2021年の米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”は、デュア・リパの「レヴィテイティング」が年間1位に輝いた。

 昨年の3月にリリースしたデュア・リパの2ndアルバム『フューチャー・ノスタルジア』から、5曲目のシングルとしてカットされた「レヴィテイティング」は、2020年10月にダベイビーをフィーチャーしたリミックスを発表したことで、チャートを上昇。2021年1月9日付チャートでTOP10入りした後、2月にデラックス盤『ザ・ムーンライト・エディション』がリリースされ、同月TOP5入りを果たした。

 翌3月14日に開催された【第63回グラミー賞】では<最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム賞>を受賞し、同曲をパフォーマンスしたことで再びTOP10に浮上。5月に開催された【ブリット・アワード2021】では<年間アルバム賞>と<女性ソロ・アーティスト賞>を受賞して、TikTokでは4億再生を超えるバイラル・ヒットを記録。集計終了までの最高位は2位どまりだったが、TOP10滞在週を歴代2位の41週に更新し、通算59週のロングランを記録して年間チャートではトップに立った。

 デュア・リパは、昨年4位を記録した「ドント・スタート・ナウ」に続く2年連続、2曲目のTOP10入りで、年間1位は初の快挙達成。意外にも、女性アーティストが年間首位を獲得するのは、アデルの「ローリング・イン・ザ・ディープ」が獲得した2011年以来10年ぶりで、イギリス出身のアーティストとしては、2017年にエド・シーランが「シェイプ・オブ・ユー」で獲得して以来4年ぶり、女性アーティストではその「ローリング・イン・ザ・ディープ」が獲得した2011年以来となる。

 週間チャートで1位を獲得いない曲が年間1位に輝いたのは、2001年にライフハウスが「ハンギング・バイ・ア・モーメント」(最高2位)で獲得して以来20年ぶりで、女性アーティストの曲としては、2000年の年間1位を獲得したフェイス・ヒルの「ブリーズ」(最高2位)以来、21年ぶりのタイトルとなる。

 デュア・リパは、その他年間90位に「ウィー・アー・グッド」をランクインさせていて、同曲と「レヴィテイティング」、前述の「ドント・スタート・ナウ」が収録された『フューチャー・ノスタルジア』は、アルバム・チャート“Billboard 200”の年間9位に、自身初のTOP10入りを果たしている。

 続いて年間2位にランクインしたのは、ザ・ウィークエンド&アリアナ・グランデの「セイヴ・ユア・ティアーズ」。昨年3月にリリースしたザ・ウィークエンドの4thアルバム『アフター・アワーズ』から4曲目のシングルとして同年8月にカットされ、今年4月にアリアナをゲストに迎えたリミックスを発表し、ポイントが急上昇。翌5月8日から15日付チャートの2週首位をキープし、集計終了まで49週ランクインするロングヒットを記録した。アメリカを除くグローバル・チャート“Billboard Global Excl. U.S.”では、「レヴィテイティング」(3位)をおさえ同2位にランクインしている。

 ザ・ウィークエンドは、昨年の年間チャートを制した「ブラインディング・ライツ」に続き2年連続、通算4曲目のTOP10入りで、アリアナは2014年9位の「プロブレムfeat.イギーアゼリア」、2019年7位の「7 rings」に続く3曲目のランクイン、年間チャートの順位としては自己最高位を更新した。ザ・ウィークエンドとアリアナのコラボレーションは、その他「ラヴ・ミー・ハーダー」(2014年)と「オフ・ザ・テーブル」(2020年)の計3曲があるが、年間チャートでTOP10入りしたのは「セイヴ・ユア・ティアーズ」が初(最高位)となる。

 さらに、前述の「ブラインディング・ライツ」は、今年の年間3位にもランクインしていて、ザ・ウィークエンドはTOP3に2曲を送り込む偉業を達成している。同じアーティストが年間TOP3に2曲をランクインさせたのは、2016年にジャスティン・ビーバーが「ラブ・ユアセルフ」(1位)と「ソーリー」(2位)をランクインさせて以来5年ぶりで、TOP10に2曲を送り込んだのは、2015年に「アーンド・イット」(9位)と「ザ・ヒルズ」(10位)をランクインさせて以来6年ぶり、自身2回目の快挙となる。

 なお、同じタイトルが2年連続で年間TOP10入りしたのは、2016年の10位、2017年の7位にランクインしたザ・チェインスモーカーズの「クローサーfeat.ホールジー」以来で、年間チャートで1位を獲得した曲が次の年の年間チャートでもTOP10入りしたのは、「ブラインディング・ライツ」が史上初のタイトルとなる。

