刑務所・牢獄・逮捕

薬物注射による死刑執行が時間切れとなり、生き長らえた元死刑囚が健康上の理由で死亡した。『Mirror』など海外メディアが報じている。


■障害を抱えた強盗殺人犯

1987年1月24日、アラバマ州カルマンのアンダーソンモーテルに強盗が押し入った。夜間の受付を担当していたパトリック・カニングハムさんが銃殺され、モーテルからは350ドル(約4万円)とカニングハムさんの財布から60ドル(約7,000円)が盗まれた。

翌25日、ドイル・ハムという男が「死刑に相当する殺人罪」の疑いで逮捕された。ハムには胎児性アルコール症候群などの脳障害や、知的障害の可能性があったが、担当の弁護士からはそれらの記録が何一つ提出されることはなかったという。

この弁護士の行動が上訴審で問題となり、裁判は長期化することになった。


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■死刑執行停止の申請も

2014年死刑囚として過ごしていたハムは、リンパ腫と診断を受け放射線療法などの治療を開始。そして2017年12月13日、アラバマ州最高裁判所は、2018年2月22日をハムの死刑執行日とする判決を下した。

しかし治療に用いられた点滴静脈注射、さらにひどく進行したリンパ腫などの病気から、ハムの腕には薬物注射に使う血管がなかった。そのため、残酷で拷問に近い死刑となる可能性があったという。

地方裁判所判事からは死刑執行停止の訴えが提出され、人権団体からはそもそも公平な裁判を受けられていないとの強い反発が起きた中で、医師が「腕はだめでも下肢の血管は利用可能」と診断したことから、死刑執行停止の訴えは退けられた。

■時間切れによる執行終了

予定通りの2018年2月22日午後9時頃より死刑が執り行われた。執行官はハムをうつ伏せにさせ、脚を何度もたたき使用可能な血管を探した。

ところがこれは失敗に終わり、次は鼠径部を6回にわたって注射針で刺したという。針はハムの膀胱に突き刺さり、のちに血尿が出たほか、執行中には大量出血があったため、大腿動脈も刺したのではないかと推測されている。

こうして時刻は24時をまわり、死刑執行命令書の日付を越えてしまったため、時間切れとなった。


■2度目の死刑執行日は設定なし

死刑執行失敗の後、2018年3月にハムの弁護団とアラバマ州は、ハムが州に対して訴追しない代わりに、州はこれ以上死刑執行日を設定しないことで合意。事実上の終身刑となった。

そして同年11月28日、拷問と化した死刑から4年の月日を経て、ハムはリンパ腫に伴う合併症で死亡した。

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(文/Sirabee 編集部・原田パラン

血管見つからず薬物注射が打てずに時間切れ 死刑から生き長らえた男が獄中で病死