てもらえる機会ですから。

陳内 将(以下、陳内):僕は原作ゲームの『A3!』が劇場版になると思っていて。エーステが映画化されると気付いたのは数日後でした(笑)。映画化までされるとは、僕らが続けてきた作品が愛されている証拠だなと、喜びにあふれました!

——話を聞いた時点で、各組のメンバー同士で連絡を取り合ったりしたのでしょうか。

横田:しましたね。舞台と映像の違いがあるだろうし、すでに舞台化していた旗揚げ公演までの物語が映画化されるということで、それぞれの関係性の話をしたり。「今の僕らだと仲が良過ぎるから、そのまま演じると出会った当初の空気にならない可能性がある」「お互いに意識して、気付いたことがあったら言い合おう」と事前に約束してました。

陳内:読者の皆様、すみません。夏組は、グループLINEが動きませんでした!

横田:アハハハハ!(笑)

陳内:「映画化だね」とみんなで噛みしめることは一切なかったです、すみません(笑)。仲が悪いわけじゃないんですよ!

■染み付いた舞台上での動き、対応力と成長能力が著しかったのは…

——舞台と映像の違いについて、実際に演じてみてどのように感じましたか?

横田:表現方法が違うな、と。舞台では劇場の後方席にいらっしゃるお客さんにも分かるように大きく動かなきゃいけないんですが、映画でそれをやると画角からはずれてしまう。逆に、映像だとちょっとした動きでも伝わる情報が多いので、「動きは大きくせず、表情に出る心の動きは大きくしよう」と意識していました。

陳内:演じる側は人間なので、30公演以上も同じセリフを同じシチュエーションでやってきただけに、(動き方として)染み付いているものがあるんですよ。とくに5人のシーンだと、どうしても舞台(の広さ)の動きになる人がいて「そりゃそうなるよな」と。そういう光景が見られたのは、特殊な経験だと思いましたね。

映像経験の多くない人にその傾向があったので、僕のほうからいろいろとアドバイスをしました。すると、すぐに対応してくれて。対応力と成長能力が、宮崎 湧(瑠璃川幸役)と野口 準(向坂椋役)はすごかった。それもあって、劇場で試写を見て感極まってしまいました。本当にすごいよ、若い子は。

横田:いやぁ、本当にすごい。…ちょっと待ってください、僕も一応若い子の範ちゅうなんですけど。「お前は違うぞ」みたいな感じ、やめてくださいよ!(笑)

陳内:アハハ! 失敬、失敬(笑)。

——そんな試行錯誤を経て、完成作品を見たときの感想はいかがでしたか?

横田:撮影中は一生懸命演じるだけで、全体像がイメージできていない部分があったんですけど、「あのシーンがつながるとこうなるのか」と感動しました。春組の空気感も、最初のギクシャクしている感じが出ていて。初演の記憶が蘇ってきて懐かしくなり、思わず泣きそうになりました。

陳内:個人的な感想で言うと、瑠璃川 幸を見て「夏組の助演男優賞だよ」と思いました。見終わってすぐ湧に「“エームビ”よかったし、湧がめちゃくちゃよかったよ!」とLINEを送りましたもん。(モノマネしながら)「陳さんのおかげッス!」と返事が来ました(笑)。幸をはじめとした夏組のメンバーが、すごく天馬を支えてくれていたんだなと、映像を通して改めて実感しましたね。

■「僕らの中に、たっきーさんはずっといる」

——特に印象に残っているシーンはありますか?

横田:初代春組OBでコーチの雄三さん(鯨井康介)に活を入れられるシーンがあるんですが、舞台で今まで雄三さんを演じていたたっきーさん(故・滝口幸広氏)を思い出して…。映画で雄三さんに改めて言われる、「お前は誰のために芝居をやってるんだ」という言葉の重みを痛感しました。映画に出演していなくても、僕らの中にたっきーさんはずっといるので。

陳内:そう、みんなの中にいる。「Special Thanks」だよね。

横田:たっきーさんはきっと撮影現場にもいたと思うし、映画館にも来るんじゃないかな。

あとは…春組は、意外とアドリブが多いんですよね。具体的に挙げると、シトロン役の(古谷)大和さんが出ているシーンにはだいたいアドリブが入ってます(笑)。大和さんのアドリブはすごかった!