 昨年の年間チャートで1位に輝いた「ブラインディング・ライツ」は、今年2月に開催された【第55回スーパーボウル】のプロモーション・パフォーマンス効果で再燃し、1年間TOP10にランクインし続けた歴代初のタイトルという功績も残している。それに準じて、TOP10滞在週を歴代最長記録となる57週に更新した。

 ザ・ウィークエンドは、43位にドージャ・キャットとのデュエット曲「ユー・ライト」、89位に「テイク・マイ・ブレス」の計4曲を、アリアナ・グランデは、昨年11月に初登場1位を記録した「ポジションズ」を14位、ドージャ・キャット&メーガン・ザ・スタリオン参加のリミックス効果で最高2位を記録した「34+35」を21位に、TOP30に3曲をランクインさせていて、87位の「pov」を含め4曲を100位内に送り込んでいる。その3曲を輩出したアリアナの6thアルバム『ポジションズ』は、年間チャート8位にランクインした。

 続いて年間4位にランクインしたのは、24kゴールデンの「ムードfeat.イアンディオール」。24kゴールデンイアンディオールいずれにとっても初の首位獲得曲で、年間チャートでのTOP10入りも初の快挙となる。

 「ムード」は、2020年度区分で10月24日から31日、11月14日から28日付チャートの計5週1位を獲得して、昨年の年間チャートでは47位にランクインしたが、2021年度のチャート区分では、12月12日1月9日から16日付チャートの計3週をマークしてTOP10に31週滞在し、8月まで計52週ランクインする驚異的なロングヒットを記録した。昨年のチャートと集計期間が分かれなければ、年間1位を獲得していた可能性が高い。

 24kゴールデンイアン・ディールも、ジャンルはヒップホップにカテゴライズされているが、「ムード」はロックにクロスオーバーしたサウンドが幅広い層に受け、大ヒットに繋いだ。ロック&オルタナティブ・ソング・チャート、オルタナティブ・ソング・チャート、ラップ・ソング・チャート、Hot 100の4つのチャートで1位を獲得したのは「ムード」が初のタイトルとなる。

 年間5位にランクインしたオリヴィアロドリゴの「good 4 u」は、5月29日付チャートで1位に初登場して、翌週から11週間連続で2位をキープ。11月13日付チャートまでの約半年間TOP10に、集計終了まで27週連続でTOP20にランクインするロングヒットを記録した。2位の連続記録としては、ホイットニー・ヒューストンの「ため息つかせて」(1995年)と並ぶ歴代最長記録を更新している。

 オリヴィアは、その他にも8位にデビュー曲「drivers license」、13位に2ndシングル「deja vu」をランクインさせていて、年間TOP20に3曲を送り込んでいる。ここ数年は、ドレイクやポスト・マローンなど男性ヒップホップ・アーティストがTOP10に2曲をランクインさせているが、女性アーティストではケイティ・ペリーが「ファイヤーワーク」(3位)と「E.T. feat.カニエ・ウェスト」(4位)を送り込んだ2011年以来、10年ぶりの記録となる。

 デビュー曲が年間TOP10にランクインするのは、2019年の年間1位を獲得したリル・ナズ・Xの「オールド・タウン・ロードfeat.ビリー・レイ・サイラス」以来2年ぶりで、女性アーティストではメーガン・トレイナーの「オール・アバウト・ザット・ベース」が8位にランクインした2014年以来、7年ぶりのタイトルとなる。

 そのデビュー曲「drivers license」、「deja vu」、「good 4 u」、そして年間38位にランクインした「traitor」の4曲を収録したオリヴィアのデビュー作『サワー』も、今年の年間2位にランクインする大ヒットを記録したが、デビュー・アルバムから3曲が同じ年に年間TOP20入りするのは、ファーギーが「ビッグ・ガールズ・ドント・クライ」(4位)、「グラマラス」(10位)、「ファーガリシャス」(19位)をランクインさせた2007年以来、14年ぶりの記録で、オリヴィアはまさに“今年の顔”ともいえる様々な功績を残した。日本時間2022年2月に開催予定の【64回グラミー賞】では主要4部門、計7つにノミネートされている。

