今年10月、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)繊維化学工場で爆発が起き、2人が重体、5人が軽傷を負う大事故へと発展した。昨年5月には、咸鏡南道(ハムギョンナムド)虛川(ホチョン)の食品工場で爆発が起き、2人が死亡した。

いずれも「自力更生」という朝鮮労働党の方針に基づき、ノルマ達成や独自技術の開発を急かされた結果だ。咸鏡北道の富寧(プリョン)郡の工場でも同様の事故が発生、多くの死傷者が発生した。

今回の事故は、北朝鮮の抱える複数の制度的欠陥が絡み合って起きたものと言える。政治的に意味のある特別な日までに是が非でもノルマを達成しなければならないとする風土、質よりも速度を優先する「速度戦」、技術も経営も知らず、思想を優先させる工場内の党委員会が工場を指導するいびつな体制などだ。

現地のデイリーNK内部情報筋によれば、事故が起きたのは、古茂山(コムサン)セメント工場の焼成職場築炉作業班の作業現場だ。国家経済発展5カ年計画の初年度の計画を完遂するために力強い闘争を繰り広げるとして、補修を行う暇もないほど炉をフル稼働させ計画達成に邁進していた。

情報筋は、工場の朝鮮労働党委員会が「計画未達成は絶対に許されない」として、いかなる艱難辛苦があろうとも、計画を無条件将軍様金正日総書記)の亡くなった日である12月17日までに達成する目標を立て、通常の2〜3倍の稼働を強いていたと証言した。

そんな中にあった11月24日午後、焼成炉が突如として爆発。労働者2人が即死、6人が重傷を負う大惨事へと発展した。事故原因の調査に当たった工場側は、過負荷をかけてでも党から与えられたノルマ無条件で達成しなければならず、そのために事故が発生したとの分析を示した。

事故を受けて道党(朝鮮労働党咸鏡北道委員会)は道内の1、2級企業所のイルクン(幹部)を参加させてオンライン会議を開き、今回の事故について伝え、「すべての生産現場で遂行すべき人民経済(民生)計画の分量も重要だが、党は労働者の健康をより重要視している」として、労働者に充分な休息を与え、設備の保守点検も行うように伝えた。

また、事故の再発防止のために、より詳細な原因分析が必要だと指摘した。これに基づき、咸鏡北道検察所と安全局(警察)捜査課の係官が、古茂山セメント工場に派遣され、炉の補修状況、労働者のシフト、事故防止対策などが記された日誌を点検するなど調査を行っている。

さらに道党は、金正恩総書記が第5回3大革命先駆者大会の参加者に宛てた書簡の内容を確実に実践に移す過程で、すべての企業所イルクンが使命と本分を尽くしてこそ、事故や逸脱がないと強調した。

最後に道党は、重傷を負った労働者無条件で助けるよう指示を下したが、入院治療を受けている人たちは、職場復帰な困難なほどの状況だと、情報筋は伝えている。事故で障害を負っても、国からのまともなケアが得られず、経済的に困窮することになった家族は、深いため息をついているという。

2020年8月3日、北朝鮮の恵山市で起きた爆発事故(デイリーNK)