ワクチン接種が進めば前の生活に戻れるはずだったのに…」

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 韓国で、コロナ感染者の増加が止まらない。オミクロン株の新規感染者も毎日出ている。

 政府はワクチン接種証明の利用拡大と追加接種のスピードアップを図るが、重篤・重症者増加や病床不足も深刻になってきた。

 1日の新規感染者数が数日内に6000人台に達するとの報道も出ている。

 2021年12月6日から、食堂やコーヒーショップを何人かで利用する際、ワクチン接種を完了していることが必要になった。

 政府が発行しているワクチン接種証明アプリなどを使うことになった。

韓国にはワクチン接種券なし

 これまでは、スポーツクラブサウナ、「接待を伴う飲食店」など一部だけで利用していたが、この日からその範囲が一気に拡大する。

 12~18歳までは、2022年2月1日から適用になる。

 さらに、今のワクチン接種証明には、「6か月間」の有効期間がつくことになった。

 ワクチンの有効性が徐々に低下するためで、これと併せてブースター(追加)接種も急いでいる。

 筆者にも、「ブースター接種の予約ができます」というメッセージスマホに届いた。韓国には、もちろん「ワクチン接種券」などというレトロな郵便物はない。

 メッセージが届くと、「疾病管理庁」のホームページの予約サイトにアクセスして、全国各地の接種会場、接種可能な病院のリストから自分の都合に合わせて場所と時間帯を予約する。

 筆者も筆者の周辺でも、「混んでいて予約ができなかった」という話しはいまのところ出ていない。

 6月の1回目の接種の際には、予約システムの個人認証手続きが複雑で、結局、筆者はコールセンターに電話をした。

 今回は、システムが改良されていて、すぐにアクセスできた。

 韓国メディアは、11月後半から、連日のように「ブースター接種を」という報道を続けている。

事実上の義務化ではないか

 ワクチン接種完了証明がなければ、食堂やコーヒーショップ映画館、各種講演会場に入ることができない。

 48時間以内のPCR検査陰性証明などで代替は可能だが、韓国内では「事実上のワクチン接種義務化ではないかという不満も出ている」(朝鮮日報)。

 韓国政府は当初、ブースター接種については、接種完了後6か月をメドに実施する方針だった。

 ところが、最近の感染者急増ぶりをみて、接種間隔を「60歳以上は4カ月」「ヤンセンワクチン接種者は2か月」「50歳以上は5か月」などと急遽、前倒しにした。

 12月だけで、60歳以上の720万人程度にブースター接種をする計画だという。

 このあたりの対応は柔軟だ。一方で、韓国のコロナ対策は、ワクチン頼りともいえる。

飲食店を予約できない、タクシーがない…

 ワクチン接種を急ぎ、これと並行して各種の規制を緩和する。これが、韓国政府が目指す「ウィズコロナ」だ。

 10月末までに人口比のワクチン接種完了者比率が70%を超えたのを機に、11月1日から「ウィズコロナ」路線に大きく舵を切った。

 飲食店などでの営業時間規制を撤廃し、会食など私的会合に参加できる人数も、首都圏で10人までに緩和した。

 政府が11月から規制を緩和するとの見込みになったことで、10月以降、一気に飲食店の人出が増えた。

 11月になって、昼食の約束の予約が本当に難しくなった。

「江南(カンナム)地区の、個室の高級店は全く予約が取れない。普通のお店は夜遅くまで客であふれている」

午後10時になるとタクシー争奪戦がすさまじい」

 こんな話しをあちこちで聞くようになった。10人までの夕食会の誘いがあちこちからあった。

 だが、残念ながら、感染者はどんどん増えてしまった。

病床不足で自宅治療に

 新規感染者数は、7月7日1211人となり、4ケタに乗った。9月に2000人台になり、ウィズコロナが始まった11月1日には1684人。

 それが、11月17日3187人、24日4115人となり、12月1日には5122人となった。

 12月6日、韓国メディアは「週内に6000人台になる」と報じた。

 感染者がこれだけ増えているのにどうして会合が増えたのか?

