さあ秒読みだ。ソフトバンクは5日、千賀滉大投手と来季から年俸変動制の5年契約を結んだ。来季年俸は2億円アップの6億円。その上で、オフに千賀がメジャー挑戦を志した場合には、契約破棄ができるオプトアウト条項を盛り込んだ。

・今すぐ読みたい→
プロスカウトが語る「ドラフトで1番化けたと感じる選手」とは? https://cocokara-next.com/athlete_celeb/professional-scout-talks-about-draft/



 千賀は大きなケガなどがなく順当ならば、来季中に海外FA権を手にすることができる。これまでも契約更改交渉のごとにポスティングシステムでのメジャー挑戦を訴えてきたが、それは却下されてきた。球団が関与する余地のない海外FA権という御旗の前に、国内他球団への移籍だけは勘弁してほしいが、メジャーへ行くというのなら快く送り出す、という球団からの意思表示。千賀本人も「野球選手である以上、常に前を向いて進まないといけない」とメジャー挑戦の夢を隠そうとはしなかった。

 国内屈指の高い能力に加えて、決め球が「お化け」とも評される落差鋭いフォーク。メジャーリーグへの適性の高さは、多くの関係者が声高に主張している。

 それを実演してきたのが国際舞台での活躍だ。千賀は2017年の第4回WBCに参加。準決勝の米国戦で先発の菅野に続き2番手で登板した。7回はいきなり、5番エリック・ホスマーからアンドリュー・マカチェン、バスター・ポージーと3者連続三振。ドジャースタジアムが静まり返る圧巻の投球だった。

 イニングまたぎで臨んだ8回にクロフォードとキンズラーに連打を許して勝ち越された。もっともこの回もジャンカルロ・スタントンと、クリスチャン・イエリチを三振に斬り、2イニングで6つのアウトのうち5つを三振で奪ってみせた。この失点が響き試合に敗れ敗戦投手とはなったのだが、大会を通じて防御率0・82という数字を残し、侍ジャパンからただ一人大会のオールスターチームに選ばれ、最優秀投手となった。

 再び世界の野球関係者をうならせたのが、今夏の東京五輪だった。4月に左足首の靱帯を損傷し、ぶっつけ本番で追加招集された。直前の2軍戦で打ち込まれる場面もあり、一部ファンからは招集自体に懐疑的な声まで飛んだ。そんな中、不安視する雑音を一蹴する好投で金メダルに貢献した。

 決勝トーナメント初戦の米国戦で、4番手として6回から登板。5-6と1点ビハインドの場面で、またもいきなり3者連続三振の離れ業をみせた。イニングまたぎで臨んだ7回も、4番打者に二塁打こそ許したが、無失点。自軍に勢いを呼ぶ好投で、逆転サヨナラ勝ちにつなげた。WBCと同じ米国相手に2イニング投げ、再び6つのアウトのうち5つを三振で奪った。

 千賀は再び米国と当たった決勝戦でも2番手で6回から登板。1イニングを無安打無失点、1四球1死球の1三振で封じ込めて、金メダルへの無失点リレーの一翼を担った。

 160kmを超す直球と、お化けフォークのコンビネーションだけでも初見の外国人打者には厄介なのに、そこに鋭いカットボールとスライダーミックスする。過去にメジャーリーグで成功してきた先輩日本人投手たちに共通していた武器こそがフォーク。その完成形を、千賀は右腕に宿している。

 東京五輪では金メダルに貢献したが、ペナントレースではケガで3カ月離脱し、ぎりぎり2桁に届く10勝止まり。日本シリーズ4連覇中だったチームも、2013年以来8年ぶりのBクラスとなる4位に沈み、プレーオフにさえ進出できなかった。エースとしてフルシーズン稼働して、覇権奪回へ。その先に待つメジャー挑戦へ向けて、千賀は迷いなく前を見据えていた。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

メジャー挑戦秒読みか?! 鷹・千賀がオプトアウト付き5年契約を結んだ背景とは