 続いて年間6位には、ドージャ・キャットの「キス・ミー・モアfeat.シザ」がランクイン。4月24日付チャートで7位に初登場してからTOP10をキープして、同曲収録の最新作『プラネット・ハー』が初登場した7月10日付チャートで3位まで上昇。「レヴィテイティング 」同様に首位には到達しなかったが、集計終了まで通算31週ランクインするロングヒットを記録して年間チャートではTOP10入りを果たした。週間チャートで初のNo.1タイトルを獲得した「セイ・ソーfeat.ニッキー・ミナージュ」は、昨年の年間11位と惜しくもTOP10入りを逃したが、ドージャ、そしてゲストのシザ共に、この曲で初のTOP10入りを果たしている。

 女性ラッパーにカテゴライズされるアーティストの曲が年間TOP10にランクインするのは、カーディ・Bの「アイ・ライク・イットfeat. J.バルヴィン&バッド・バニー」(2018年) が7位にランクインした2018年以来、3年ぶりで、女性アーティスト同士のコラボレーションがTOP10入りするのは、イギーアゼリアの「ファンシーfeat.チャーリーXCX」が4位にランクインした2014年以来、7年ぶりの記録となる。

 「キス・ミー・モア」にはオリビアニュートン=ジョンの大ヒット曲「フィジカル」(1981年)がサンプリングされているが、この曲は翌1982年の年間1位を獲得していて、間接的ではあるがTOP10入りは2回目の快挙となる。

 7位にランクインしたブルーノ・マーズアンダーソン・パークによるコラボ・プロジェクト=シルク・ソニックの「リーヴ・ザ・ドア・オープン」は、3月20日付チャートで4位に初登場した後、直後に開催された【第63回グラミー賞】でのパフォーマンス効果で2位にランクアップし、登場5週目の4月17日付チャートで1位に到達した。首位獲得は5月22日付チャートを含む計2週で、集計期間終了まで通算37週TOP40にランクインしている。

 ブルーノ・マーズの年間TOP10入りは、2011年6位の「グレネイド」、2013年8位の「ホエン・アイ・ワズ・ユア・マン」、2015年1位の「アップタウン・ファンク マーク・ロンソンfeat.ブルーノ・マーズ」、2017年3位の「ザッツ・ホワット・アイ・ライク」に続く5曲目で、アンダーソン・パークは初のランクイン。

 フィーチャリング・アーティストとしてランクインした曲は多数あるが、正式な男性デュオの曲が年間TOP10入りするのは、ザ・チェインスモーカーズが「サムシング・ジャスト・ライク・ディスwithコールドプレイ」(5位)と「クローサーfeat.ホールジー」(7位)をランクインさせた2017年以来で、R&Bにカテゴライズされる男性デュオの曲としては、ケーシー&ジョジョの「オール・マイ・ライフ」が7位にランクインした1998年以来、23年ぶりの記録となる。

 「drivers license」を8位に挟み、9位にはリル・ナズ・Xの「モンテロ(コール・ミー・バイ・ユア・ネーム)」がランクイン。4月10日付チャートでNo.1デビューしてから、集計期間終了まで累計34週間ランクインして、前述の「オールド・タウン・ロード」に続く2曲目の年間TOP10入りを果たした。同曲が収録されたデビュー・アルバム『モンテロ』から3曲目のシングルとしてカットされたジャック・ハーロウとのコラボレーション「インダストリー・ベイビー」も、10月23日付チャートで1位を獲得し、年間24位にランクインしている。

 「モンテロ」の前週、4月3日付チャートで1位に初登場したジャスティン・ビーバーの「ピーチズfeat.ダニエル・シーザー&ギヴィオン」は10位にランクインし、ジャスティンは前述の「ラブ・ユアセルフ」と「ソーリー」、それから2017年の年間2位を獲得した「デスパシート(ルイス・フォンシ&ダディー・ヤンキーfeat.ジャスティン・ビーバー)」に続く4曲目のTOP10入りを果たした。ゲストのダニエル・シーザーとギヴィオンはいずれも初の年間TOP10入りで、ギヴィオンは自身のタイトル「ハートブレイクアニバーサリー」も年間31位にランクインさせた。

 ジャスティン・ビーバーは、「ピーチズ」に続く2021年2曲目のNo.1ヒットを記録したザ・キッド・ラロイとのコラボ曲「ステイ」も、年間12位にランクインさせている。「ステイ」は、8月14日から9月4日9月25日10月2日、25日付チャートの計7週1位を獲得してから、集計期間終了の11月27日付チャートまでTOP4をキープし続けているが、総ランクイン数が19週と短く、年間チャートでは惜しくもTOP10入りを逃した。前述の「インダストリー・ベイビー」もそうだが、大ヒットはしたものの、集計期間の都合上年間チャートでは上位にランクインできない曲は多い。