 世の中全体に「ワクチン接種を終えたから…」という安心感が広がったことは否定できないのではないか。

 政府は、規制を緩和することで、感染者が一時的に増えても十分に対応できると説明してきた。ワクチン接種効果で、感染者が増えても重症者、死亡者は増えないとみていた。

 ところが、予想外の事態になった。

 新規感染者数の増加とともに、重篤・重症者数、死亡者数も残念ながら急増してしまった。

 重篤・重症者数は11月7日の405人から12月4日には752人に、死亡者も11人から70人になってしまった。

 感染者急増で病床不足も深刻だ。

 ソウルではほとんどの病院で余裕病床がなくなった。11月21~27日に入院を待っていた10人が死亡するという痛ましい結果になってしまった。

 韓国政府は、無症状、軽症の感染者は原則として自宅治療に切り替える方針に転換した。そうでなければ対応できないのだ。

想定外だった高齢者感染者急増

 もう一つ想定外だったのは、60歳以上の高齢者の感染者、重篤・重症者が急増したことだ。

 最近のデータを見ると、60歳以上が重篤・重症者に占める比率は8割を上回っている。

 全体の感染者のうちでも35%前後を占める。全人口に占める60歳以上の比率は25%程度だ。

 60歳以上の場合、活動量がさほど活発でないとみられる。ワクチン接種完了比率も高い。にもかかわらず、どうしてこんなことになったのか?

 韓国内では、ブレークスルー感染が多いことから、一部で、60~74歳に接種したアストラゼネカのワクチンの有効性に疑問を投げかける声もある。

 ただし、他の種類のワクチン接種完了者のブレークスルー感染も続出している。

 韓国政府の分析では、アストラゼネカワクチンでも、ファイザーワクチンでも接種から3か月後の中和抗体量は大幅に減少する。

 アストラゼネカワクチンの場合、接種直後の抗体量も少ないが、どの程度の量があれば効果があるのかについてまだ分からず、真偽は不明だ。

 高齢者向け施設や病院などで高齢者の感染が相次いでしまった。

 いずれにせよ、ワクチンの有効性が時間とともに低下しているのは間違いないとして、ブースター接種を急ぐことになった。

 今回使うのは、ファイザーモデルナのワクチンだ。

 高齢者を中心に感染者が急増したことで、感染者増加を抑制する対策も難しくなった。

 韓国内にも、感染者の増加に対応して、以前のような厳しい飲食店への営業規制をすべきだという声は少なくない。

 一方で、飲食店などの経営状況や厳しい規制に対する国民の「コロナ疲れ」を鑑みて「苦労して何とか漕ぎ着けたのだから後戻りはできない」(文在寅大統領ムンジェイン1953年生)という声も根強い。

すでに400万人がブースター接種

 活動量の多い20代、30代、40代、50代が飲食店などで相次いで感染しているとまでは言えない以上、予想される世論の抵抗を押し切って営業制限に踏み切れない。

 特に、韓国では「営業制限など規制は厳しいのに、政府の補償金が諸外国に比べてとても少ない」という批判が強まっている。

 結局、政府は、12月6日から飲食店などでのワクチン接種証明の導入と会食人数を6人まで(首都圏)に制限するなどの措置にとどめた。

 厳しい営業規制と素早く大量のPCR検査で感染者を洗い出して隔離し、疫学調査でとことん感染者を追跡する・・・というこれまでのやり方が次第に限界に達したことで迷いがあるのか。

 あるいは、大統領選挙を100日後に控え、様々な利害関係者に配慮しているのか。

 月内は、ブースター接種の効果を見極めようということになったのだ。問題は、ブースター接種よりも速いペース感染者が増えていることだ。

 さらにここにきて、コロナの新変異株「オミクロン」への感染者が続出している。

 ナイジェリアから帰国した牧師夫婦などを起点に毎日のように新規感染者が出ている。感染者12月6日正午時点で24人になった。

 教会や食堂などで市中感染が始まれば、さらに増加することは間違いない。

 ワクチン頼りの防疫。ブースター接種を急ぐのは分かるが、筆者の周辺には戸惑いの声も少なくない。

「前回もワクチン接種すれば6月末には世の中の見え方が変わるなんていう説明をよく聞いた。半年も経っていないのに、ワクチンの効果がなくなりましたと言われても…」

オミクロンにはワクチンが効きにくいという話しもある」

感染者は急増しているのに、これからは自宅で治療してくださいということだ。感染しないように自分で気を付けて、自宅で治してくださいと言われても…」

 不安が高まる中で、12月6日午前零時現在、韓国では400万人がブースター接種を終えた。接種間隔を8か月にするか、6か月かという日本とは異次元スピードだ。それだけ危機感が強いのだ。

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