正式な踏切ながら、警報機も遮断機もないものを第4種踏切と呼びますが、ほとんどは事故防止の観点で、警報機や遮断機を備えた第1種に昇格したり踏切そのものが廃止されたりします。しかし都電荒川線には第4種から降格した踏切があります。

第4種踏切の条件にも当てはまらないけど人がガンガン横断 これは何?

踏切は大別すると4種類あります。警報機も遮断機も備えている、フルスペックの一般的な踏切は第1種。一部時間帯、踏切警手が手動で遮断機を操作する踏切が第2種。ただし現在、日本には存在しません。警報機のみで遮断機がない踏切は第3種。警報機も遮断機もない踏切が第4種です。

こう見ると、第1種が格上で、第4種が格下といえそうです。踏切に“格”が存在するのかどうかは定かではありませんが、やはり第1種踏切の方がきちんと整備・管理されています。そして、第1種が第4種へなどと“格下げ”されることはまずありません。第1種が姿を消すのは、立体交差化や廃線の場合のみです。

しかし東京都心を走る都電荒川線には、第4種からさらに格下げされた踏切が存在。それは豊島区大塚駅停留場そばにあります。

同踏切は、遠目から見ると本当に踏切かどうか疑わしくなるほど踏切らしさがありません。電車の近接を知らせる簡易的な表示類はありますが、警報機や遮断機はありません。一見すると、周辺住民が独自に設置したいわゆる「勝手踏切」とも思えますが、ここには以前、正式な「踏切」であることを示す根拠があったのです。

東京都交通局に聞いてみた

第4種踏切と非正規の勝手踏切を見分けるポイントは、傍らに立てられている踏切警標の有無です。踏切警標とは、「×」の形をした黄色と黒色の看板を指します。踏切警標があれば、それは正式な踏切ですが、この踏切に踏切警標はありません。しかし、以前は踏切警標が立てられており、「踏切」として扱われていたのです。

東京都交通局によると、詳しい経緯は不明としながらも「第4種として使用してきた同踏切を通路という扱いに変更した」とのことでした。踏切警標がなくなった代わりに、列車の近接を知らせるスピーカーや方向表示器が新しく整備されたほか、路面には「電車優先」の文字が見えます。優先ということは、「歩行者は電車に配慮して渡ることが可能」と解釈できます。外形的・機能的な変化はほとんどありませんが、同踏切は第4種から格下げされたといえるでしょう。

運行本数が少ない地方の路線を中心に、第4種は整備・管理コストの観点から依然多く残されています。ただし自動車が増え始めた昭和40年代後半から、第4種は第3種に、第3種は第1種にといった具合に切り替えられていきました。この踏切改良によって、踏切周辺で起きる事故は減少していったのです。

人口の多い都心で「通路」として再出発した元第4種踏切は、人々の生活に密接した路面電車ということもあってか、方向表示器などの新設からも、安全面には最大限配慮されている印象です。

元第4種踏切を通過する都電荒川線。大塚駅前停留場近くにある(2018年10月、小川裕夫撮影)。