 今年の年間41位にランクインしたBTSの「Dynamite」も、首位にデビューした2020年9月5日から12日、10月3日付チャートの計3週をマークして昨年の年間38位にランクインしたが、今年に入ってからも引き続き上位をキープしていたため、集計期間が前年と分かれなければ年間チャートでの上位ランクインが見込めた。一方、6月5日付チャートで1位に初登場してから7週をキープして、7月31日8月7日9月11日の通算10週をマークした「Butter」は、今年の年間11位にランクインしている。

 韓国人アーティストとしては、その「Dynamite」の38位を上回る年間チャートでの歴代最高位で、今年の週間チャートにおける首位獲得数としても、全アーティストの最長記録を更新した。なお、その「Butter」は今年のアメリカを除いたグローバル・チャート“Billboard Global Excl. U.S.”で年間5位を、「Dynamite」は年間1位を獲得している。BTSは今年、その他にも2020年12月5日付チャートで「Life Goes On」、7月24日付チャートで「Permission to Dance」、10月9日付チャートでコールドプレイとのコラボレーション・シングル「My Universe」の計4曲を首位に送り込み、オリヴィアロドリゴに匹敵する“今年の顔”ともいえる大活躍を遂げた。

 年間16位にランクインしたグラス・アニマルズの「ヒート・ウェイヴス」も、チャートイン数は44週目とロングヒットを記録したが、週間チャートでTOP10入りしたのが3週前の11月13日付チャートで、もう少し早く上位にランクインしていれば年間TOP10入りも確実だった。昨年のチャートと集計が分かれたルーク・コムズの「フォーエバー・アフター・オール」(18位)や、ウォーカー・ヘイズの「ファンシー・ライク」(27位)もそうだろう。その2曲や、今年のアルバム・チャートを制したモーガン・ウォレン、過去のアルバムを再録したテイラー・スウィフトなど、カントリー勢が大活躍したのも、2021年の傾向といえる。

 また、年間20位にランクインしたマスクド・ウルフの「アストロノーツ・イン・ジ・オーシャン」や、「 ホワット・ユー・ノウ・バウト・ラヴ」(22位)と「フォー・ザ・ナイトfeat.リル・ベイビー&ダベイビー」(32位)の2曲をTOP40に送り込んだ故ポップ・スモーク、4月24日から5月1日の2週1位を獲得したポロ・Gの「ラップスター」(30位)など、ヒップホップ陣もいくつかヒットを飛ばしたが、近年と比較すると勢いは弱く、TOP10にランクインした3組のヒップホップ・アーティストも、ロック・チャートでヒットした「ムード」、ディスコ調の「キス・ミー・モア」、ラテン・ポップに程近い「モンテロ」など、サウンド面では他ジャンルにクロスオーバーした傾向にある。

 ヒットの傾向としては、「レヴィテイティング」や「セイヴ・ユア・ティアーズ」、華々しいデビューを飾った「drivers license」など、TikTokのバイラル・ヒットによりチャートを上昇したタイトルが目立つ。新型コロナウイルス感染による自粛生活中、SNSに投稿する動画が引き金となったケースも多く、ウォーカー・ヘイズの「ファンシー・ライク」のようにカントリー・シンガーの曲も“ダンス動画”に起用されヒットした。

 また、ストリーミングが主流の時代に、アナログ盤(LP)やカセットテープが若者を中心に人気を博したことも「ヒットさせる」重要なポイントといえる。テイラー・スウィフトBTSといった人気ポップ・シンガーは特にフィジカル・セールスが強く、リリースのタイミングを見計らって首位に立つケースも多々見受けられた。この傾向も、来年度のチャートに引き継がれていくだろう。

Text:本家一成

◎【Billboard Hot 100】2021年年間チャートTOP10
1位「レヴィテイティング」デュア・リパ
2位「セイヴ・ユア・ティアーズ」ザ・ウィークエンド&アリアナ・グランデ
3位「ブラインディング・ライツ」ザ・ウィークエンド
4位「ムード」24kゴールデンfeat.イアンディオール
5位「good 4 u」オリヴィアロドリ
6位「キス・ミー・モア」ドージャ・キャットfeat.シザ
7位「リーヴ・ザ・ドア・オープン」シルク・ソニック
8位「drivers license」オリヴィアロドリ
9位「モンテロ(コール・ミー・バイ・ユア・ネーム)」リル・ナズ・X
10位「ピーチズ」ジャスティン・ビーバーfeat.ダニエル・シーザー&ギヴィオン

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