陳内:夏組は…合宿で海辺を走るシーンを、ドローンカメラでひとりひとり横から撮影したんだけど。テスト撮影のときに、斑鳩三角役の(本田)礼生がドローンを捕まえようとしちゃうの(笑)。

横田:ええっ!?

陳内:たしかに三角ならたぶん捕まえたくなるよなと思ったけど、めちゃくちゃ笑っちゃった(笑)。5人で1列になって走るシーンでは「ひとりひとりの間隔を均等にしよう」と話してたんだけど、具体的な距離とかは決めてなかった。でも映像を見たら、ちゃんと均等なバランスで走っていて。これまでの経験や、夏組の絆が如実に表れたなと実感しました。

——両組とも個性豊かな出演者が揃っていますが、撮影中はどのように過ごしていましたか?

横田:僕たちはずっとカードゲームをやっていました。そのカードゲームの新パック情報の話を、延々としていたり。

あと、碓氷真澄役の(高橋)怜也くんが持ってきた、ちょっとしたゲームも流行りましたね。数字をどんどん言い、7の倍数の時は何かする、みたいなゲームで。

陳内:世界のナベアツさんの「3の倍数を言う時だけアホになる」みたいなゲームをやっていたってこと?

横田:そうです(笑)。

陳内:僕は、撮影中はあんまり夏組といなかったんです。序盤の物語なので、シーン的に天馬と他の4人と1対4の構図になることが多くて。4人がわちゃわちゃしているときに天馬は監督(※ゲームでのユーザー名称。映画では観客が監督視点となる)としゃべったり、怒って1人で稽古場から出て行っちゃったり…と、孤立ぎみですから。ちなみに端から見た4人は、宮崎 湧が持ちかけたアプリゲームをしてました(笑)。

■“2.5次元”映画化の波「甘えてはいけないなと感じます」

——現在では、2.5次元舞台作品の映画化や、2.5次元系役者の出演するドラマが次々と映画化されています。このムーブメントについて、お2人が何か感じることはありますか?

陳内:アニメや漫画は、もともと日本人が世界に誇るサブカルチャー。その舞台化が数年前から一般的に認知され、多くの人に愛されるようになりました。映画やラジオ、CDや舞台などのいろんなメディアミックスも、近年さらに展開されるようになりました。だから、なるべくしてなったタイミングに、僕らがたまたま出られているんだなと。2.5次元舞台は、アニメや漫画と同じく、世界に誇っていい文化だと以前よりさらに強く思えています。すてきな流れですよね。

横田:すてきな流れですよね。一方で、「このムーブメントに甘えてはいけないな」と、僕個人は感じています。原作の人気のおかげで、いろんな方が見に来てくださいますが、そこに甘えて芝居を怠ってはいけない。しかも今回は映画化といういい機会を与えてもらえたのだから、この映画で初めて“エーステ”に触れる人にも舞台に来てもらえるよう、もっと努力して表現力を上げていかなきゃいけないなと感じています。

——“エームビ”は、全国各地の人が“エーステ”に触れられるいい機会ですね。

横田:これまで、“エーステ” の生の舞台を見てきてくださった方も、そうでない方も、絶対に楽しめる作品になりました。この映画を見て「この人が推しだったけど、あの人も好きになった」と思ってもらえたらいいなと。ぜひ映画館に来て、僕たちが作った“エーステ”という作品を楽しんでください!

陳内:今回は映像で見せるお芝居だから、僕個人は別ものとして挑みました。皇 天馬が映像俳優だということを、陳内 将の体を通して監督に感じてもらえたら幸せです。“エーステ”から監督として応援してくれているあなたも、“エームビ”で初めて監督になってくれたあなたも、いろんな角度で思いを馳せていただければうれしいです!

“エームビ”出演の横田龍儀&陳内将にインタビュー!/撮影=富田一也